僕はカラッポになってしまって ぬけがらみたいになったよ
美しすぎた君の姿を 僕は今日も想ってしまうんだ
神様って人が君を連れ去って 二度とは逢えないと僕に言う
そんなサダメなら聞きたくはなかったよ
美しすぎた人よ
出典: ラブソング/作詞:山口隆 作曲:山口隆
夭逝した人は私たちの記憶の中でいつまでも若いままです。
現実世界で歳老いてゆく私たちは日々刻々衰えゆくだけだというのに。
亡くなった人たちは生きていた頃の美しい姿のままで私たちの記憶にしがみつきます。
サンボマスターの「ラブソング」もまたそうした美しいままの君への尽きない恋慕を歌っているのです。
訃報に接して人は魂が抜けたような気分になります。
つい最近まで元気でいた人が突然亡くなる場合はなおさらです。
生と死を分けるものの壁の薄さに驚くでしょう。
人というものそのものが果敢無い存在なのだと思い知らされます。
それでも自分自身は老いながらこの世界で生きてゆくしかありません。
抱えた愛情の宛先が不明であることに不安を感じながらずっと亡くなった人を愛し続けるでしょう。
「ラブソング」
君がいない世界で生きることの切なさを歌い切るのです。
第7位 ミラクルをキミとおこしたいんです
2013年6月26日発表、サンボマスターの通算18作目のシングル「ミラクルをキミとおこしたいんです」。
サンボマスターらしいパワーポップです。
ドラムが雄弁に鳴り響くので聴きどころになっているでしょう。
「奇跡」というワードも山口隆はよく使います。
この曲「ミラクルをキミとおこしたいんです」はその「奇跡」について真正面から歌うのです。
「奇跡」とはいっても魔術的な意味合いはなく、キミと僕とが起こせる「奇跡」を歌います。
人が起こせる「奇跡」というものには社会的な影響力で大小があるはず。
サンボマスターが約束する「奇跡」はどんなものでしょうか。
歌詞を見ていきましょう。
リスナーと一緒に起こす奇跡
ミラクルをキミとおこしたいんです 時はもうそこまできてるよ
断然そしたら分かち合おうぜ 重い扉のカギをあけて
見るもの全て奇跡の可能性 本当さ 何度でも言うぜ
心の声が自由を望んでる キミとなら奇跡は起こるぜ きっと!
出典: ミラクルをキミとおこしたいんです/作詞:山口隆 作曲:山口隆
ここでの「キミ」は山口隆のパーソナルなパートナーというよりもリスナーのことでしょう。
サンボマスターが約束するミラクルはこれから始まる彼らのショーでのミラクル。
リスナーやオーディエンスと一緒ならばどんなことでもできる気がする。
ステージに立つ者はそんな全能感を持っています。
その全能感を根拠に「奇跡」を起こせると確信するのです。
ラブソングの体裁をとっていますがパーティーソングの側面が多分にあります。
サンボマスターを信じていれば「奇跡」を目のあたりにできるとリスナーを煽っているようです。
ファンのことをいつも鼓舞する歌詞を書くサンボマスターの真骨頂がここにあります。
第6位 I love you & I need you ふくしま (猪苗代湖ズ)
2011年3月~4月発表、猪苗代湖ズの名義でリリースしたシングル「I love you & I need you ふくしま」。
2011年3月11日の東日本大震災を受け故郷・福島への想いをすぐさま曲にしました。
同年のNHK紅白歌合戦で演奏されます。
番組放送中に心ない国会議員が中傷のツイートをして大炎上しました。
しかし猪苗代湖ズの勇気ある生演奏だけが歌の力を誇示します。
この曲には様々なアーティストが参加しました。
どのアーティストも猪苗代湖ズの熱い想いに賛同したのです。
サンボマスターのアナザーストーリー。
歌詞を見ていきましょう。
余震が続く中で歌われた郷土愛
I love you baby ふくしま I need you baby ふくしま
I want you baby 僕らは ふくしまが好き
I love you baby 浜通り I need you baby 中通り
I want you baby 会津地方 ふくしまが好き
I love you baby 野馬追い I need you baby 赤べこ
I want you baby 鶴ヶ城 ふくしまが好き
出典: I love you & I need you ふくしま/作詞:山口隆 作曲:山口隆
福島を知り抜いているからこその歌詞になっています。
東日本大震災から数年を経ても福島第一原発事故は収束しません。
有形無形の差別が未だにこの国に燻っています。
福島ヘイトには福島Loveを対置する。
山口隆らしい在り方です。
この時期はまだ浜通りや中通りを震源に頻繁に余震が続いていました。
地元の人々の不安は大きなものであったでしょう。
巨大な自然災害の前では人ができることは限られています。
それでも避難所で眠れない夜には「上を向いて歩こう」を歌うのが人間です。
猪苗代湖ズのこの曲も人々の不安な想いを払拭する一助になりました。
第5位 世界をかえさせておくれよ
2009年11月18日発表、サンボマスターの通算13作目のシングル「ラブソング」。
カップリング曲として収録された「世界をかえさせておくれよ」。
青春直情パンクのような一直線に突っ走るナンバーです。
ギターロックの雛形のようにカッティングが気持ち良い楽曲になっています。
「世界をかえさせておくれよ」とはいえ大仰な社会変革一辺倒の歌ではないです。
むしろ手に届く範囲のラブソングの延長線上で世界を変えることを歌います。
歌詞を見ていきましょう。
身近な愛から始めよう
僕はくだらない毎日を変えて君とキスがしたい!
僕はくだらない毎日を変えて革命を起こしたい!
世界を変えさせておくれよ そしたら君とキスがしたいんだ
世界を変えさせておくれよ そしたら君と夢がみたい
世界を変えさせておくれよ そしたら君とりんごをかじって
世界を変えさせておくれよ そしたら君と夢が見たいんだよ
出典: 世界をかえさせておくれよ/作詞:山口隆 作曲:山口隆
日常に何かしらの変革をもたらしたい。
その積み重ねが社会変革に繋がります。
それはもっと自由に恋愛したっていいじゃないかという邪な気持ちからであっても大丈夫です。
社会変革の究極は人類愛の実現。
男女の愛から始められることはたくさんあります。
毎日同じような日々が続いてくるとフラストレーションが溜まるでしょう。
そうしたフラストレーションを爆発させることがロック・ミュージックの原動力です。
私たちの可能性を見くびると為政者はいずれの日にか痛い目にあうでしょう。
パンキッシュな曲ですがキャッチーな側面もある名曲です。