蕾から旅立った魂

スターダスト☆レビュー【木蘭の涙】歌詞の意味を独自考察!主人公は女性?壮大なラブソングの背景を紐解くの画像

木蘭のつぼみが
開くのを見るたびに
あふれだす涙は
夢のあとさきに

あなたが 来たがってた
この丘にひとりきり
さよならと言いかけて
何度も振り返る

出典: 木蘭の涙/作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史

木蘭の花を二人で眺めていたのは、春のことです。

“あなた“はきっと、「綺麗」と言ったのでしょう。

もう一度あの丘で木蘭の花を二人で眺めることが、ベッドの上の“あなた“の願いだったはずです。

もしかしたら、主人公にはそれが叶わない夢であることが分かっていたのかもしれません。

分かっていても、また二人であの丘へ行こうと約束していたのではないでしょうか。

蕾が開くたびに泣いてしまうほど、主人公の心は深く傷ついています。

細長い木蘭の蕾の中には、何年も病に苦しんだ“あなた“が膝を抱えて目を閉じている。

目を開けて開花とともに空を見上げた時、“あなた“の魂は空へと旅立ってしまった。

“あなた“は苦しみから解放されたのに、主人公は一人残されて木蘭の花を見るたびに涙する…。

最初に書いた、この曲のイメージです。

幻でもいいから”あなた”に微笑んでもらいたいと思う気持ち。

主人公の瞼の裏には、まだ”あなた”の姿が見えているかのようです。

情熱を燃やした”あなた”への愛。

今となっては夢のようにも思えるけれども、木蓮のつぼみを今年も見ることができるのが現実です。

現実と夢の間から抜けきれないもどかしさが、愛する人を失った今でも主人公の胸を占めているのでしょう。

口にできない“さよなら”

もう一度あの丘へ行きたいという“あなた”の願いは叶いませんでした。

主人公も約束を果たせず、一人であの丘へ行くことになります。

春の柔らかい日差しと靄のかかったような空の色、鳥のさえずりや丘に咲き乱れる花。

その中には、少し背の高い木蓮の花も咲いています。

景色が美しければ美しいほど、主人公の胸には切ない思いが押し寄せてくるのです。

隣りにいるはずの“あなた”は既に旅立ち、思い出の場所は主人公にとって辛い場所になってしまいました。

大切な人を失った悲しみは心を締め付けます。

立ち去ろうとしても、そこで微笑んでいた“あなた”が主人公を振り向かせるのでしょう。

もちろんそこに“あなた”がいるはずもありません。

それでも最後の別れを告げるのを躊躇うくらい、もう一度逢いたいという思いが募るのです。

根本要の声は、なんだか泣いているようにも感じます。

ここが、この曲で最も切なく盛り上がるパートです。

曲の中ごろに出てくる英語のコーラスでは、主人公の思いがストレートに歌われています。

”あなた”を失った後も”あなた”に会いたくてたまらない、そして今でもこれからも”あなた”をずっと待ち続けます。

癒えない悲しみ

また来年の春になれば…

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逢いたくて 逢いたくて
この胸のささやきが
あなたを探している
あなたを呼んでいる

