シャネルズからRATS&STARへ

黒塗りメイクで大人気!

RATS&STAR「Tシャツに口紅」歌詞の意味を解説!海辺で切り出した別れ話…泣けない男心が切ないの画像

RATS&STARのグループ名はもともとシャネルズといって「ランナウェイ」の大ヒットで知られています。

ドゥーワップ」と呼ばれる特徴のあるコーラスが入った明るい楽曲が持ち味のグループです。

最初に見た時は何だこれは?と思いましたが、コーラスグループとしての実力はなかなかのものでした。

特にリードボーカルを担当する”マーチン”こと鈴木雅之の歌唱力がずば抜けていたのです。

メンバー黒塗りのメイクにしたのは彼らが好きだったアメリカの黒人コーラスグループに倣ったのでしょう。

ボーカルを担当するメンバーはステージで目立つし素顔が隠せるという理由もあったのだと思います。

デビューは順調だったもののメンバーが起こした不祥事もあり、いったん活動を休止。

その後RATS&STARとグループ名を改めて今回ご紹介する「Tシャツに口紅」などのヒットを飛ばしました。 

個性的なメンバーたちが残したちょっと切ないこの曲の歌詞について解説してみたいと思います。

夜明けの空と心模様

別れを切り出せない彼

RATS&STAR「Tシャツに口紅」歌詞の意味を解説!海辺で切り出した別れ話…泣けない男心が切ないの画像

夜明けだね 青から赤へ
色うつろう空 お前を抱きしめて
別れるの?って 真剣に聞くなよ
でも波の音が やけに静かすぎるね

出典: Tシャツに口紅/作詞:松本隆 作曲/大滝詠一

やや強面(コワモテ)の風貌に髭と黒塗りメイクとサングラス。

鈴木雅之のボーカルは見た目とのギャップがありました。

少しだけ太くて甘い声と歌の上手さで、初めて聴いた人に新鮮な驚きを与えたのです。

この曲の心地よいリズムとメロディーはロマンチックで、リラックスできる雰囲気を持っています。

最初の♪夜明け~と音が上がっていくところからもう気持ちよくて、自然と笑みがこぼれるような感覚ですね。

夜から朝へと変わっていく空の描写もお洒落で、すぐに歌の世界に浸ってしまうようなオープニングです。

実際の空の色はグラデーションが掛かって徐々に変わっていくのですが、ここに出てくるのは青と赤の2色だけ。

心模様みたいに色が変わっていく様子を最初の2行で表現した松本隆のセンスは流石だなと思います。

しかもそこにはふたりの切ない別れのシーンも描かれているのです。

別れを切り出せない彼は彼女の問いかけに答えられず、海辺でふたりを包むのは空の色と波の音。

出だしのメロディーはいかにも大滝詠一という展開で、最初のパートからふたりの作家のセンスが感じられます。

口紅の赤は冷めない愛情の色

別れに涙がない理由

RATS&STAR「Tシャツに口紅」歌詞の意味を解説!海辺で切り出した別れ話…泣けない男心が切ないの画像

色褪せたTシャツに口紅
泣かない君が 泣けない俺を 見つめる
鴎が驚いたように 埠頭から翔び立つ

出典: Tシャツに口紅/作詞:松本隆 作曲/大滝詠一

Tシャツは彼女と一緒に夏を過ごした思い出の1枚なのでしょう。

少し着古して色落ちした様子は彼の飾らない性格も表しているようです。

別れたくない、彼との時間を少しでも長く過ごしたい彼女の想いが口紅に表れています。

口紅の赤は彼女のまだ冷めていない愛情の色で、Tシャツの色は別れることにした彼の心の色なのでしょうか。

別れのシーンに涙はありませんが、ふたりにとってその理由はそれぞれ違うのです。

彼女は本当は泣きたいのを我慢しているのだと思います。

別れるつもりで彼女と会った彼は辛くても泣くわけにいきません。

最後の行の歌詞はほんのちょっとしたことがきっかけで動いてしまいそうなふたりの心を表しています。

心が動けばふたりで迎えた夜明けも終わり、本当の別れがやってくるのです。

大切な時間は夢だった?

切ない心と言い訳

RATS&STAR「Tシャツに口紅」歌詞の意味を解説!海辺で切り出した別れ話…泣けない男心が切ないの画像

つきあって長いんだから
もうかくせないね 心に射した影
みんな夢だよ 今を生きるだけで
ほら息が切れて 明日なんか見えない

出典: Tシャツに口紅/作詞:松本隆 作曲/大滝詠一

このパートは切ない彼の心と言い訳めいたセリフが並んでいます。

別れを切り出せないし嘘もつけない男性を主人公にしたのは、松本隆の優しさなのでしょうか。

男性を単純な悪者にしたくなかったのだろうと思います。

ふたりは長い時間を過ごしてきたので、彼女は彼のことをなんでも分かっているみたいです。

正直で隠し事が苦手な彼の性格も分かっているのでしょう。

毎日が必死で明日のことなど分からないというのは彼の本音かもしれません。

それでもふたりで過ごした大切な時間を“夢”と言ってしまう彼。

彼女にしてみればどうして?という気持ちに違いありません。

静かな修羅場?