アイドルからアーティスト、そして女優へ
悩みながらコントにも挑戦した日々
篠原涼子さんと聞くと「演技派女優」をイメージする方が多いのではないでしょうか。
コメディやサスペンスなど、いろんな役を幅広く演じてきた篠原さん。
中でも評判がいいのは「アンフェア」「ハケンの品格」など、キリッとした働く女性を描いた作品です。
でも篠原さんは最初から女優としてスタートしたわけではありません。
子供の頃から歌手を夢見ていた篠原さんのデビューはアイドルグループでした。
東京パフォーマンスドール(TPD)は激しいダンスをしながら歌うスタイル。
日本では初の試みで、今は当たり前になった大人数グループアイドルの先駆けと言えますね。
その後、伝説のコント番組「ごっつええ感じ」でダウンタウンと共演しコメディを学びます。
でも篠原さんは「歌手なのに……」という思いを抱えながらコントを演じていたそうです。
そんな中、転機となったのが1994年発売の「恋(いと)しさと せつなさと 心強さと」でした。
ヒットメーカー・小室哲哉プロデュースで「篠原涼子 with t.komuro」の名義でリリース。
歌番組には小室さんも一緒に出演し、一気に注目される存在となったのです。
TKプロデュースで大ヒット
初めて歌手として注目されるように……!
楽曲のジャケットはまだ縦長の8cmCDの時代でした。
この曲で篠原さんは「歌手」として幅広く知れ渡り注目されるようになります。
20年以上前のリリース曲ですが、篠原さんがあまり変わってない……。
俳優の市村正親さんと結婚され今は2児のママですが、美しさは健在ですね。
下の動画は1995年に小室さんプロデュースの音楽イベントに出演された際の篠原さん。
もちろん小室さんも出演されています。
歌うときは凛々しいのに、トークになると可愛らしさが見えますね。
小室さんは未来を予言していた?
篠原さんをボーカルに抜擢したのは小室さんご自身でした。
「ごっつええ感じ」に出ていた篠原さんを見ていて思いついたそうです。
「ダウンタウンさんに鍛えられてるなら多少無理言ってもついてきてくれそう」と。
コントを演じていたことは無駄ではありませんでしたね!
そして小室さんは、この曲を歌う篠原さんを見て「女優の才能がある」とまで見抜いていたのです。
この曲はたった一人を愛し、ひたむきに生きる女性の歌です。
小室さんは「主人公になりきって歌の世界を表現する能力がすごく高い」とべた褒めでした。
「ストⅡ」挿入歌で人気に
夏休みにじわじわと……
TKプロデュースではありましたが、当時は無名の篠原さん。
人気が出るまでには少し時間がかかりました。
それも、火がついたのは歌番組ではなく、子供たちからだったのです。
この曲は格闘ゲームが映画化した「ストリートファイターII MOVIE」の挿入歌でした。
当然観に行くのは大多数が小学生の男の子たちです。
夏休みに映画を観た子供たちが「あの曲のCDがほしい!」と親御さんにねだる……。
そんな風にゆっくりと、この曲は浸透していったのです。
だから曲自体は1994年7月に発売されましたが、ヒットしたのは夏休みが終わる頃だったようです。
結果、累計で200万枚のダブルミリオンを記録し、同年の紅白歌合戦にも出場を果たしました。
まさにこの1曲で篠原さんの人生は大きく変わったのです。
では、なぜこの曲がこんなにも受け入れられたのか。
まっすぐで胸が熱くなる歌詞を見てみましょう。
私は闘う、あなたといるために……
ある日、世界が変わった
恋しさと せつなさと 心強さと
いつも感じている あなたへと向って
あやまちは おそれずに進むあなたを
涙は見せないで 見つめていたいよ
出典: 恋しさと せつなさと 心強さと/作詞:小室哲哉 作曲:小室哲哉
主人公には好きな人がいます。
その人を見ていていつも感じるのが「恋(いと)しさ」「せつなさ」「心強さ」。
恋心は複雑なものですが「せつなさ」が入っているところから恐らく片思いなのでしょう。
彼女が生きている時代は私たちと同じ日常ではなく、「戦い」が必須とされる弱肉強食の世界。
「あやまち」というのは「死」を意味しているように思いました。
それすら恐れずに、自分の正義に向かって突き進む一人の男がいます。
この人が彼女の「恋(いと)しい人」で、この人と一緒にいるためには泣いてはいられないのです。
彼女はできるだけ近くで彼を見つめるために自らも戦うことを選択します。