サビは3つのことが描かれています。

一つ目は、先の分からない未来を怖がりながらも、ある声によって救われること。

二つ目は、叫びたくなるほど懐かしく感じる「いのち」。

三つ目は、夏の光とそれに付随するものです。

これらはそれぞれ独立していて、全く関わりがないように思えます。

つらつらと並んでいるようにも見えますが、何のつながりがあるのでしょうか。

これは「夏」という季節をきっかけに、一つ目つと二つ目のことを思い出すように思えます。

夏の日差しや光は、そんな素敵なことがあったという記憶を思い出させてくれるものなのかもしれません。

改めて見てみましょう。

未来は誰にも分らないもので、不安なものです。

特にまだ社会に出たことのない子供や、若い人はそうでしょう。

そんな時に「静かな声」というものが、恐怖をぬぐい去ってくれたようです。

その出来事は、夏の日差しが印象的な時にあったのでしょうね。

二つ目の「ひとつのいのち」は、歌詞を紹介した後に改めて考えてみましょう。

世界の真理

「いのちの名前」は、夏を背景にした歌詞であることが伝わってきました。

おだやかで、かつきらびやかな感じがします。

それが「千と千尋の神隠し」の世界なのでしょう。

続いて登場する歌詞は、どんな景色を見せてくれるのでしょうか。

川で

つぶれた白いボール
風が散らした花びら
ふたつを浮かべて 見えない川は
歌いながら流れてく

出典: いのちの名前/作詞:覚和歌子 作曲:久石譲

2番も、冒頭は誰もが見かけそうな光景が歌われています。

遊んでいて、うっかりボールが川に入ってしまったのでしょうか。

蹴られたのか、随分と力がかかっているのでしょう。

ここでは「川」が一つのキーワードになっているようです。

「千と千尋の神隠し」でいえばハクの正体を思い起こさせますが、関係があるかもしれません。

川は水の流れや、岩に水が当たるなどで色々な音を出します。

それが4行目の「歌」として表現されているのでしょう。

全てが「神さま」の子供?

秘密も嘘も喜びも
宇宙を生んだ神さまの 子供たち

出典: いのちの名前/作詞:覚和歌子 作曲:久石譲

ここで突然「神さま」という存在が登場します。

これは、「世界には人知を超えたものがある」ということを言いたいのでしょうか。

映画で登場した八百万の神や、彼らが暮らす世界だけではありません。

運命や時間、命や事象も含まれています。

歌詞にもある感情や偽り、秘められたもの。

これらも本当のところ、大いなる存在が作り出したものなのでしょう。

先程の「川が流れていく」こともまた、人知を超えた理という可能性もあります。

一見当たり前なことも、よく考えてみればすごいこと。

この世の全てのものが、「神様の子供たち」なのかもしれませんね。

名前はそれを表すもの

未来の前にすくむ心が
いつか名前を思い出す
叫びたいほど いとおしいのは
ひとつのいのち
帰りつく場所
わたしの指に 消えない夏の日

出典: いのちの名前/作詞:覚和歌子 作曲:久石譲

2行目の歌詞が、「千と千尋の神隠し」の世界を顕著に表しているように思えます。

ここでもハクのことを歌っているのでしょうか。

それとも、ハクや千尋を通した若い人々?

後で詳しく解説しますが、この映画の世界は「名前」がとても大きな力を持つ世界です。

名前は「それ」を表すものであり、存在や命と同等の価値を持ちます。

それを誰かに奪われ忘れるということは、その誰かに支配されるのと同じこと。

逆に名前を思い出すのは、自分を取り戻すことを意味します。

これからどんな大人になっていくのか不安に感じる過程…、つまり大人になる最中に人は自分を見出すでしょう。

その「自分」とは、映画の世界で言うところの「名前」なのです。

ただし、この「名前」は世界観に即したたとえと考えた方が良いかもしれません。

「いのちの名前」はどんな名前?

歌詞では「いのちの名前」がどんな名前だったのか、はっきりと明言されていません。

それでも、何となく想像はつくでしょう。

ここで考えられる「いのちの名前」とは、「自分の名前」ではないでしょうか。

そして、「ひとつのいのち」もまた「自分の名前」とも言えそうです。

「自分の本名」が「いのちの名前」?