まぶしく映る初恋の相手

河合奈保子【スマイル・フォー・ミー】歌詞を解釈!初恋が実ると…笑顔があふれる!キラキラのラブソングの画像

Smile for me Smile for me
あなたが あなたがまぶしいわ

出典: スマイル・フォー・ミー/作詞:竜真知子 作曲:馬飼野康二

伸びやかなサビです。

河合奈保子の歌唱力の高さや豊富な声量を感じます。

私のために微笑んでという言葉が初々しいです。

笑顔がまぶしい男性ということは美男子であったのでしょう。

美男美女のカップル。

コンプレックスのかけらも見当たらない青春がうらやましいです。

周囲からも祝福される恋愛であったのでしょう。

相手のことがまぶしく見えるというのは実際に根拠があるようです。

興味を惹かれる対象に私たちは瞳孔を大きく広げます。

そのために周囲の光量をたくさん吸収して視界が明るくなるというメカニズム。

こうした説明は無粋かもしれませんが人間というものは不思議です。

なぜあなたに惹かれたのかなどの理由は「スマイル・フォー・ミー」には書かれません。

河合奈保子のような美少女に釣り合うような素敵な男性を思い浮かべるしかないのです。

そうした男性像というものはあまり現実的ではないでしょう。

だからこそ河合奈保子の男性ファンも安心してこの恋を応援できるようになります。

アイドルを支持する男性ファンというものに今ほどの理解があまりなかった時代かもしれません。

それでも1980年代初頭は男女ともアイドル文化が華々しく花開きました。

アイドル戦国時代。

特別に売れるアイドルはいつの時代も一握りです。

アイドルに触れられる機会は主にブラウン管テレビや雑誌のグラビアだけ。

会えるアイドルの登場まではまだまだ遠い時代です。

アイドルの恋が発覚すると致命的なことになります。

そのためどこか現実離れした恋愛を歌う傾向がありました。

「スマイル・フォー・ミー」にもそうした傾向が貫徹しています。

レモンとキスの味

アイドルとレモンの不思議な関係

河合奈保子【スマイル・フォー・ミー】歌詞を解釈!初恋が実ると…笑顔があふれる!キラキラのラブソングの画像

レモン色の 風に抱かれて
おとずれたのはじめての恋
軽くふれただけの 淡いくちづけに
心ふるえていたの

出典: スマイル・フォー・ミー/作詞:竜真知子 作曲:馬飼野康二

レモンも若さを表す象徴でありました。

舶来の果実であるからでしょう。

アイドルたちは写真を撮る際にレモンを持たされることがよくありました。

どうしてレモンを持たないといけないのか、その理由は結構な謎なのです。

レモンに関しては何かしら爽やかなイメージを抱かれます。

清涼飲料水のキリンレモンなどの喉越しの爽やかさ。

食事でアクセントを添える存在。

こうしたことから爽やかなイメージが導かれます。

それでも風の色がレモンのようだという描写は突っ込みどころがたくさんあるのです。

しかしその後にふたりのファースト・キスが描かれます。

ファースト・キスはレモンの味がする

昭和の頃、初めてのキスの感想をこのように表現することがありました。

実際のキスはまったくそんなことはないのですが、なぜかこの表現が好まれました。

キスをしたことがない少年少女はこの表現に胸をときめかします。

「スマイル・フォー・ミー」が描いたレモンとファースト・キス。

同じラインにレモンとキスを閉じ込めたのもこうした文化的な背景があったのかもしれません。

アイドルが映画ドラマでキスシーンを演じるだけで大騒ぎする社会でもありました。

恋に積極的な少女

スマイルしながら笑顔を歌う

河合奈保子【スマイル・フォー・ミー】歌詞を解釈!初恋が実ると…笑顔があふれる!キラキラのラブソングの画像

両手広げ 私を抱いて抱きしめて
もっと愛を教えて
そうよ ときめく胸に
めぐりあって 求めあって 今日から二人
Smile for me Smile for me
あなたが あなたがまぶしいわ

