黒毛和牛上塩タン焼680円

大塚愛といえば、代表曲「さくらんぼ」で一躍人気になった女性歌手として有名です。
そんな彼女の楽曲はキャッチーでポップな明るい歌が多い印象ですが、2005年に発売された「黒毛和牛上塩タン焼680円」という曲は、キュートでポップだった彼女のイメージをガラッと変えるような大人っぽい歌詞が話題となりました。
当時は歌詞の内容に過激な印象を持ってしまうとして物議を醸したこともあるようですが、それでも現在まで続くヒット曲となっているので、やはりこれも彼女の才能なのでしょう。
新たな一面を見せながらも、彼女らしいその独創的な歌詞やタイトルは健在です。
「さくらんぼ」とは違った、大人らしい彼女の一面を開花させた楽曲「黒毛和牛上塩タン焼680円」。
今回はその楽曲のタイトルや歌詞についてご紹介していきます。
どうしてこんなタイトルにしたのか?
女性の欲情を食欲に重ねた
大好きよあなたと
ひとつになれるなら
こんな幸せはないよ
出典: 黒毛和牛上塩タン焼680円/作詞:愛 作曲:愛
「黒毛和牛上塩タン焼680円」は、曲のタイトルからして一見焼肉の歌のように思えますが、実は男女の大人の関係を描いているのです。
タイトルの時点でもすでにインパクトがあるので興味をそそられますが、歌詞の内容をみるとさらに驚きます。
「網の上に寝かせて」と自身をお肉に例えてはいますが、これもベッドの上に寝かされる女性を連想させるフレーズでもあります。
大塚愛はさくらんぼなどの楽曲でもそうですが、男女の恋愛関係を人間以外のものに例えて表現するのが非常に巧みなアーティストといえます。
直接的にならず、ユーモアを交えながら男女の関係を描いており、それが彼女のオリジナリティに繋がっているのです。
「肉を焼いて食べる」という一連の動作を恋愛と繋げるというのは、普通では思い付きません。
彼女がこの曲をヒットさせた結果このような表現は一般化し、現在では多くのアーティストが同じような表現をしています。
しかしリリース当時は、J-POPにおいてこのような表現をするのはとても画期的なことでした。
以前から同じような表現はあったとしても、彼女のように大ヒットを生むということは無かったのです。
そう考えれば、彼女の独創性というのがよく分かるのではないでしょうか。
次はタイトルについて考察していきます。
タイトルとCDの値段を合わせた遊び心
単純に曲のタイトルとするなら、中途半端な数字である「680円」を入れなくても、「黒毛和牛上塩タン焼」だけでも成立する気はしますが、実はこれには大きな仕掛けが隠されています。
この曲はシングル曲として発表されていますが、カップリング曲には「本マグロ中トロ三〇〇円(緑色)」と「つくね70円」という似たようなメニューがタイトルとなった曲が収録されています。
この3つの曲のタイトルにある数字を合計すると1050となりますが、これはCDシングルの販売価格である1050円に合わせた形となっているのです。
ちなみに、「つくね70円」という曲も「黒毛和牛上塩タン焼680」に負けず劣らず過激な曲となっており、大塚愛本人ですらその過激さを認めているほどです。過激すぎて歌詞サイトにも歌詞が掲載されていないのだとか。
彼女が「黒毛和牛上塩タン焼680円」という楽曲の歌詞で見せた遊び心は、タイトルにも表れているのです。
目を引くタイトルはこのような仕掛けによって出来上がったのですね。
他のアーティストと彼女の違いがよく分かるエピソードです。
B’zの楽曲に対抗して長いタイトルをつけた
「黒毛和牛上塩タン焼680円」というは非常に個性的なネーミングで、大塚愛さんらしさが出ているとも言えるものですが、このようなタイトルにしたにには、人気デュオであるB'zの楽曲に対抗したと言われています。
B'zの楽曲の中でも有名な「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」は楽曲のタイトルの概念を打ち破るかのような長いフレーズが特徴で、1993年の当時も話題になりました。
そしてこの長いタイトルに対して、大塚愛は「黒毛和牛上塩タン焼680円」という長いタイトルをつけたのだと本人が語っています。
オリジナリティある作品を作りたいという彼女のストイックさが表れているエピソードといえるのではないでしょうか。
誰かに先を越されたことを悔しがり、だったらそれ以上に目立つことをやってしまおうという彼女の魂胆が窺えます。
アニメのエンディングテーマにも起用
こんな大人な雰囲気を醸し出す楽曲ですが、実は地上波で放送されるアニメのエンディングテーマにも選ばれました。
日本テレビ系アニメ『ブラック・ジャック』初代エンディングテーマ。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/黒毛和牛上塩タン焼680円
楽曲からは想像できないその組み合わせから、放映当時はとても話題になりました。
しかしそのギャップが逆にアニメと楽曲両方に対しての注目度を上げたので、プロモーションは成功といえるでしょう。