歌詞の読み解きに戻ります
先程の歌詞にもあったように、彼には自分が出て行ったあとの彼女のことを心配する気持ちがあります。
彼女のことは心配だけれど、こうするしかなかったという彼の心情を想像してみると本当に複雑です。
そして”窓の光映す~”という歌詞からは、彼は彼女が僕を背にした時、夕立のように泣くことも想像していた様子がわかります。
夕立って急に激しく降り出してなかなか降り止まないもの。
夕立の時にこの曲を聴きながら歩いているとこの感覚が想像しやすいかもしれません。
彼の感じていたことがだんだんとわかってくる2番の歌詞
涙なしには聴けない…
たとえ辛いことがあっても 抱きしめてくれたのに
僕は思い描く大人に まだなれそうもなくて
迷ってないのは嘘だけど 開けるんだ君のいない扉を そっと
出典: もう会えないけど、平気ですか/作詞:岡村祥佑 作曲:MLC・Calos K.
ここからまた過去の回想に入っていきます。
彼女は彼が辛い時、優しく抱きしめてくれました。
そう、きっと彼女の方が彼より大人だったんです。少なくも、彼はそう感じていました。
でも彼はまだ自分の中で思い描いている大人にはなかなかなれそうもなくて、そんな彼女を幸せにしてあげられる自信がありません。
彼女のそばにいるのが僕ではもったいないと感じていたのではないでしょうか。
もちろん迷いはありましたが、彼はひとり、彼女のいない扉を開ける決心をしました。
「もう会えないけど、平気ですか?」
「伝えたいことないですか?」
優しく問いかける君の涙 夕立のように、、、
出典: もう会えないけど、平気ですか/作詞:岡村祥佑 作曲:MLC・Calos K.
夕立は降り出した時は激しく、降り止む前にかけては緩やかに優しく降り注ぐような雨になります。
先程のこの問いかけからは、彼が発した言葉のように受け止められましたが、ここではまるで彼女の言葉のようではありませんか。
やっぱり彼女の方が大人なのかもしれません。
一方的に出て行ってしまった彼に対して怒りという感情ではなく、彼を心配に想う気持ちが出てくる彼女。
彼が今、平気かどうか、「もう伝えたいことはない?1人で大丈夫?」と、「」の中の歌詞は、彼が手紙の中で彼女の言葉を想像したものだったのかもしれません。
これからのことに切り替わっていく3番の歌詞
これでよかったんだと 強がって強がって背を向けよう
確かにあった今日までを 二人が忘れる日まで
出典: もう会えないけど、平気ですか/作詞:岡村祥佑 作曲:MLC・Calos K.
この部分は彼が彼女に一緒にこうしていこうよというメッセージを送っているのだと思います。
今日まで一緒に2人で過ごしてきた日々は夢のようだったけど確かにそこにあった現実。
でもその思い出にすがってしまうのではなく、背を向けないと2人は前へは進めません。
だから「これでよかったんだよ」と、彼女にも自分自身にも言い聞かせているようです。
「もう会えないけど、平気ですか?」
「忘れモノはないですか?」
ドアの向こうから 微かに聞こえた
愛しい愛しい声 だけど、進もう
「もう振り向いてくれないですか?」
「このまま二人終わりですか?」
恋の終わりに 降り注いだ
愛しい愛しい人 僕は夕立のように。
出典: もう会えないけど、平気ですか/作詞:岡村祥佑 作曲:MLC・Calos K.
ここまで聴くと、「」内は彼女の声だということが明らかになります。
後ろ髪をひかれる思いではあったけれど、彼女のためにも進まなくちゃいけない。彼の決心は揺らぎません。
夕立のフレーズはずっと「、、、」だったのに、最後は「。」になっています。
1番、2番の歌詞ではまだ続く可能性が感じられましたが、これでも本当に終わりなんだと感じさせられる歌詞です。
歌詞を最後まで読み解いてみて
愛の形は、必ず2人が一緒に幸せになるという形ばかりではありません。
相手を想うからこそ、自分ではない誰かと人生を過ごしていった方が幸せな人生を送れるんじゃないか…。
と想って、別れを選択する恋もまた、1つの愛の形だと思いませんか?
この曲の歌詞から想像できるのは、きっと彼は繊細な人だということです。
繊細だからこそ彼女のいろんな感情を感じてしまう…。
だからそのいろんな感情を感じとって、苦しくなってしまうこともあったのではないでしょうか。
彼女が彼をそっと抱きしめてくれたように、彼も彼女をあたたかく包み込んであげたかった。
だけど、彼は自分自身の不安定さを自分でよくわかっていたから、そうできる自信を持てなかったのではないかと思います。
この曲を聴いていると、私自身も
「恋人のことをあたたかく包み込んであげられているだろうか?」
「本当に自分が相手でいいんだろうか…。」
とあらためて考えさせられます。
この曲は、同じ状況の人にエールを送るというよりは、その前段階にある人たちに向けたメッセージを込めた曲なのではないかと思います。
私はこの曲を通じて、自分自身のことを振り返るきっかけをもらえました。
歌詞が美しいだけではなく、心の底から音楽ってすごい力を持っているなと感じることのできる曲。
それがこの曲なのではないでしょうか。