演歌歌手・北見恭子の人気曲
本日ご紹介するのは、演歌歌手・北見恭子による楽曲【紅の舟唄】についてです。
1973年にデビューして以来、地道ながらも着実な活動を演歌界で続けている彼女。
これまでに40枚以上シングルをリリースされていますが、この曲は1993年に発売されたものです。
数多の彼女の名曲の中でも、これは多くの人に歌われ愛されてきた曲の1つともなっていますね。
この楽曲で描かれているのは、愛する人との悲しい別れの情景。
彼女は一体どのような別れの情景を、曲中で歌い上げているのでしょうか。
早速本作の歌詞の内容について、詳しく解説をしていきたいと思います。
早速歌詞を見ていこう!
まだあなたを好きでいさせて
この舟が 酒田港に着くまでは
わたしはあなたの こころ妻
紅花溶かした 恋化粧
出典: 紅の舟唄/作詞:松井由利夫 作曲:岡千秋
酒田港は山形県酒田市にある港のこと。こころ妻、とは心の中で想い慕う相手を指す言葉です。
この歌の主人公である私には、自分のことをとても愛してくれていた男性がいたのでしょう。
そしてきっと彼女もまた、彼のことを深く深く愛していたに違いありません。
けれどそれは、彼女の乗る舟が酒田港に到着するまでの話だといいます。
2人はどうやら、並々ならぬ事情があって別れを選ぶこととなったようですね。
けれど一度は確かに、これからも共に生きたいと願うほど強くお互いを愛していた2人。
その想いは、簡単に忘れることができるほどのものではありません。
だからこの舟が港に着くまでは、あなたのことをまだ想い続けていてもいいですか。
そんな気持ちが、この歌には込められているのでしょう。
昔口紅は、紅い花から作られていました。彼女はこれまで幾度も口紅を引いていたのでしょう。
誰よりも一等恋慕う、深く愛した彼のことを思いながら。
もう二度と、彼に会えないということをもちろん知っていても。
今もまた、きっと舟の上で彼女は紅い紅を引いているのです。
唇を真一文字に結び、辛い別れに今にも零れそうな涙をぐっと我慢しながら。
想いは辛くなるだけだから
エンヤコラマカセの 舟唄に
捨てて心は最上川 最上川
出典: 紅の舟唄/作詞:松井由利夫 作曲:岡千秋
山形県の民謡、最上川舟唄には「エンヤコラマカセ」というお囃子のフレーズが登場します。
この歌に出てくる「エンヤコラマカセ」はきっとそこから来たものですね。
舟にのって揺られながら、愛する人と別れ最上川を下っていく彼女。
もしかしたら船を操る船頭さんや、同じ舟にいる乗客の誰かがこの民謡を歌っていたのかもしれません。
民謡のお囃子が聴こえる中、彼女は大事な彼を想う心を舟から流れの早い最上川へと捨てていきたい。
もしかしたらそう願っているのではないかと思います。
もう二度と会う事のできない、誰よりも深く愛した人。
彼を想う心を持ち続ける限り、彼女はきっとずっとその想いに苦しむことになるのですから。
この想いを、私の心から綺麗に流して消し去って欲しい。
彼を愛しながらもなお、彼女はそう願わずにはいられないのです。
愛する人との別れを惜しむ
敢えてゆっくりと向かう理由は?
少しでも 長く一緒にいたいから
汽車には乗らずに 川下り
あの山向うは 情け宿
出典: 紅の舟唄/作詞:松井由利夫 作曲:岡千秋
何らかの事情で、別の地へと旅立たなければならなかった彼女。
その場所に向かう方法は、どうやら汽車など舟以外にもあったようですね。
ですが彼女は敢えて、その舟という方法を選んだようです。
確かに汽車などを選ぶより、舟を選んだ方が目的地に向かうのに時間がかかってしまいます。
しかしだからこそ、愛するあなたへの想いと、その分まだ長く一緒にいられる。
あるいはもしかしたら、愛する彼は彼女を新しい土地まで送り届けているのかもしれません。
もしそうであれば、物理的な意味でも愛する彼と少しでも長く一緒にいられますものね。
新しい土地に着いてしまえば、そこで2人の関係はいよいよ終わりを迎えてしまいます。
だからできるだけ、ゆっくりとした方法で新天地に向かう方法を彼女は選んでいるのです。
情け宿、とは愛する2人が密会をするために会う宿のことを意味します。
ひょっとしたら2人はこの宿で、きっと最後となる契りを交わすのかもしれません。
2人を濡らすのは最上川の水、それと…
エンヤコラマカセの 舟唄に
せめて濡らすな別れ風 別れ風
出典: 紅の舟唄/作詞:松井由利夫 作曲:岡千秋