連続して登場するメンバーはそれぞれ別の場所に立ち、自然豊かな風景のなかで演奏しています。

ベースはすべり台が見える公園らしき場所。

ギターは百葉箱が近くにあり、大きな木のある場所。

ドラムは白壁の建物を背後にした位置。

そしてボーカルは、ドラムとは別の白壁の建物を背後にした場所で演奏を行い、曲がはじまります。

ボーカルの歌唱、メンバーの演奏がしばらく続き、ところどころに島の景色が挿入されるMV

そのどこか寂しげにも映る島の景色が、このMVを印象深いものにしています。

「東京」というタイトルにはそぐわない? 島の情景

 MVの途中からは、演奏風景と同等に島の景色が多く挿入されます。

島に群生している植物。

その植物の上で生きているかたつむり。

降りそそぐ大粒の雨。

メンバー自身が巡る島の情景。

さびたアンテナに、古びた校舎。

そして、メンバー自身が校庭に描いた「東京」という大きな文字。

MVの最後にはメンバー全員が集合し、海を背にした岩場で熱く、しかしポップに演奏し、MVは終わります。

MVに登場した全ての景色は「田舎」もしくは「島」という印象を強く与えます。

けして「東京」のイメージに適合するものではなく、曲名だけ見れば映像はミスマッチのようにも感じられます。

ではなぜ、彼らは「東京」というタイトルを付け、このような映像を撮影したのでしょうか?

それを、歌詞から探っていきたいと思います。

歌詞から探る「東京」の意味

出身地と「東京」

「東京」というタイトルながら、公開されたMVには自然豊かな風景が映写されていました。

その意味を知るために、歌詞を見ていきたいと思います。

みんながみんな 幸せになる方法などない
無理くり手をつないでも 足並みなどそろわない

でもみんながみんな 悲しみに暮れる必要はない
無理くりしぼり出したら それはもう涙じゃない

ふとした瞬間に僕たちは
ゆりかごへ帰りたくなる
でもあの布オムツはもう入らないのさ

出典: 東京/作詞:玉置周啓 作曲:玉置周啓

歌は若干ネガティブな言葉ではじまります。

しかし、すぐにそれは否定され、励ますような言葉に変化していきます。

歌詞で目を引くのは「ゆりかご」という単語。

ゆりかごは赤ちゃんが身を安らげる場所であり、ひいては安心の代名詞ともなる場所です。

ただ、そのゆりかごへの回帰もすぐに否定され、歌は続いていきます。

「ふるさと」は「東京」に消される?

ここは東京 君の東京
いずれ故郷の六畳と白い灯台は
君を抱けば白んで消えていく

気がしていたよ東京 君のいる街東京
いつになっても故郷の小学校や太鼓の音色は
悩ましいほど目頭に浮かんではくるけれど

ふるさとは帰る場所ではないんだよ

出典: 東京/作詞:玉置周啓 作曲:玉置周啓

「ゆりかご」と並んで「ふるさと」もまた安心の代名詞となる言葉です。

人にはそれぞれ「ふるさと」があり、そこには思い出があって、親しい人々がいる。

「ふるさと」は遠く離れた場所にいても人を支える大切なものであり、心を安堵させる大事な要素となり得ます。

しかし、この歌詞において「ふるさと」は一見否定されています。

故郷の日々は愛する人への思いや行動に消え、「東京」に日常は埋まります。

最後には「ふるさと」は帰る場所ではないとまで明言され、故郷への郷愁は感じられなくなっています。

離れても目に浮かび、心に留まり続ける場所。

自身が生まれ、かけがえのない日々を過ごした場所。

それでも帰る場所ではなく、「東京」に「ふるさと」は白く消えていく。

この歌ではそう歌われており、一見すれば故郷への思いを捨て去っているように思えます。

どの場所でも故郷になり得る

ここは東京 僕の東京
いつも望郷のまなざしを飛ばしながら
まだ見ぬ新たな母を探している

出典: 東京/作詞:玉置周啓 作曲:玉置周啓

ですが、続く歌詞を見るかぎり、単純に故郷への思いを捨て去ったというわけではなさそうです。

望郷の気持ちがありながらも、帰るところではない。

いつも心には留めながらも、簡単には帰らずに新たな地で頑張って生きていく。

この歌詞には、そういった決意のようなものが感じられます。

「東京」は地方出身の人から見れば、新たな生活をはじめるための代表的な場所のように思えます。

ただ、この歌詞に出てくる「東京」は様々な場所に存在し、新天地それぞれが「東京」になるのではないでしょうか。

生活を変えれば付き合う人も変わり、必然的に思い出が生まれ、新しい「ふるさと」が生まれていく。

この歌は、そうした心情を表したもののように感じられるのです。

 それはきっと前向きで、「ふるさと」が心にあるからこそ生じるプラスの感情であるように思います。

まとめ

この記事では、MONO NO AWAREの新アルバムである「AHA」とリード曲である「東京」について記しました。

軽快な演奏と、ポップな音色。

そして、どこか物悲しい抒情的な歌詞がMONO NO AWAREの大きな魅力であるように思います。

MONO NO AWAREの新アルバム「AHA」は2018年8月1日に発売されます。

興味を持った方には、ぜひ購入していただきたいアルバムとなっています。

また、リード曲である「東京」のMVは、MONO NO AWAREの故郷である東京都八丈島で撮影されたものです。

自然豊かな島の風景、そのなかでMONO NO AWAREが演奏する興味深いものとなっています。

ぜひ、ご覧ください!

最後に、MONO NO AWAREと同じく素晴らしい歌詞を書くアーティストをご紹介して終わります。