吉井和哉のソロキャリアとは?
自身の内面と向き合った12年間
唐突ですが質問です。
みなさんはホテル東横インに宿泊したことはありますか?
東横インには各部屋に「内観」という本が常備されているのですが...。
吉井和哉さんの約12年間のソロ活動はその「内観」そのものなのです。
「内観」とは自身の内面を客観的に捉える心理療法。
つまり吉井和哉さんのソロ活動は12年間にも渡る心理セラピーだったと思うのです。
ガソリンスタンドに寄った可愛い女の店員が
オーライオーライと言った 本当にオレはオーライか?
ハイオク満タンカードで とにかく満タンカードで
給油口に入れる時のゴリっていう音キライだ
出典: 人それぞれのMY WAY/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
こちらは2006年リリースの3rdアルバム「39108」からの一節です。
ソロ活動初期の吉井さんはとにかく暗い、といいますかナーバス。
店員の些細な一言にここまで考え込まねばならないほどに鬱々としています。
YOSHII LOVINSON名義でのラストシングル
そんな吉井和哉さんの初期の代表曲が2005年の4thシングル「CALL ME」です。
シングルのアートワークは吉井さんの当時の心象風景なのでしょう。
破けた障子、朽ち果てた白壁、焦げかかった写真...。
今回はソロキャリア史上もっとも心を打つ名作「CALL ME」の歌詞を紐解いてゆきます。
そこには魂の叫びとも呼べる心の声が残されていたのです。
フランスで撮影されたMV
戦車に跨る吉井和哉は何と闘う?
有名な「CALL ME」のMVを見てみましょう。
悲し気なアルペジオが奏でられ何かの物体にピントを合わせるカメラ。
それは物体ではなく路上に横たわる吉井和哉さんでした。
カットが変わると戦車に跨る吉井さんの姿が...。
実際に吉井さんを乗せて路上を走る戦車。
フランスのコレクターが所有している本物の戦車を借りたため撮影もフランスで行われました。
何かを踏みつぶしながら進む戦車。
セピア色に漂白された映像。
戦車の後ろにはブライダルカーのように空き缶が連ねられています。
YOSHII LOVINSONという架空のキャラクターのルーツ
「CALL ME」及び2ndアルバム「WHITE ROOM」まではYOSII LOVINSON名義でのリリースでした。
丸坊主の吉井さんが懐かしい...。
吉井和哉さんのデヴィッド・ボウイへの偏愛ぶりは有名です。
デヴィッド・ボウイは70年代初頭に「ジギー・スターダスト」という名作を残しています。
自らをジギー・スターダストという架空のキャラクターになぞらえたコンセプトアルバムです。
YOSHII LOVINSON名義の初期作はデヴィッド・ボウイへのオマージュ。
そして別のキャラクターに置き換えなければ自身と向き合うことが困難なほど疲弊していたと考えられます。
どんよりしているのは何?
戦場のように殺伐とした心象風景
TODAY AFTERNOON
TODAY AFTERNOON
どんよりしてるのは空じゃない
間違ってる 食い違ってる
このままでいいとは思わない
ONE DAY 今日も開かない
折り畳みの真実が虚しい
出典: CALL ME/作詞:YOSHII LOVINSON 作曲:YOSHII LOVINSON