世界が動き始める後半
サビ
叫び続け何度声を枯らしても届くことはない
傷を抉り心から溢れ出した赤い血に浸り
汚れた未来に今手を伸ばした
出典: グリーフ/作詞:不明 作曲:不明
ソロパートで構成されるAメロ及びBメロとは対照的に、全員の合唱と激しいダンスが主体のシーンとなります。
ここで書かれるのは、深い哀しみです。つまりグリーフですね。
ただただ力なくうずくまるというよりも、胸を掻き毟るような激しさが楽曲からも浮かび上がってきています。
また、激しく動き回りながらメンバーを照らし出す照明の光も印象的です。
それまでとは一転して非常に力強い印象を与えます。
AメロやBメロと同様、やはりサビでも歌詞の内容は暗く悲痛です。
しかし「汚れた未来に今手を伸ばした」という歌詞にご注目ください。
単に嘆き悲しむだけでは終わらないという向こうっ気や反抗心、気持ちの強さを感じさせるものです。
ちなみに、画面の右横に歌詞は表示されています。
かわるがわる映し出されるメンバーとみくるのソロパート
2番のサビの後、楽曲と映像はともに大きく展開を変えます。
それまでとは打って変わってギターサウンドが前面に押し出されるのです。
映像にかわるがわる映し出されるのは、こちらを見つめるメンバーたち。
叶、やむ、姫乃、みくる、兎愛の順番に、揺れ動くような5人の映像が浮かび上がります。
それに引き続き始まるのは、「Dメロ」とも呼ぶべきみくるのソロパートです。
ここではメロディもさることながら、映像の雰囲気も大きく変わります。
窓際に立つ他の4人を背に歌い上げるみくるの空間に注目してみてください。
その歌詞の内容こそ暗いものの、それまでとは違って明るい空間の中に立っています。
冒頭から続いてきたダークな雰囲気とは明らかに趣を異にしているのが分かるでしょう。
ノイズにも振り付けにも大きな意味がある
時折挿入される映像の「ノイズ」
各自のソロパートの切り替え時や1番サビ後の間奏から2番Aメロに入るときに映像を乱すもの。
時折ノイズのようなものが挿入される演出が施されています。
画像のみノイズが入るので、音源の方には一切影響はありませんが気になる人も多いと思います。
この「ノイズ」ですが、2番サビ後の間奏以降は最後まで一切現れることはありません。
この演出を理解する鍵は、この後に登場する大サビ前の歌詞の内容です。
深い闇に突き落とされたとしても僕はひれ伏さない
出典: グリーフ/作詞:不明 作曲:不明
歌詞で強い決意が歌われています。
映像に施されたノイズは、いわばネガティブな感情に心を支配された時の微妙なざわめきでしょう。
それが消えたということはすなわち、心の中の迷いが完全になくなったことを表現しているといえます。
大サビ、そして再び「冒頭の陣形」に戻る振付
そんな歌詞に示された「決意」と「生まれ変わり」を示すかのように、大サビではメロディ転調しています。
全体的に半音上がった旋律とメンバーたちのダンスが、過去2回のそれ以上にパート全体を力強く彩ります。
そして楽曲の最後、ダンスの締めくくりの部分で5人が組む「陣形」。
真ん中に立つ叶を中心に兎愛と姫乃、やむとみくるが向かい合って膝をつき座る形をとります。
そう、冒頭部分でイントロが始まった時のものと全く同じになるのです。
しかし見た目は同じかもしれませんが、そこにある意味はどうでしょうか。
強い決意を歌い上げた後のアウトロでは、それが意味するところはイントロとは全く違ったものといえるでしょう。
「最後にはまた元の場所に戻る」
それは再び心が絶望に囚われるというネガティブな意味ではありません。
「ファンのみんなに、何度でも繰り返しこの映像を見てほしい」という思いも込められていると想像します。
だってカーソルを冒頭に戻せば、彼女たちはまた同じ場所から歌い踊り始めるのですから。
総括
一般的なアイドル像から想起されがちな、ポップな明るさとは全く対照的といえるヒロシンのスタイル。
彼女たちはこのMV内で一切笑顔を見せません。
だからといって彼女たちの楽曲そのものは最後まで一貫してダークなわけではありません。
彼女たちがこの歌やダンスで伝えてくるメッセージは、見る者の心を強く打ちます。
この曲のテーマは「誰もが体験する可能性があるグリーフである」です。
このテーマがあることで、より多くの共感を呼び起こすものとなるのです。
ファン層の8割から9割は女性ともいわれるヒロシン。
彼女たちの伝えるメッセージが、これからも悩める誰かにとっての救いとなればいいですね。