春に咲く木蘭の花

蕾から何かが旅立つ?

スターダスト☆レビュー【木蘭の涙】歌詞の意味を独自考察!主人公は女性?壮大なラブソングの背景を紐解くの画像

春に咲く木蘭(モクレン)は、細長い蕾を空に向けて開花の時期を迎えます。

その蕾の中には美しい花びらが隠れていて、暖かくなるのを待っているのです。

内側を白で彩られた薄紫色の花が咲く時、蕾の中にあった何かが空へと旅立っていく。

スターダスト☆レビューの名曲「木蘭の涙」は、そんなイメージから生まれたような気がします。

旅立って行ったのは”あなた”だけなのでしょうか。

”あなた”の旅立ちを目の当たりにしてしまった主人公。

今の辛さを乗り越えて、新しい明日へ旅立って行こうとする姿を、きらめく光を感じさせるメロディが後押ししているようです。

始まった瞬間に引き込まれる…!

心の中で“あなた”の名前を呼ぶ

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逢いたくて 逢いたくて
この胸のささやきが
あなたを探している
あなたを呼んでいる

いつまでも いつまでも
側にいると 言ってた
あなたは嘘つきだね
心は置き去りに

出典: 木蘭の涙/作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史

始まった瞬間に引き込まれるのが、この曲の凄いところです。

低い音から高い音へと上がっていくメロディーからは、切ない思いが溢れています。

少し抑え気味に歌う根本要のボーカルが、かえって胸に沁みる歌い出しです。

愛する人はもう旅立って、二度と逢うことはできません。

苦しくても言葉にすることはできずに、心の中で“あなた”の名前を呼ぶだけです。

その声が相手に届くはずもないのに、そうせずにはいられないのでしょう。

“ささやき”から想像するのは、聞き取れないくらいのとても小さな声です。

だけど本当は大きな声で叫びたいくらい、辛くて悲しいはずなのです。

幸せだった日々が優しい思い出になるには、まだ早すぎます。

失ったものは余りに大きく、耐え難い心はもう逢えない人の言葉にさえ傷ついてしまうのです。

愛する人を責める気持ちなど本当はないのに、残された自分の心はどうしようもないくらい悲しいのでしょう。

誰もが主人公に感情移入してしまうような、素晴らしいオープニングだと思います。

そして印象的なこの歌い出しのメロディー。

上昇音階を多用することで心の高揚感や、歌詞に込められた旅立ちを表現していますね。

曲の構成としては、サビの盛り上がりを冒頭に配置する伝統的な曲作りの手法です。

しかし、イントロもなくリズム楽器を入れず、ストリングスだけの独唱に近いアレンジがとても素晴らしい。

このアレンジが、歌声とともに迫ってくる歌詞の印象を際立たせています。

“花籠“を抱えるのは?

心に迫る喪失感

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いとしさの花籠
抱えては 微笑んだ
あなたを見つめてた
遠い春の日々

やさしさを紡いで
織りあげた 恋の羽根
緑の風が吹く
丘によりそって

出典: 木蘭の涙/作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史

“花籠”を抱えるのは、女性が似合うように思います。

ただ、主人公は男女どちらに置き換えても不自然ではありません。

敢えてどちらにも取れるように歌詞を書いたのではないでしょうか。

この曲を聴いた人は男性でも女性でも、主人公となって悲しい物語の世界に入っていけるでしょう。

二人の思い出の場所は、春になると美しい花が咲き乱れる丘です。

春の少し霞んだ雰囲気が、悲しい思い出と重なるように感じます。

思い出の中の世界は、まるで儚い夢のようです。

このパートでは、深い悲しみと対比させるように穏やかな情景を描写しています。

限りなく優しい言葉をここに並べたことで、より主人公の喪失感が聴く人の心に迫るのです。

繊細な情景の描写を入れることで、大きな悲しみをカモフラージュしたい主人公の気持ちを表したのかもしれません。

失ったものが大きいほど、楽しかった春の思い出は心の奥に優しい気持ちを呼び起こすのです。

永遠の眠りについた“あなた”

凝縮された物語

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やがて 時はゆき過ぎ
幾度目かの春の日
あなたは眠る様に
空へと旅立った

いつまでも いつまでも
側にいると 言ってた
あなたは嘘つきだね
わたしを 置き去りに

出典: 木蘭の涙/作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史

初めて二人が出逢ってから間もなく“あなた”は病に冒されたのでしょうか。

様々な生命が息吹く季節は、何年か経って悲しい季節になってしまったのです。

ほんのわずかな救いは、静かに永遠の眠りについたことでしょう。

耐えられないくらい悲しくて、主人公は“あなた”を責めずにいられません。

病床で辛い思いをしていたのが、痛いほど分かっているはずなのに。

本当は責めているのではなくて、自分を一人にしないでほしいという切ない願いなのでしょう。

どんなに望んでも、叶うことのない願いです。

短い歌詞の中で何度か春が訪れ、二人の間にかけがえのない思い出が重なっていったことが分かります。

何年かの二人の物語が1段目の歌詞の中に凝縮されていて、聴く人の胸の中を通り過ぎるのです。

毎年訪れるあたたかな春の時間。

きっとまたあの穏やかな時間がやってくると心待ちにしていたのに…。

主人公が直面したのは、ひとりぼっちの世界でした。

そばにいるはずの”あなた”がいない寂しさ。

主人公は、ひとりの世界がこんなに広く虚しいものだとは思わなかったのでしょう。

ここで、冒頭のメロディーが繰り返されます。

主人公の心情を何度も繰り返すことで、切なさや悲しさの大きさが伝わって来るのです。

思い出の丘にひとり