1980年代
ただのアイドルではない、シンガーソングライターの先駆けとして活躍していました。
女子心
10代から20代へ。女性は大きな脱皮を遂げます。
少女から大人の女性へ。
容姿はもちろん心もこの時期にぐんと大人の世界に近づいていきます。
当時の河合奈保子の清楚で柔らかい容姿は、女性の変化や危うさをそのまま表しているよう。
あどけなさを残しつつも、女性としてのしなやかさを感じさせます。
それは歌の中にもしっかり現れ、聞く者を魅了しました。
「ハーフムーン・セレナーデ」は、大人の世界をなんとなく知りつつある青春の恋心。
この世に存在する、男性と女性という二つしかない性の大きな違いを始めて知る寂しさ。
恋を知ることでわかった、男女の摂理のようなものがたっぷりつまった一曲です。
届かぬ思い
どうすれば
あなたのもとへ届くなら
水面に散った 琥珀の枯れ葉を
風つまびく音符にして 想い伝える
出典: ハーフムーン・セレナーデ/作詞:吉元由美 作曲:河合奈保子
恋心。それはなかなか相手に届かぬもの。
上手に、そして本意を伝えなければ、叶うものも叶わず、かえってこじれてしまうことも。
思い切ってぶつかるのは難しく。
かといって、何も言わずに見つめているだけでは恋の進展は望めません。
さらりときれいに。この熱い思いを届けたい。
青春の日には誰もが望んだことがある想いではないでしょうか。
お願い
私の望みは
月の雫を左手に
涙でそっとひとつにつなぐ
好きな人と結ばれたい...深く祈るわ
出典: ハーフムーン・セレナーデ/作詞:吉元由美 作曲:河合奈保子
好きな人がいる。ずっと目で追ってしまう。
青春時代にはみんな経験しています。
誰かを好きになったその次に望むのはその人と結ばれること。
相手からも「好き」を返され、両想いになること。
それがどんな世界なのかまだよくわかっていなかったりもしますが。
好きな人がいて、相手も自分を好きになる。
そして、お互いがお互いの一番大切な人になること。それが結ばれるということでしょうか。
両想いの向こうにはまだ見ぬ道の幸せが広がっているはず。
主人公は自分の思いが相手に届き、二人して未知なる幸せの世界に行くことを夢見ています。
狭間で
変化して
青春の雲が切れる 年頃抱きしめ
誰もみんな ひとりぼっちだから
優しさを 愛しむのね
出典: ハーフムーン・セレナーデ/作詞:吉元由美 作曲:河合奈保子
青春というのは実際にどのあたりの年齢を指すのでしょうか。
それはいろんな意味で使われる言葉で、きちんとした区切りのあるものではありません。
体も心も子どもから大人に成長し、男女の性の違いを意識する年頃。
異性に興味を持ち、「恋」のようなものを感じ始めるころでしょうか。
主人公は、自分の中の心の成長をなんとなく感じているようです。
大人になりつつある自分。
それは嬉しくもあり、悲しくもある。
子どもとして、大人から守られて自由は少ないけれど安心の中にいた時代。
そこを今通り過ぎようとしています。
大人になるということは、一人で生きるということ。
もちろん、これから先も誰かしら助けてくれる人はたくさん現れます。
とはいえ、大人とは自分の心と向き合いながら、自分で責任を取りながら生きていく時代です。
好きな人に出会い、その気持ちをどうするのか。
関係をどうつなぐのか。それも自分の責任で動くもの。
恋をした主人公は、大人としての扉を静かに開いていくようです。