この曲を歌わないコンサートは…あり得ません
「今夜だけきっと」はスターダスト☆レビューの代名詞ともいえる名曲です。
リリースは1986年6月、アルバム「VOICE」からのシングルカットでした。
名曲には常に伝説が付きまといますが、「今夜だけきっと」にもそれが当てはまります。
スタレビのメンバーはレコーディング時点から相当手ごたえを感じていたようだが、レコード売り上げは「夢伝説」以降では最低の約1万3千枚(オリコン調べ)に留まった。しかしながら、以後のコンサートでは毎回ここ一番に歌われる定番ナンバーとなっている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/今夜だけきっと
スターダスト☆レビューと聞けば、ボーカル担当の根本要さんの伸びやかな声が脳内に広がります。
悲しみをこらえるだけではなく、次への思いをつなぐ声で「今夜だけきっと」を歌い上げました。
当初はヒット作品にならなかったのが今となれば信じられません。
その時だけではなく、ジンワリと心に沁みる曲はロングセラーの条件。
コンサートでこの曲が聞けないとちょっと残念と思ってしまいますね。
いつでもどこでも、何度でも聴きたい「今夜だけきっと」。
独自解説を始めますが、あくまでそっと歌詞世界に寄り添いたいと思います。
この1行に悲しみが…
唇をかみしめるように
今夜だけきっと 悲しいの
出典: 今夜だけきっと/作詞:根本要・手島昭 作曲:根本要
期間限定を表す『だけ』という言葉。期間が限られている季節商品なら楽しさに溢れています。
レアものの限定商品なら行列をしてでも手に入れたいですね。
でもこの歌詞に出てくる『だけ』は悲しみ限定。悲しいのはこの夜だけというやせ我慢?
そして『だけ』に続いた『きっと』に微かな願望が見えます。
悲しみに浸るのは今日だけ、日付が変わればそこから抜け出せるはずと思いたいのです。
歌い出しの1行に2人の作詞家の思いが星屑になって埋め込まれました。
目の前にある夜が終われば…
明日になれば 忘れられるのに
出典: 今夜だけきっと/作詞:根本要・手島昭 作曲:根本要
悲しい自分は今だけ、いつも笑っているから涙なんか似合わない。
いつもそうでした。失敗して落ち込んで悲しみの底にいても、一晩眠れば復活です。
切り替えの早さが長所でした。
だから今回も日付が変わって新しい日が来れば、悲しみなんて無くなると信じているのです。
暗闇の中では進む道も見えません。太陽が昇ると見えてくるはずの新しい道…。
でも残念ながらこの夜の悲しみは心から簡単に消えてくれないサイズ。
いつもと違うけれど大丈夫と言い聞かせる言葉は、次第にフェイドアウトしていきます。
心から悲しみを出す時は優しく…
形になった今の思い
ため息ひとつ 手のひらにそっとこぼれて
風に消えた
出典: 今夜だけきっと/作詞:根本要・手島昭 作曲:根本要
周りの人にも分かるように音を立てて大きく息を吐きだす…こんな『ため息』もあります。
心の中でモヤモヤと絡み合う悲しみや苦しみ、すべてをぶつけるように吐き出す息。
でも今夜出したため息は小さめ、重さもほぼ感じない軽量のため息です。
周りに誰もいないのなら、大きなため息で悲しみを吐き出してしまうことも出来たはず。
それをしないで出した小さなため息。悲しみは決して小さくありません。
今の悲しみが本当に理解できるのは、自分しかいないと思っているのでしょうか?
他人にため息を聞いてもらっても、変わらない今の悲しさ。
ついた自分にしか分からない小さなため息が、涙の形をしているように見えました。
今この夜だけの涙をため息が消してくれることを願いながら、時間は過ぎて行きます。
空の描写も悲しくて…
入道雲が見える夏の空・天高く馬肥える秋など、晴れていれば高く広がる空が浮かびます。
突き抜けるような高く青い空の下にいる2人の恋が輝きますね。