任侠感満載のON THE ROAD
そんな彼が歌うON THE ROADは、湿っぽい雰囲気も乾いた雰囲気も兼ね備えた名曲となります。
男の葛藤や、任侠精神のようなものがダイレクトに伝わってくるのです。
そして竹原ピストルの声も素晴らしいと思います。
どんな音程も、独特で味のあるハスキーボイスで歌い上げるのです。
すんなりと、教科書通りの発声などしないところが、彼の個性を際立たせているのでしょう。
ギターと声だけでずっと聴いていられるアーティストは多くありません。
彼はその1人でしょう。
そして、歌詞も素晴らしいです。
彼らしい強烈な世界観が繰り広げられています。
歌詞の主人公はどんな人生を歩んでいるのでしょうか。
そんな空想に浸ってしまうのです。
この記事ではON THE ROADの歌詞の世界を徹底解剖します。
彼の強烈な個性を体験しましょう。
ON THE ROADの1番
曇りの日のトンボ
雲と雲との切れ間から
また雲がこちらをのぞいている
燻んだ川面にひっくり返る
鈍い舌打ちと赤いトンボ
出典: ON THE ROAD/作詞:竹原ピストル 作曲:竹原ピストル
1行目から、主人公は苦境に立たされているのだとわかります。
曇り空を心模様と考えるなら、一難去ってまた一難というイメージではないでしょうか。
雲がどいたと思ったらまた他の雲。
晴れ間は一向に見えません。
つまり、心の負担が軽くなることはないだろうと、悟っているのです。
そして目に映る景色は、すべてマイナスイメージのものになります。
濁った川でトンボが死んでいるのでしょう。
歌詞では湾曲表現になっていますが、思い描かれる情景は、夢も希望もないものです。
そして歌詞の主人公は、さらにイライラを募らせます。
街中で川を眺めているとすれば、一般的には心が安らぐ瞬間ではないでしょうか。
しかし、彼はそんな中でも辛いものばかりが目に入ってしまうのです。
現状に打開策の見えない八方塞がりな状況なのでしょう。
一体彼がどんな生き方をしているのか、気になりますね。
もしかすると、トンボに自分自身を重ねているのかもしれません。
どうせこれから、ロクでもない未来が待っている。
そして、のたれ死んでしまうんだ。
竹原ピストルのハスキーボイスも相まって、そんな心象風景を感じます。
主人公を取り巻く状況は好転するのでしょうか?
大切な人にはもう会えない
旅支度と帰り支度の境目を失った道の上
君のためならなんでもするさ
但し 君が会ってくれるなら
ON THE ROAD
出典: ON THE ROAD/作詞:竹原ピストル 作曲:竹原ピストル
主人公がどんな状況にいるのか具体的には描かれていません。
ただ、大切な人から離れて、帰るに帰れなくなったということはわかります。
故郷から都会に出て一旗あげようと思っていたけれど、上手くいかなかった。
自分が今置かれている状況が好転しないので、他の地域に移動しよう。
そんなことを何回も続けているのかもしれません。
でも、本当は故郷に帰りたいのです。
しかし、成功なのか何なのかわからないですが、あのときの約束や目標を果たしていないので恥ずかしい。
歌詞の主人公は、そんな気持ちの中で揺れているのでしょう。
君のために、成功すると約束していたのかもしれません。
しかし、君は会ってくれないだろうと言っています。
約束を果たせなかったというだけなら、なぜそこまで疎まれているのか疑問が残ります。
主人公側が恥ずかしくて会えないにしろ、向こうが会ってくれないことはないからです。
他に、語られていない理由があるのかもしれないですね。
君がすでに他の人と結婚しているのかもしれません。
すでに別々の人生を選んでいるにも関わらず、会いに行くのは彼の美学に反するのでしょう。
または、主人公が世間に顔向けできないあこぎな商売に足を踏み入れてしまった可能性もあります。
だとすると、この歌詞が持つ任侠感を持ったメロディと重なるでしょう。
トンボを自分と重ね合わせるような表現にも納得できます。
夢や目標があったにも関わらず、それとは縁遠い、あこぎな生活を送っているのかもしれません。
ON THE ROADの2番の歌詞
求めていたものは街に阻まれて手に入らない?
街と街との切れ間から
また街がこちらをのぞいている
たるんだ電線を五線譜に
月は今 G♯のあたり
出典: ON THE ROAD/作詞:竹原ピストル 作曲:竹原ピストル
主人公が求めていたものは、街に阻まれて届かないと言っているようですね。
そして、街に監視されているような印象も受けます。
街とはすなわち、社会を指しているのでしょう。
何かしら目標があったにも関わらず、それが実現できず社会の波の中でもがいているのです。
1番では空を見上げれば雲ばかりという状態でしたが、2番ではビルに視界を塞がれている印象です。
上を向いても横を向いても、困難が立ち塞がっている。
主人公はそう言いたいのでしょう。
夜に空を見上げれば電線。
G#と言っているので、主人公はあこぎな商売をしているのではなく、売れないミュージシャンなのかも。
長い下積みを経験した竹原ピストルが、自身の境遇を重ね合わせているのでしょうか。
何本も並んだ電線に音符を描きたくなったのかもしれません。
五線譜のG#の位置に、ちょうど月が来ていたのでしょう。
相変わらず苦しい心情を歌っていますが、聴く人が頭の中で綺麗に映像化できる素晴らしい歌詞です。
ちなみにG#と言った直後に、曲は部分転調しています。
そのとき、原曲のコードはB7です。
しかし移動ド(キーをCに直す)の考え方では、B7がE7となり、G#の音がポイントになってくるのです。
竹原ピストルのちょっとした遊び心が垣間見えた瞬間ですね。
自分を薄汚いと思っている
恩返しと罪滅ぼしの境目を失った道の上
金のためならなんでもやるさ
但し 金でなんでも買えるなら
出典: ON THE ROAD/作詞:竹原ピストル 作曲:竹原ピストル