ピチカート・ファイヴの魅力は、小西康陽が作り出したシンプルでダンサブルなサウンド。

バックの演奏と融合した、野宮真貴の声。

さらに、ポップアイコンにふさわしい彼女のルックス、ファッションが挙げられます。

サウンドと同様、そのビジュアルもまた1960、70年代からの「引用」です。

それらは懐かしさを覚えさせたり、未来を思わせるものだったり。

そんな引用から感じるのは、リアリティーを惑わせるフィクション性

例えるなら、着飾ったマネキン人形を目にしたような感覚に似ているのかもしれません。

完璧な人間から引用した表情とポーズ。

それらがどんなにアクティブなものであっても、人間的なリアリティーが増すわけではありません。

マネキン人形の内面は、どこまでも空虚でしかないのです。

東洋と西洋、そして時代も行き来しながらの引用を重ねた野宮真貴。

彼女の引用は、美しさとインパクトを兼ね備えていました。

一方で、そのフィクション性は、彼女の内面性を包み隠してしまったように思えます。

それこそが、ピチカート・ファイヴのアイデンティーだったのかもしれません。

ピチカート・ファイヴが輝いた時代

【東京は夜の7時/ピチカート・ファイヴ】歌詞解説!どこか感じる都会の空虚さ…その世界に浸ろうの画像

「東京は夜の七時」がリリースされた1993年は、バブル経済が崩壊した後。

好景気の恩恵を享受していた大都市を中心に、日本中が空前の喪失感に覆われていました。

そんなネガティブな感覚は、一刻も早く克服してしまいたい。

当時の大衆やメディアの心理は、時代の空気に敏感な音楽シーンにも波及します。

アーティストたちが、こぞって世に送り出したもの。

いわゆる応援ソングです。

「元気を出して」

「頑張って」

心に空いた穴を埋めるかのようなメッセージにあふれた曲は、ミリオンセラーを連発。

J-POPというジャンルのメインストリームに躍り出ます。

一方、ピチカート・ファイヴのアプローチは、まったく異なるものでした。

空虚さに抵抗したり、ふたをすることなく、大都会に漂う時代の気分として受け止めたのです。

つまり、空虚さから目を背けず、誰も思いつかなかったクールな素材に変えてみせたということに他なりません。

奇しくも同じ頃、凄まじいエネルギーで空虚さを表現したバンドが存在しました。

グランジロックの旗手「ニルヴァーナ」です。

彼らもまた、ファッションやビジュアルを含めて若者たちの支持を集めました。。

シアトル発の彼らが世界を席巻したように、東京発のピチカート・ファイヴも海を渡ることになります。

海を渡ったピチカート・ファイヴ

価値観を覆したパワー

【東京は夜の7時/ピチカート・ファイヴ】歌詞解説!どこか感じる都会の空虚さ…その世界に浸ろうの画像

後世に残る音楽と、残らない音楽。

両者の違いは、何でしょうか。

条件の1つは、既存の価値観を覆すパワーがあるかないか。

音楽は国境を越えるという言葉があるように、そうした条件は世界共通のもの。

1994年、ピチカート・ファイヴはアメリカのレコード会社からミニアルバム「5×5」を発売します。

北米デビューを足掛かりに、大胆なタイトルのアルバム「MADE in USA」を全世界でリリース。

95年には欧米14都市でツアーを展開し、大成功を収めます。

The Rolling Stonesのボーカリスト、ミック・ジャガーも、ファンであることを公言しました。

世紀をまたいだ2016年。

リオデジャネイロパラリンピック閉会式のセレモニーでのこと。

4年後の東京パラリンピックのプレゼン中に流れたBGMが話題になりました。

椎名林檎がカバーした、ピチカート・ファイヴの代表曲です。

それは「東京は夜の七時ーリオは朝の七時ー」と、見事に改題されていました。

「渋谷系」が残したもの

スウィンギン・トーキョー

【東京は夜の7時/ピチカート・ファイヴ】歌詞解説!どこか感じる都会の空虚さ…その世界に浸ろうの画像

1950年代から60年代にかけてのイギリス。

「スウィンギン・ロンドン」というムーブメントが起こりました。

音楽のみならず、若者文化のすべてを巻き込んだ現象のことです。

ここから生まれたのが、ミニスカートやビートルズ、サイケデリックといったもの。

「渋谷系」もまた、映画や文学、漫画、ファッションなどにまで影響を及ぼしました。

現在では「クール・ジャパン」と呼ばれる、さまざまなジャンルのサブカルチャー。

海外で受け入れられたピチカート・ファイヴも、その先駆けの1つです。

「渋谷系」が巻き起こしたのは、まさに「スウィンギン・トーキョー」だったといえます。

まとめ

「渋谷系の王子様」小沢健二の世界

元フリッパーズ・ギターメンバーだった小沢健二

ソロとしても次々とヒットを飛ばしました。

東大文学部出という華麗なキャリアも話題になったオザケンの、軽やかで知的な歌詞の世界に浸ってみてください。

かつて「渋谷系の王子様」と称されるなど、1990年代の音楽シーン大きな影響を与えた、シンガーソングライターの小沢健二。今回は、そんなオザケンの才能溢れる歌詞の数々をランキング形式で紹介していきます。

時代を遡る音楽性

野宮真貴とも親交が深い、ボーカルの松尾レミが活動するロックバンドGLIM SPNKY

多くのロックファンをうならせている理由は何なのか。

遡った時代の音楽を卓越したセンスでアレンジする手法は、ピチカート・ファイヴと共通しているのです。

多くのロックファンから高い評価を得ているGLIM SPANKY。情緒豊かな楽曲が生み出すGLIM SPANKYは一体どんなメンバーで構成されているのでしょうか?今回はそんなメンバー情報を掘り下げます!

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