どこまでもロック「ミラクルをキミとおこしたいんです」
ロックは死んでいない
2013年6月26日発表、サンボマスターの通算18作目のシングル「ミラクルをキミとおこしたいんです」。
サンボマスターらしい純情ロックでリスナーにも元気を与えてくれます。
「ロックは死んだ」といったのは元セックス・ピストルズ、PILのジョン・ライドンです。
サンボマスターはこの言葉に反発しながら快活なロックを鳴らしてくれます。
コアなロック・ファンからも一目置かれている彼ら。
しかしもっとソフトな姿勢でロックを聴く人から熱烈な支持があります。
「ミラクルをキミとおこしたいんです」はキミとの出会いで日々が変わったと力強く歌うのです。
出会いというものが人間関係にもたらすものは絶大でしょう。
錆びついて判を押したように同じことの繰り返しだった毎日が一瞬にして輝き出すような出会い。
そうした奇跡的な出会いを歌詞に描いています。
サンボマスターの魅力全開の楽曲「ミラクルをキミとおこしたいんです」。
それでは実際の歌詞を見ていきましょう。
サーカスの呼びかけのように
東日本大震災の影
始めるよ 準備はいいかい? やらかすぜ そいつが可能性
悲しむより踊りまくって 奇跡の日々を始めようぜ
出典: ミラクルをキミとおこしたいんです/作詞:山口隆 作曲:山口隆
2013年に発表された曲であってもサンボマスターの曲には東日本大震災の悲劇が重なります。
遅々として進まない復興ですが、故郷・福島のために立ち上がった過去。
いつまでも悲しみに暮れているよりもロックで踊ろう。
その方がキミにとっていいバイブが生まれるだろう。
サンボマスターの歌には芯があります。
ロックへの絶対的な信頼が芯になっているからこそ、大音量で希望の歌を奏でるのです。
避難所で歌ったのは坂本九の「上を向いて歩こう」でした。
音楽は被災者の心に希望の火を灯します。
福島を襲った未曾有の人災・福島第一原発事故も人の手によって復興させてゆくしかありません。
人々の心に火を灯すのはいつの時代もエンターテイナーの社会的な責務です。
エンターテイナーにはやらなきゃならないことがある。
サンボマスターはそのことをよく知っています。
このラインはこれから起こるミラクルへの前口上です。
サーカスの呼び込みのように楽しい時間を約束してくれます。
不可能性を覆せ
ミラクルは普通の人でも起こせる
ミラクルをキミとおこしたいんです 高まれよ 奇跡の可能性
終わらないミラクルの予感がする 世界中鳴り響かすんだ きっと
出典: ミラクルをキミとおこしたいんです/作詞:山口隆 作曲:山口隆
人と人の出会いによって世界中を刺激する。
各国の首脳会談ではありえることですが政府要人でもない市井の人がそんな奇跡を起こせるものでしょうか。
サンボマスターはその不可能性を覆そうと歌います。
奇跡というものは可能性の範疇の中に必ず息を潜めているのだと確信しているのです。
山口隆やサンボマスターは市井の人に向けてしか歌いません。
勇気付けたいのは政治家ではなく普通の暮らしをしている私たちなのです。
「ミラクルをキミとおこしたいんです」は壮大なラブソングであります。
しかしラブソングの境界線を超え出て本質的な「ミラクル」を起こすことを誓うのです。
普通の暮らしをする私たちにとっての「ミラクル」ですから些細なものでも貴重でしょう。
些細なものであっても「ミラクル」である限り、私たちの生活を一変する力があります。
私たちの生活環境を変えてしまうくらいの威力があれば、見ている世界は衝撃を受けるのです。
山口隆とサンボマスターはこうした種類のささやかな「ミラクル」を大事に歌います。
普段から影響力がある人が人々の暮らしを変えるのは特に「ミラクル」と見做さないのです。
普通の暮らしを送る私たちが世界に影響を与えるからこそ「ミラクル」なのだと歌い切ります。
キミこそ希望の人
キミからの告白で毎日が変わる
あなたに出会って全てが変わってしまったの
キミから新しい希望が香ってきたんだよ
苦しい夜ならもう僕はたくさんだから
細胞 螺旋の奥から変わってしまいたいよ
出典: ミラクルをキミとおこしたいんです/作詞:山口隆 作曲:山口隆
最初のラインはキミから僕に贈られた言葉でしょうか。
こんなことを突然いわれたのならば確かに日常は一変します。
告白されたことがある人は分かることです。
こうした言葉を投げかけられると一瞬にして世界は光り輝きだします。
濁ったように見えていた普段の生活がバラ色の宇宙になってしまうのです。
それは僕自身がキミに与えた良い影響が元になっています。
僕はまだまだ気付いていませんが、自分自身に人を惹き付ける力があったのです。
告白されると自分自身の魅力をようやく知ることができます。
これからの日々は無敵であるような全能感に支配されるのです。