出典: スマイル・フォー・ミー/作詞:竜真知子 作曲:馬飼野康二

河合奈保子はプロポーションが抜群でした。

そのため水着でのグラビアなどで当時の男性ファンを魅了します。

こうした傾向があったために当時のアイドルにしては一歩踏み込んだ内容が描かれました。

私を抱きしめて欲しい。

愛がどんなものかあなたに教えて欲しい。

愛を求め合いたい。

キス以上の恋愛関係を示唆する内容です。

しかしまだキスまででありその先の関係はまだまだこれからのものとして描かれます。

おそらくこの辺りが当時のアイドル歌謡曲のギリギリのラインだったはずです。

秋元康作詞のアイドル歌謡曲がその後の歴史を塗り替えてしまいます。

しかし当時の彼は作詞家としてはまだまだ駆け出しでした。

私はこの先、成長してゆく中であなたとの関係を深めるのでしょう。

相思相愛の恵まれた初恋が順調であること自体がまぶしく思えるもの。

しかし私にとってはあなたの笑顔こそが本当にまぶしいものとして描かれます。

初恋がうまくいくというのはその先の人生を鮮やかに照らし出すでしょう。

未来に対して何の不安も抱いていないのが感じられます。

私たちの思春期での本当の魂はもっと将来に対する怯えなどがありました。

青春というものは晴れ晴れしいものばかりではありません。

昭和のアイドル歌謡曲はそうした要素をあまり描かないです。

すぐ後に中森明菜が暗さを携えて登場しました。

しかし彼女はあまりに例外的です。

河合奈保子は自作曲シングル・カットするようになるとシリアスな内容を歌い始めます。

しかし模範的なアイドルであった1981年の時点ではどこまでも明るく健康的な恋を歌っていました。

その後に自作曲にこだわったのはアイドルというものへの反省的な視線を持っていたからかもしれません。

しかしいつもニコニコとアイドル・スマイルを浮かべていた当時は彼女の内心を誰も気にしなかったのです。

スマイルをしながら「スマイル・フォー・ミー」と歌っていた。

鏡の前で笑顔をいつも練習させられていたのでしょう。

アイドル文化はひとりの成長途上の少年少女を型紙にはめ込む傾向があります。

河合奈保子がその後に作曲への野心を燃やしたのはそうした型紙を破るための行為であったのでしょう。

「スマイル・フォー・ミー」と青春

1980年代をアイドルとして駆け抜ける

河合奈保子【スマイル・フォー・ミー】歌詞を解釈!初恋が実ると…笑顔があふれる!キラキラのラブソングの画像

あなただけよ ほかには何も見えないの
もっとそばにいさせて 肩がふれあうくらい
めぐりあって 見つめあって 光にとけて
Smile for me Smile for me
あなたが あなたがまぶしいわ

あなたが あなたがまぶしいわ

出典: スマイル・フォー・ミー/作詞:竜真知子 作曲:馬飼野康二

クライマックスの歌詞です。

お気付きでしょうがリフレインになっています。

最後までキラキラの青春を歌い上げるのです。

繰り返しになりますので解釈は控えめにいたします。

恋に積極的でまぶしい少女の姿。

青春という季節は様々な奇跡によって成り立っています。

初恋が両想いであるならば何でもできるような万能感さえ与えられるのです。

河合奈保子というアイドルを今の時代から振り返るとその魅力は抜群の歌唱力にあるのではないでしょうか。

当時の歌番組は生歌を披露することが大前提でした。

売れっ子のアイドルこそその出演回数の多さで歌唱力をどんどん身につけてゆくものです。

河合奈保子も一流のアイドルとして歌番組やコンサートなどで実力を磨き上げます。

「スマイル・フォー・ミー」を聴き返すとその声の伸びやかなことに心が萌えてしまうもの。

青春期の少女の想いを天真爛漫に歌い上げる歌唱力と表現力。

1980年代の一流アイドルの実力に舌を巻きます。

その後に竹内まりやから提供された「けんかをやめて」などでさらにその表現力が飛躍するのです。

大切に育てられ、なおかつ色々な努力を積んできたのでしょう。

河合奈保子自身の青春の記憶が「スマイル・フォー・ミー」などの楽曲に色濃く反映されています。

懐かしい想い出に浸っていただけるリスナー。

河合奈保子の隠遁後に生まれたような若いリスナー。

様々な方がこの記事を読まれていらっしゃると思います。

1980年代のアイドルの青春というものが如何にキラキラとしてそれ自体まぶしいものであったのか。

その輝きに目を細めながら「スマイル・フォー・ミー」に耳を傾けていただけたら嬉しいです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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