「CALL ME」のMVは全編セピア色でカラーコーディネートされていました。

ここから推察できるのは吉井和哉さんの心象風景を表現しているであろうことです。

その風景はまるで戦場のように殺伐としていました

戦車を使用したのは同様の効果を得るためだと考えるのが自然です。

冒頭で吉井さんのソロキャリアは「内観」そのものだと申しました。

前期の、特にYOSII LOVINSON時代の楽曲のキーワードは殺伐とした心象風景です。

「CALL ME」のAメロはほぼ否定語で埋め尽くされています。

これは音楽活動もプライベートも含め自己の内面を直視した結果の自己否定です。

しかしこれほど極度にネガティブになった状況下でイエモン時代より詞的表現が研ぎ澄まされています

苦しんで生み出した作品ほど輝いてしまう。

これは表現者の哀しい性(さが)なのでしょう。

「CALL ME」は誰に向けた叫び?

神への痛々しい叫びが繰り返される...

【CALL ME/吉井和哉】歌詞の意味を考察♪魂の叫びがここにある…後悔しないように生きていこう!の画像

オレでよけりゃ必要としてくれ
CALL ME CALL ME
電話一本でいつでも呼んでくれ
後悔ないようにしとくぜ

出典: CALL ME/作詞:YOSHII LOVINSON 作曲:YOSHII LOVINSON

より感情を込めて歌われるサビのパートの切実さ。

まさしく魂の叫びを表現しているのでしょう。

繰り返されるタイトルの「CALL ME」は誰に呼び掛けていると推察しますか?

これは吉井さん自身がリリース前に語ってしまっているのですが...。

吉井さんは殺伐とした気持ちで「神」に呼びかけています

神様からの呼び出しが意味するのは紛れもなく「死」です

しかし本人がリリース前にネタばらししてしまうことは稀有なケースだと深読みします。

ただの自殺願望ではないことを祈り続きを見ていきましょう。

メタファーの極致を味わい尽くす

矮小化した心

枝切られる 枝切られる
都会では両手を伸ばせない
だから何を抱いていいのか
わからなくなることあるんだ
「人間的」とは何かな?
答えの数が世の中の形

出典: CALL ME/作詞:YOSHII LOVINSON 作曲:YOSHII LOVINSON

少しだけ本筋から離れたいと思います。

吉井さんの、特にソロ時代の楽曲には音楽の神が間違いなくついていると思われるのです。

その1つが独創的なメタファー(比喩表現)の使い方にあります。

上の歌詞の2行目までの天才としかいえない表現のふり幅をご覧ください。

簡単には説明できない矮小化してしまった自身の気持ちをこう例えますか!

続く不安な気持ちの理由として見事につながります。

「生」への渇望を強固にする「雑草」の表現

何年過ぎても同じさ 人が人の上を目指し
何年先でも同じさ
「I LOVE YOU」「I LOVE YOU」が灰になる
雑草みたいにさりげなく
アスファルトを突き破りたい

出典: CALL ME/作詞:YOSHII LOVINSON 作曲:YOSHII LOVINSON

MVに戦車を使用したことは残念ですが吉井さんではなくディレクターのアイディアでした。

しかしこの部分の「欲望」と「権力」の象徴として戦場とそのための兵器は見事に繋がります

続く表現も秀逸です。

愛の言葉さえ否定せざるを得ない状況を最初のAメロの空の色と繋げた箇所。

そして「CALL ME」の歌詞唯一ポジティブな感情を表現する雑草のくだり。

使い古されたメタファーもサビの「死」の描写と対比することで「生」への渇望の強度を増しています。

ここで私たちは「自殺願望」の歌ではないことを知るのです。

後悔のない人生を

全力で生きるから...

【CALL ME/吉井和哉】歌詞の意味を考察♪魂の叫びがここにある…後悔しないように生きていこう!の画像

君がよけりゃ必要としてくれ
CALL ME CALL ME
たまに星がキレイだってことを
君に 君に CALL ME CALL ME
オレでよけりゃ必要としてくれ
CALL ME CALL ME
恋に罪に欲に胸に花に水に風に雲に空に星に
永遠に 永遠に 永遠に CALL ME
電話一本でいつでも呼んでくれ
後悔ないようにしとくぜ

出典: CALL ME/作詞:YOSHII LOVINSON 作曲:YOSHII LOVINSON

吉井和哉さんの歌詞はとても興味深いです。

前述したような比喩の使い方といい言葉の選び方といい作詞家としてのセンスが桁外れだと感じます。

昭和の大作詞家の阿久悠さんや松本隆さんらと並列してもよいくらいです。

前章の雑草のくだりでは「生」への執着を感じさせてくれました。

そして最後のサビとなる章に移りましょう。

相変わらず「神」に対して執拗に呼びかけています。

恐ろしいほどの虚無感に包まれていることは間違いないでしょう。

しかし同時に「空」に関する描写が変化していることに注目です。