イントロでALICEが肩から掛けていたショールは、ご存知LOUIS VUITTON。
ブランドロゴが大きくあしらわれていましたね。
ダンスシーンのTシャツにはFENDIの文字がありますし、ショートパンツはFENDIのモノグラムです。
オーバーサイズのデニムジャケットの胸元にはGUCCIのパドロックネックレス。
探せばまだまだ出てくるはずです。
実は「ハイブランド」「HIPHOP」と深い関係にある人物が、歌詞に登場します。
ブランドの良し悪しはどうでもいい
その人物とは「ダッパー・ダン」です。
私を只のお人形さん とか思ってる貴方ご隠居さん
LV切り刻むダッパーダン 石頭屁理屈ばっかじゃん
背伸び、ドヤ顔でよく喋る
Silly hoにはお似合い偽物CHANEL
出典: Watch Out!/作詞:GIORGIO13, TA 作曲:GIORGIO CANCEMI
仕立て屋だった彼は、こうしたハイブランドのロゴを使った「ブートレグ」品を制作していました。
ブートレグはもちろん著作権違反。
しかしブートレグであっても、ハイブランドが手に入らない黒人ハーレムでは大人気でした。
ブランド性のみならず、秀でたデザインセンスをアパレルに乗せたダッパー・ダン。
というわけで彼の服を着て公の場に出るHIPHOPアーティストも多数いたのです。
しかしその時点で、彼の服はある種ブランド化していたともいえるでしょう。
ダッパー・ダンの服=クール、という等式ができてしまったのです。
今回のMVで、ALICEは運動強度が高いHIPHOPダンスにハイブランドを取り入れています。
しかもひと目見てブランド名が分かるようなものばかりです。
ブランドだから良い、ブランドではないから良い、という枠組みとは無縁に見えますね。
「そこに価値はない」という意味を感じます。
つまり、高い服を着せられた「人形」としてのALICEに注目して欲しくはないのです。
内面を見て欲しい。ロングコートの中にあるレーシーなボディスーツが真理を語っています。
彼女自身を注視して欲しい。それをブランド品とうまく絡めて表現しているのです。
千手観音!息の合った手の動きに注目
HIPHOPダンスの合間に突如として挟み込まれるのが、千手観音を思わせるダンスです。
指先のちょっとした動きまで計算された美しい動きに、思わず見惚れてしまいます。
実は千手観音の登場にも、深い意味がありそうなのです。
千手観音が意味するもの
「十一面千手観音」「千手千眼(せんげん)観音」「十一面千手千眼観音」「千手千臂(せんぴ)観音)」など様々な呼び方がある。
「千手千眼」の名は、千本の手のそれぞれの掌に一眼をもつとされることから来ている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/千手観音
千あるのは手だけではなく「眼」もまた千個あるのです。
つまり、千手観音は千の瞳で何かを注視できます。
これもまたwatchと繋がりますね。
見る側の入れ替わり
MVのダンサーは女性ばかり。千手観音のシルエットも女性たちが作り出しています。
ということは、千の瞳で注視するのは女性側・ALICE側だといえるでしょう。
先程までは「気を抜かないで」「目を離さないで」と恐らく男性に注意喚起していたはずです。
しかしこのシーンから彼女たちが見る側、もしかすると「監視」する側にまわります。
「きちんと見ているかどうか、チェックしているから」ということでしょう。
なぜシルエット?
「見ている」ことを強調するのであれば、彼女たちの視線がしっかり分かる方が良いはずです。
しかしMVで千手観音はシルエットとして映され、女性たちの表情は見えません。
実はここにも大きなポイントがあるのだと推察します。
たとえ暗闇だとしても、見ていないようでも、彼女たちは見ているのです。
いつだって見ているから「watch out=気を付けて」ということではないでしょうか。
バーレスクのショー!
MVの終盤、ガラリと雰囲気が変わります。
それまでは妖艶でありながらもHIPHOPの力強さを手放さないダンスでした。
女性が踊っているのに、パワーは男性以上だったかもしれません。
しかし最後はさながらバーレスクのように変化しました。
ここにも意味があるのではないでしょうか。