「隅から~」の展開によって、現代アートっぽさが強まります。
白い壁やカーテンと、茶色い板張りの床が印象的なこぢんまりとした部屋に、物はありません。
MV冒頭に登場した、白いTシャツとジーンズ姿の男性2人が、ひたすらあちこちに移動……。
歌詞に出てくる「隅・端・上下」を視覚化していると考えられます。
岡林健勝さん自身の音楽制作、さらに岡林健勝さんの曲を聴く人それぞれの人生観……。
両方の意味も兼ねているでしょう。とくに岡林健勝さんは念入りに描いた理想像がありそうです。
ただし「理想像」の歌詞の部分で一瞬、女性の顔の映像が挟まるところが謎めいています。
ほんの一瞬なのでうっかり見過ごしてしまいそうですが、潜在的に刷り込まれるイメージ。
演じているのは、兵庫県出身のモデル椎名美月さん。
indigo la End「蒼糸」やMy Hair is Bad「次回予告」などのMVにも出演されています。
前進あるのみ!
詩的な表現が秀逸
歩いた数だけ
かさばる埃に塗れ
霞みゆく時が来るから
止まれ、望め、描け、行け
出典: shut it up/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
白い壁の前を歩く姿がループ、白い羽根が降る……といった映像が続きます。
これは「歩いた~」の部分を可視化した表現でしょう。美しくも不思議なアート感覚です。
オレンジと水色のペンキで映像が霞み、逆回しの手形アートのようになっているところも素敵。
歌詞の意味としては「人生経験を積むと、問題も起き、悩むこともある」と解釈できるでしょう。
「埃」(ほこり)「霞み」(かすみ)といった詩的な表現になっているところが秀逸です。
時には立ち止まることも必要でしょう。しかし、結局は望みどおりに前身あるのみ!ということ。
ポジティブなメッセージがアート感覚で綴られているところが魅力です。
間違わない方法とは?
あくまで「つもり」
間違った方へ手招いてくる
うるさい言葉、耳を塞げ
心でそいつの喉を削げ
それくらいのつもりで行け
出典: shut it up/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
日々を生き、人生を積み重ねていくと、時には問題も起きる……という部分がクローズアップ。
前向きに挑戦したうえでの失敗なら、仕方がないとあきらめることもできるでしょう。
しかし場合によっては、誰かの間違った導きにつられてしまい、道を踏み外す可能性もあります。
悔やんでも悔やみきれない間違いを起こさないためには、冷静な判断が必要でしょう。
甘い誘惑は無視するのが一番!という話。それでもしつこく間違いを誘導してくる場合は……。
その間違った言葉を紡ぎ出す喉を……という過激な歌詞になっています。
ただし、実際の行動ではなく、あくまで「つもり」。それくらいの覚悟が必要なわけですね。
MVで描かれるオレンジと水色のペンキは、間違えずに前に進む!という意志の象徴でしょう。
何をしてもいい?
裏の顔がある?
笑顔の裏やら
心の中やら
隠してけるなら
何しても良いさ
だから迷わず
描け、狙え、したら行け
出典: shut it up/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
MVではこれまでの繰り返しに加えて、水鉄砲で狙いを定める映像が挟まってくるところが特徴的。
どうやら狙っていることがあるという前フリが強調されてきた印象です。
似たような反復ばかりみたいですが、実際には少しずつ変化が隠されていたことになるでしょう。
しかもアヤシイのが歌詞です。裏の顔や心の中に隠された思いがあると暴露されています。
誰かに間違ったことを言われても耳を貸さず、前を向いて進もう!というポジティブな話と矛盾。
そして「何をしてもいい」という大胆な発言まで飛び出しています。
コンテンポラリーミュージックっぽいサウンドのループが続いているので、実は見落としがち。
起承転結の「転」にあたる部分が、歌詞にしっかり描かれていたことがわかります。
そのうえで「描け~」のループが再び登場。つまり、何をやってもいい方向へ進む!ということ。
ただ、初めて曲を聴き、MVを見たときには、この前フリになかなか気づかないでしょう。