2番が始まります。

ここで目の前には海が現れました。

1番では上空の月に注意が向かい、まさに上の空だった印象があります。

こちらは眼下の海に目を向けているためか、同じくもしも話をしていても意識はそれほど夢想的ではないようです。

1番の「眠るように」が2番では「祈るように」となっているのもそれを象徴する部分です。

月が夢や神秘といったものを連想させるなら、海は命のふるさと。

時には荒々しく、またある時は心を和ませてくれる場所でもあります。

また波の周期的なリズムは揺り籠のようでもあり、そのサウンドは人を落ち着かせてくれるものです。

その海を舞台にするならば、意識はより内省的になり、現状により真剣に向き合っている雰囲気が伝わってきます。

ではその海を舞台に何を祈ったのでしょうか?

その答えはこの時点ではまだ明確ではないように思われます。

なぜなら1番で歌ったように探しているものすらわからないのが現状だからです。

ですが眠って現実逃避していたあの頃とは違い、真摯に答えを探そうとしているのが「祈る」の言葉に感じられます。

見え始めた答え

ほら、僕らに何が足りないの?
見えてる何かを真っ直ぐに 見据えながら

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也

どうやら少しずつ答えに近付いているようです。

1番では探しているものが何かわからずに心が定まらない様子でした。

ですがここでは何かが足りない状態だから探しているものすら見つからない、とまで考えるに至ったのです。

とはいえその答えは未だにうっすらと姿が見える段階に留まっている模様です。

それでも見えない恐怖に怯えていたあの頃からは脱し、朧げな幸せの姿を真っ直ぐ追いかけようとしています。

さて、彼が足りないと感じているもの、掴もうとしている答えの姿とは何だったのでしょうか?

僕らの明日を見た

その笑顔に見たもの

忘れかけていた笑顔も涙も
あなたの笑顔が教えてくれてた
いつでも眩しいあなたの笑顔は 変わらない

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也

ここで彼女はふと笑みを見せます。

忘れかけるほど久々の笑顔だったのでしょうか?

ずっと不遇の時が続き、そんな中でいつも傍にいた彼女が笑う姿も見せなくなっていったことが窺えます。

そんな中で不意に見せた笑顔が彼のそれまでの疑念が晴れていくのを感じるのでした。

自分が大事にしてきたはずの、もうずいぶん長いこと忘れていたもの。

そしてこれからも守り続けていきたいもの。

辛い時も、その笑顔はあのころと変わらず眩しいままで。

足りないと感じていたもの、自分が求めていたものはそんな彼女の笑顔だったことがやっとわかった彼だったのです。

再び歩いて行ける

あなただけはどこにも行かないで
ずっとずっと僕の隣に
あなただけは僕から離れないで
あなただから 僕だから 2人だから
きっと歩いてゆける

出典: 大切な人/作詞・作曲:川崎鷹也

彼女の大切さを再認識した彼は、変わらず同じようにずっと隣にいて欲しいと申し出ます。

ですが同じセリフでも1番と2番では与えるメッセージが違う印象を受けます。

1番はこのままあなたまで去ってしまったら心細いよ、ということを伝えている気がします。

対して2番では彼は人生の意味を見出し、その上で一緒にいて欲しいと呼びかけているのではないでしょうか?

気弱だった彼もやっと生きる意味を見つけ、これからの人生に希望を抱けるようになった心境の変化を感じます。

そして最後に2人で歩いていこう、と力強く1歩を踏み出すのでした。

幾つかの謎

もしもの話、その意図

さて物語の冒頭では月夜を舞台に「もしもの話」が語られていました。

では話を持ちかけた背景にはどんな意図があったのでしょう?

まず前提として、「もしもの話」をするというのはかなり現状とはかけ離れた状況を想定して話すことになります。

そうすることで、たとえ今苦境に立たされていたとしても楽しい気持ちなどを疑似体験することができます。

彼はそういった幸福な疑似体験を彼女と分かち合おうとしたのだと推測できます。

もしもの話、その中身