えなこ「スウィッチドールの涙」の歌詞を読み解いて行こう
日本のコスプレ文化を牽引するプロコスプレイヤー、えなこさん。
グラビアでの活躍も2021年8月には15誌の表紙を飾るなど、多方面で著しい活躍をみせています。
歌手活動に関してはアイドルユニット「パナシェ!」で活躍した後、ソロ歌手としてデビューを果たしています。
2020年12月には、えなこ名義で初のEP「ドレス・レ・コード」をリリースしました。
今回取り上げる楽曲「スウィッチドールの涙」はその1st EPに収録されています。
スウィッチドールとは?
スウィッチドールとは、韓国のキャストドールメーカー「Switch」が販売するキャストドールです。
キャストドールとは合成樹脂を型に流して固めて制作された球体関節人形になります。
リアルな人肌のような質感を持ち、球体関節を使って様々なポーズを取らせることもできるんです。
洋服を着せ替えたり、ヘアスタイルを変えたり、メイクを施したり、様々な手法でカスタマイズできます。
異なる目線からの解釈も楽しませてくれる楽曲
今回の楽曲では、スウィッチドール側の目線でドールを所有するオーナーへの思いを歌っています。
とても興味深いのが、この楽曲をコスプレイヤーであるえなこさんが歌われていることです。
自らコスプレを行うえなこさんが、カスタマイズされるドールの気持ちを代弁しているのが深いですね。
えなこさんの思いが、スウィッチドールの物語に投影されているのも見どころとなっています。
作詞作曲は、アニメ「鬼滅の刃」主題歌「紅蓮華」など多数のアーティストに楽曲提供を行う草野華余子さん。
えなこさんを愛する人も、ドールを愛する人も、彼女らの思いに胸打たれるだろう作品となっています。
お迎えを待ちながら感じる憂鬱
誰にも嫌われないように
優しく 微笑み返した
心を失くしてしまえば
楽になるかな
出典: スウィッチドールの涙/作詞:草野華余子 作曲:草野華余子
この曲の主人公は、とあるスウィッチドールです。
今はまだ持ち主となるオーナーがいません。
自分を買い取ってくれる人が誰になるかもわかりません。
感じよくいることで、誰かが気に入ってくれるかもしれません。
スウィッチドールでありながら、心や感情がある主人公。
いつも自分を抑えて優しさを持つことに困難を感じています。
それでも、お迎えしてくれるオーナーが必要だから当たり障りのない人物を演じているのです。
貴方が世界を変えた
それでも 貴方が お迎えしてくれた日
この世界に 光が差し込んで
全てが(全てが)煌めき あぁ
出典: スウィッチドールの涙/作詞:草野華余子 作曲:草野華余子
やがてスウィッチドールはお迎えしてくれるオーナーと出会い、引き取られました。
今までずっと憂鬱で仕方ない毎日だったけれど、それが一変します。
暗闇のように感じていた世界が煌めいて感じられるのです。
オーナーと出会ってから世界の見え方までも変わってしまったのですね。
スウィッチドールにとってオーナーの影響力の強さが感じられます。
あなたの愛
そうさ 愛 愛 愛だけが
ココロを満たしてゆく
貴方の 甘い 甘い声が
わたしを赦すよ
出典: スウィッチドールの涙/作詞:草野華余子 作曲:草野華余子
オーナーが優しく語りかける声からも愛を感じています。
自分をここまで愛して大切にしてくれるオーナー。
その愛が、罪悪感を感じて生きてきた自分を咎めず赦してくれているように感じられます。
まるでキリスト教で伝えられる「愛は赦し」であるかのような感覚です。
神に選ばれて、愛されているということ。
彼女にとって、選んでくれた慈悲深いオーナーは神のような存在なのかもしれませんね。