ビジュアル系四天王が綴る愛の歌
Gackt加入後の発表曲
タイトルの意味は?
タイトルにつけられた「ma chérie」はフランス語です。
「ma」は英語でいえば「my」、つまり所有格を表す言葉ですので「私の」という意味。
「chérie」は「最愛の人・愛しい人」という意味を持ちますから、「ma chérie」は「私の愛しい人」ですね。
ちなみにフランス語表現には「男性名詞・女性名詞」また「男性形・女性形」といった性別が存在します。
難しい話は割愛しますが、この表記差によってタイトルも男女どちらが発した言葉かわかるのです。
「ma chérie」の場合、所有格の「ma」は男性が女性に向けて使う言葉ですから楽曲の1人称は男性ということ。
これよりこの楽曲は主人公を男性、彼が愛しいと思っている相手を女性としてみていきましょう。
主人公にとって「愛しい君」とは?
人間ではない…?!
むりやり押しつけられた かたい靴のせいで
show windowの中で 動けないあの人形
暇だから この週末は×××通りで
ここの周りの人達に染まってみるのもいいかもね
出典: ma chérie 〜愛しい君へ〜/作詞:MALICE MIZER 作曲:MANA
主人公の男性が、自分の愛しい人を紹介してくれているようなフレーズから始まります。
どんな相手なのだろう?とワクワクしながら聴き進めていくと…相手はまさかの人形!?
そう、彼にとっての「愛しい君」はガラス張りのショーウィンドウの中で店内の商品を紹介するマネキン人形でした。
当然マネキン人形ですから動くことなどできません。しかし主人公はとてもロマンチスト。
彼女が動けない理由を、履きなれていない靴のせいにしました。
素材にもよりますが、革製の靴は履きなれて柔らかくなるまでに時間がかかります。
しかしマネキン人形は歩き回ることなどできませんから、靴だってかたいまま。
動けないのは彼女がマネキン人形だからではなく、そのかたい靴のせいだと考えているのです。
そんな彼女に対し、3-4行目ではデートに誘うような様子も見せていますね。
誰も見ていない瞬間に連れ出そうとしているのでしょうか。やはりロマンチックです。
実は主人公も
マネキンの女性に恋した主人公…という設定で見てきましたが、この主人公は本当に人間なのでしょうか。
実は男性もマネキン人形で、女性と一緒に飾られている。こんな想像もできませんか?
靴のせいで動けないことを可哀想だと思っている主人公本人も同じく、動くことができないのです。
ただガラス越しに見つめることしかできない通りで、自由に動き回ることを想像しているのかもしれません。
彼らの願い
小さなことだけれど
雨上がりの朝は水たまりで跳ねて
星降る夜を待ち 願いをかけよう
出典: ma chérie 〜愛しい君へ〜/作詞:MALICE MIZER 作曲:MANA
人間であれば雨上がりを楽しめない人も多いはず。
お気に入りの洋服や新調した靴を濡らす雨は、どちらかといえば人の気分を下げてしまうでしょう。
しかしショーウィンドウの中でしか生きられない彼らにとって、雨は未知のものでした。
だからこそ1行目のような、多くの人が避けるであろう行為さえ夢見てしまうのです。
そして続く2行目にも、彼らだからこそできないことが綴られていますね。
お店のショーウィンドウの中にいるということは、彼らに空を見上げることはできません。
せいぜい目線の先に広がる空が見える程度でしょうから、視界は非常に狭いと想像できます。
そんな狭い空では輝く星を楽しむこともできないでしょう。
多くの人が1度は見たことがある満天の星空も、彼らにとっては未知のものなのです。
だからこそ2行目後半で願います。
彼女を喜ばせたい。その一心で祈る願いはとても小さいながら、深い愛に溢れていました。