「君」に対して、一定以上の好意を抱いた「僕」。

2人の関係について、ふと考えることがあったようです。

この曲の歌詞では触れられていませんが、彼らはおそらく大学生なのでしょう。

大学生というポジションは、楽しくも難しくもある時期かと思います。

大人ほどの責任を背負わずに済む、人生で一番楽しい時期とする人もいるでしょう。

その反面、どこか窮屈さのようなものを感じる時もあるみたいです。

そしてそう感じつつも、必要以上のゆとりを持っているような感覚もあります。

そんな毎日を送る大学生の「僕」と「君」は、自覚のないままに何かを求めていたのかもしれません。

そしてその結果、惹かれ合ったのではないでしょうか。

付き合い始めの楽しい時間

HAND DRIP【「言えない」】歌詞を考察!僕らの愛し方とは?言いたくて言えないでいることを紐解くの画像

「僕」はサークルの飲み会で出会った「君」と、どうやら付き合い出した様子です。

「付き合い始めが一番楽しい」なんて話を、聞いたことはありませんか。

相手のことをこれからどんどん知っていこうという段階が、最も新鮮で楽しく感じられるのかもしれません。

秘密のデートもどこか楽しい

Oh yeah みんなには内緒で二人で会って
お決まりのレンタル屋 DVDを借りて
今日の出来事を話しながら君の家まで

出典: 「言えない」/作詞:HAND DRIP 作曲:HAND DRIP

サークル内でカップルが成立するのは、特に珍しいことではないと思います。

それでも周りへの気恥ずかしさやバレることの面倒さを考えて、2人は内緒でデートをしているのでしょう。

映画に行くのもきっと楽しいのでしょうが、家でDVDを見るというまったりデートです。

行き付けのレンタルショップで見たい映画を借りて、彼女の部屋へと帰ります。

特別感のないデートではありますが、それがむしろ楽しかったりするのでしょう。

そういう時間を経験した人も、きっと多いのではないでしょうか。

「君」に言いたいことをいつもはぐらかしていた

ベッドで隣に座る横顔を
僕だけのものにしたいけど
今日も笑ってごまかして
映画の途中で明かりを消す

出典: 「言えない」/作詞:HAND DRIP 作曲:HAND DRIP

こちらのパートでも、「君」との秘密デートは続きます。

借りてきたDVDを2人で見るわけですが、ソファなどではなくベッドに座るというところがキュンとします。

おそらく彼女は実家住まいではなく、部屋を借りているのでしょう。

決して広くはない空間で好きな人と身を寄せ合うのは、間違いなく幸せなことだと思います。

そんな状況で、「君」が微笑んでいます。

DVDの内容が楽しいのかもしれません。

あるいは単に、「僕」と一緒にいる時間に表情を緩ませているのかもしれません。

いずれにしてもその笑顔に、僕は心を奪われてしまいます。

他の誰にも渡したくない、自分だけがその笑顔を独占したいと思うのでしょう。

その気持ちを素直に言葉にできればいいのに、どういうわけかそれができません。

漂い出す不穏な空気

飲み会での心癒される時間から、楽しい交際期間を経た2人ですが…。

何やら、不穏な空気が漂い始めているように思えます。

惹かれ合った2人の間に、一体何が起こってしまったのでしょうか。

2人の間の亀裂を無視することはできなくなった

Every day 何もないふりして
Every night だけ抱きしめていても
癒えない 癒えないまま
君がいなくなる朝がくる

出典: 「言えない」/作詞:HAND DRIP 作曲:HAND DRIP

サビの部分でメロディーは同じですが、歌詞が少しずつ変わっているのが分かります。

引用歌詞1行目を見ると、「ふり」とあることからも、何か既に気付いてしまったことがある様子です。

「何かおかしい」と相手に生じた不信感は気付いてしまったら最後、もう遅いのです。

不信感を覚えた以上、それをなかったことにするのはかなり難しいでしょう。

おそらく「僕」は、彼女の中に今までにはなかった何かを見つけてしまったのでしょう。

その何かとはきっと、歓迎できるようなものじゃなかったはずです。

そんなわだかまりを抱えたままでは、心は休まりません。

傷ついた心を癒すこともできずに、彼女が離れて行ってしまう予感を覚えたのではないでしょうか。

ただ2人でいられればよかったのに

Every day 二人だけの世界で
Every night 星空を眺めたい
触れたい 触れたい
ただずっと触れていたいだけ

出典: 「言えない」/作詞:HAND DRIP 作曲:HAND DRIP

「僕」は「君」に対して、そんなに多くを求めてはいなかったのです。

何も特別なことをしなくても、ただ傍にいてくれればそれでよかったのでしょう。

家でDVDを見るようなおうちデートでだって、彼は満足できたはずです。

寄り添って、ありふれた時間を過ごすことが、「僕」の望んでいたことなのかもしれません。

このパートの歌詞には、そのことが滲み出しているように思えませんか。

どうすべきだったか答えがほしかった