不確かな雲に隠れてキスして
忘れてくんだ いまどこ だろ
確かめたくて呼んだ君の名は
まどろみにこだましている
出典: 空想飛行/作詞:角田隆太 作曲:角田隆太
だんだん自分がどこにいるのか、何しているかが曖昧になっています。
目の前に映る「君」の名前を呼んでみても、夢の中で反響してしまっているようですね。
夢というものは見た後すぐに忘れてしまうことが多いです。
「空想飛行」では、そんな誰もが夢とわかる違和感を歌詞に落とし込んでいます。
作詞を担当している角田の作詞家としての実力が良く分かりますね。
単純な「答え」の意味とは
単純明快な答えはどうも
感動出来ない 鮮やかすぎて
離陸するときの不安にまざる
切なさぐらいがちょうどいいから
出典: 空想飛行/作詞:角田隆太 作曲:角田隆太
主人公の感情が表れてくるシーンです。
単純な答えからは、極端に振れた感情の属性を感じてしまいます。
善悪や喜怒哀楽の感情の内の1つのような、カテゴライズされたものしか答えの中に感じない。
そんな鮮やかなものよりも、もっと混ざり合って分かりにくいものの方が良いと歌っています。
ジャズのコードのようですね。
一般的なコードは陰と陽がはっきりしています。
メロディに対する正解としてそんなコードを提示したとする。
すると歌詞が持つ感情の機微を「喜び」や「悲しみ」という単純なもので固定してしまうのです。
ジャズではそこにテンションと呼ばれる音を加えます。
この音によって、コードの陰陽を曇らせ、メロディに様々な感情が入り込む余地を与えてくれるわけです。
この歌詞からは、そんな音楽性の部分についても言及しているように感じます。
彼らの音楽はポップスという綺麗な答えを提示するものに一石を投じるものですからね。
空想飛行の行き着く先は?
早く一人前になりたい自分への葛藤
噛み砕くことも出来ない いつまでも味のする飴
もう飽きて次に行きたい はやく大人になりたいのに
出典: 空想飛行/作詞:角田隆太 作曲:角田隆太
なかなか消化しきれないものにもどかしさを感じているようですね。
どんどん新しいものを吸収していきたいけど、なかなかそうはいかない。
早く一人前になりたい。
しかし立ちはだかるものが多すぎる。
そんな苛立ちが歌詞から読み取れます。
こういった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
透明な君の身体 くぐり抜ける度思い出す
幼い頃の記憶は まるで儚い空想飛行
出典: 空想飛行/作詞:角田隆太 作曲:角田隆太
ここで「透明な君」が再び出てきます。
通り抜けると過去の記憶が蘇るという描写から、ここでいう「君」というのが記憶の引き金になっているようです。
「空想飛行」を夢のことであると解釈すると、幼少の頃の記憶は一瞬の出来事であると主張しているようにとれます。
彼らの今までの過程こそが「空想飛行」
不確かな雲に抱かれてキスして
うすまる空気 気が遠くなる
確かめたくて目を開けたらもう
真っ暗闇に星が光る
不確かでもいいよ もう一度キスして
忘れちゃったんだ いまどこ だろ
出典: 空想飛行/作詞:角田隆太 作曲:角田隆太
2行目からもうすぐ夢が終わることがわかります。
暗い部屋の中、目が覚めた主人公。
「空想飛行」という夢で行き着いた先は、物語としては眠りから目覚めた先、つまり日常を示しているのでしょう。
しかし、ものんくるの2人を投影すると、デビューから今までの過程が「空想飛行」であるといえます。
そう考えると行き着いた先は「現在の彼ら」ということになりますね。
今どこなのかと問いかける歌詞からは、現在のものんくるが音楽業界でどの位置にいるのかという疑問が見えます。
新しい音楽性の発信という命題の元、彼らにはこれからも「空想飛行」を続けて欲しいですね。