それでは歌詞の内容に踏み込んでみましょう。
まずは1番から。
暮れなずむ町の光と影の中
去りゆくあなたへ贈る言葉
出典: 贈る言葉/作詞:武田鉄矢 作曲:千葉和臣
冒頭のAメロです。
「なずむ」は漢字で「泥む」または「滞む」と書きます。
「滞」は「とどこおる」とも読むように、「暮れなずむ」は暮れそうでなかなか日が落ちない状況。
「秋の日は釣瓶落とし」というように季節は秋や冬ではなく、日が長くなっていく春です。
この季節の設定が卒業ソングとマッチする要素の一つとして挙げられます。
日が傾いて影が長くなり光と影のコントラストがクッキリとしている。
そんな時間帯に、あなた(彼女)が自分の前から去っていく。
とても情景が目に浮かぶような出だしです。
傷つくのを恐れない
悲しみこらえて微笑むよりも
涙かれるまで泣くほうがいい
人は悲しみが多いほど
人には優しくできるのだから
出典: 贈る言葉/作詞:武田鉄矢 作曲:千葉和臣
続いてBメロ。
最後の部分が軽くサビになっています。
本当は悲しいのにやせ我慢して笑いたいところです。
だけど自分は辺りもはばからずに涙が枯れるほど泣くんだ。
女々しいかもしれないけど、感情を思いっきり面に出した方がスッキリしますから。
悲しいことや辛いことを多く経験すればするほど、その痛みが分かります。
だから人の痛みも分かるので、優しくできるのです。
失恋に限らず、さまざまな挫折を受け止めること。
他人のせいにすれば深く傷つかなくてもすむでしょう。
でも、それに慣れてしまうと、自己中心的な人間になってしまいます。
人はこうありたいと思える深い意味が込められた歌詞です。
最後にCメロ。
さようならだけでは寂しすぎるから
愛するあなたへ贈る言葉
出典: 贈る言葉/作詞:武田鉄矢 作曲:千葉和臣
別れ際に「さよなら」だけでは足りないと感じます。
そこで「あなた」に掛けるのが贈る言葉となります。
「贈る言葉」は長い台詞らしい
素直な気持ちだけを言いたい
夕暮れの風に途切れたけれど
終りまで聞いて贈る言葉
出典: 贈る言葉/作詞:武田鉄矢 作曲:千葉和臣
2番のAメロ。
「贈る言葉」は一言ではないようです。
失恋したあなたへの思いを長々と述べているのでしょうか。
思いを巡らしながら「贈る言葉」も、風が吹くたびに途切れ途切れになってしまいます。
でも最後まで聞いてほしい切実な気持ちが伝わってきます。
信じられぬと嘆くよりも
人を信じて傷つくほうがいい
求めないで優しさなんか
臆病者の言いわけだから
出典: 贈る言葉/作詞:武田鉄矢 作曲:千葉和臣
1番と2番のBメロの表現を意識的に合わせています。
「~よりも~がいい」「つまり~だから」という論法です。
傷つくことを恐れて悲しい現実を受け止められない。
その気持ちは分かります。
それよりは傷ついてもしっかり受け止めたい。
傷ついてこそ人に優しくなれます。
失恋の現実に打ちひしがれて愚痴や言い訳も出てくるでしょう。
そこを踏みとどまれるかどうかの瀬戸際です。
初めて愛したあなたのために
飾りもつけずに贈る言葉
出典: 贈る言葉/作詞:武田鉄矢 作曲:千葉和臣
これまで好きになった人は他にもいたのかもしれません。
でも本当に愛したのはあなたが初めて。
それだけに失恋の痛みも大きい。
贈る言葉は余計な愚痴を並べるのではなく、素直な気持ちだけを言いたい。
そんな意味に取れます。