おがわわ
この曲最大の見せ場
ウチャチャチャチャとリズミカルに拍を刻むこの曲。
それは馬の疾走感を表しているのだと書きました。
しかし、唐突にリズムが変わり悲しげになるところが出てきます。
それがこの部分です。
曲調の変化も劇的ですが、歌詞の内容も一変します。
走っていた馬が、立ち止まる。
あえて「ふしぎ」と読ませるこの歌詞の意味とはなんでしょうか。
いよいよ、この曲の本質に迫る時です。
自然の雄大さ
勇敢に、そして颯爽と走っていた馬が止まります。
その理由と思われるものは、自然が持つ神秘とやらだというのです。
そしてその神秘は「ふしぎ」であります。
いったいこの神秘とはどういう意味なのでしょうか。
それは、「自然が持つ莫大なパワー」なのではないでしょうか。
この曲の主題はずばり「自然の力」といえると思います。
人間には理解できないこと、と言い換えてもいいかもしれません。
それらは自然の中ではある秩序を持っていますが、人間には理解できない。
だからこそ「ふしぎ」なのです。
人間の無力さ
この曲の主題は、「自然の力」だと書きましたね。
それはすなわち人間の無力さを表していることと同義です。
我々は高度に発達した科学文明の中にいます。
産業革命、それにまつわるデカルトらの合理主義などの思想の誕生が近代に起こりますね。
その時、人間は自然の中での人間の順位をトップにしました。
つまり、自然を支配しようとしました。
人間以外の生物を資源とみなし始めたのです。
しかし、我々はいまだに解明できない自然の謎を多く抱えていますし、自然災害にはかないません。
何か生物種が絶滅すれば食べるものにも困るでしょう。
結局人間は自然の中の一部に過ぎないと言わざるを得ません。
この曲が表す自然観
この曲も、そういった人間の無力さを表した曲だと言えるでしょう。
馬のように、優美に果敢に稲妻へと突っ走って行くことは人間にはできません。
それは、能力的にもそうですが、稲妻へ走るという危険を犯す意味を見つけられないことも原因です。
だからこそ野生の馬に「なぜ」というところからこの曲は始まりました。
なぜ駆けていくのか、と。
様々な馬の疾走を描写した表現の数々は、野生のたくましさ、崇高さを表しているといえます。
そして、立ち止まった。
その勇敢な野生の馬さえ頭が上がらないものが登場します。
それは「自然」です。
我々人間も自然の前では無力である。
馬が立ち止まったのは、自然に対する無抵抗を表しているのではないでしょうか。
馬は銅像の如く動かなかったのです。
それは紛れもなく、自然という神秘に対する「畏敬の念」でしょう。
しかし人間は違います。
自然を汚染し、自然を支配しようとし、それでいて自然の恩恵は十分に受ける。
だからこそ、その「神秘」は人間にとって「ふしぎ」でしかないのです。
この曲は、人々を不安にさせるような曲調と曲中でのテンポの変化づけを持っています。
それは、強欲な人間に対する皮肉と警告を表しているのかもしれませんね。
馬はなぜ駆けていた？
今を全力で生きる馬
野生の馬はなぜ駆けていく
首のばし 尾を振り立てて
生命の躍動胸に どこまでも駆けていく
出典: 野生の馬/作詞:中村千栄子 作曲:岩河三郎
いよいよこの曲の結論に迫ります。
馬がなぜ駆けているのか。
それは、「生命を全うするため」ではないでしょうか。
自然の中で、抗うことなく自分の生命を全うする。
今を全力で生きる馬は、その命の有限さを知っている。
だから全力で駆けるわけですね。
対して人間は、どうでしょうか？
馬の行き先はどこ？
夏の太陽の下を 真実に向かって
野生の馬が どこまでも駆けていく
出典: 野生の馬/作詞:中村千栄子 作曲:岩河三郎
そんな馬はどこへいくのでしょうか。
その答えも明白です。
馬は「真実」へと向かっていきます。
この宇宙の摂理、道理に沿った本当の世界が見えるということです。
それこそが幸せと呼べるものかもしれません。
対して、馬ほど今を全力で生きられず、意味ばかり求める人間。
どちらが明るい未来なのでしょうか。
その答えも明白。
馬が走っていた、「嵐」だった夏の空は、太陽が出て晴渡った空へと変わっています。
こう考えると、この曲の提示するテーマの壮大さが分かりますね。
おわりに