いつまでも いつまでも
側にいると 言ってた
あなたは嘘つきだね
わたしを 置き去りに

出典: 木蘭の涙/作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史

前のパートで最高潮に達した切ない思いはそれだけでは足りずに、ここでも溢れ出しています。

胸の中で“あなた”に向かって叫んでいるのです。

これまでに数え切れないくらい何度も繰り返したはずなのに、それでも悲しみが癒えることはありません。

永遠の別れは、これからも主人公を苦しめ続けるのでしょうか。

美しい花を見るたびに悲しい思い出が蘇るとすれば、希望に満ちているはずの春も辛い季節でしかないのです。

「木蘭の涙」はフェイドアウトするように静かに幕を閉じますが、悲しい余韻はいつまでも続きます。

また来年の春になれば、木蘭の花が咲くからです。

主人公の悲しみは、これからも消えることはないでしょう。

時の流れが、少しずつ心を癒やしてくれるよう願わずにはいられません。

ひとつ希望があるとすれば、主人公が春が来ることを拒んでいないことです。

この曲の曲調は悲しく落ち込んでいるイメージではありません。

メロディからは、主人公も悲しい記憶を乗り越えて、新しい世界へ旅立とうとする希望を感じるのです。

また、春になって木蓮を見るとき”あなた”を思い出すかもしれません。

それでも、この悲しみを乗り越えることが”あなた”の願いであることを、主人公は悟っているのではないでしょうか。

木蓮の花言葉は、自然への愛や持続性といわれます。

主人公は新しい世界に旅立って行っても、”あなた”への愛は永遠に続いていくのです。

どこまでも伸びる声

褒められて伸びるタイプ?

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顎をちょっと突き出して顔を上に向けて歌う根本要の姿は、もうお馴染みになってきたかもしれません。

普段喋る時はあまり綺麗な声とは言い難いのですが、いざ歌い出せば持ち前の歌唱力を遺憾なく発揮します。

「木蘭の涙」は、彼の声が最も美しく響く曲なのではないでしょうか。

少しだけざらついた感触のある声が、切ないメロディーに乗って聴く人の心に染み込んでくるのです。

彼のどこまでも伸びる高い声は、まさにスターダストレビューの象徴です。

ところが意外なことに、最初は歌手になろうと思っていたわけではないそうです。

歌が上手いと自覚したのは、デビューして数年経って周囲から「上手い」と言われるようになってからだとか。

それから歌もギターも更に精進したのだそうで、まさに褒められて伸びるタイプです。

元々の才能が、努力することによって更に磨かれたということなのでしょうね。

ミックスボイスで魅力的な歌唱を聞かせるアーティストは他にもいますが、彼の歌唱力は突出しています。

実はこの歌詞、最初は男性が女性の死を悼むイメージだったそうです。

ところが、歌を実際に聴くと女性目線の歌の印象になっているという評判。

主人公の性別は明らかになっていないとのこと。

根本要の哀愁を帯びた歌声が、女心の切なさを思わせるのでしょうか。

他の曲でも女心を切々と歌い上げていますね。

プロもカバーしたくなる名曲

高畑充希から松崎しげるまで

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「木蘭の涙」があまりにも素晴らしい曲なので、カバーしたプロもたくさんいます。

高畑充希、夏川りみクリス・ハート佐藤竹善、それから谷村新司に松崎しげるなど。

どのカバーにもそれぞれの味はあるものの、やはりオリジナルには及ばないように思います。

この曲には、根本要の声が不可欠なのです。

絶品だったのは、人気番組『クリスマスの約束』で見た小田和正と根本要のデュエットでした。

180度違っていそうな二人の声質が、この曲では見事に融合していたのです。

もうかなり前のことですが、このライブを生で見ることができた人を羨ましく思います。

永遠の名曲となったこの壮大なラブソングを、アマチュアも歌ってみたくなるのが当然です。 

カラオケで挑戦した人も大勢いるでしょう。

だけど無事歌い終えたとしても、いったいどんな顔をすればいいのか分からないのではないでしょうか。

マイクを置いた後に起こるのは、称賛の拍手か微妙な反応か。

歌い手の顔に浮かぶのは、照れ笑いか恍惚の微笑みか。

ここにも小さなドラマが生まれそうです。

実際にカラオケでも難しい歌の部類に入ると思います。

特に、歌いだしの音階が上昇していくメロディ。ボイストレーニングでも音程が合いにくいので気を使うといわれています。

でも最初でコケてしまうと、後は散々な結果が待っています。

この曲はそれでなくても難しい音階が、最初に何の前ぶれもなくでてくるところが難関ですね。

歌のキーも全体的に高い音域になっています。オリジナルが根本要ならではの高音域なので、ここは無理をしないことです。

スターダストレビューがカバーした曲