Sou『愚者のパレード』
作詞作曲は若き天才
今回紹介する『愚者のパレード』は、ぱっと読んだだけではわからない難解な歌詞が特徴的。
そんな複雑な楽曲を作詞作曲したのは、「歌ってみた」を中心に活動する男性の歌い手、Souさんです。
無機質な歌声から抑揚たっぷりの歌声まで、幅広く歌いこなせる彼。
突き抜けるようなハイトーンボイスも魅力の1つです。
そんな魅力たっぷりのSouさんですが、なんと1998年生まれの若き天才でした。
そんな彼が初めて作詞作曲を手掛けたのが、今回紹介する『愚者のパレード』なのです。
不思議な雰囲気をまとったメロディは歌詞とぴったりマッチしており、より深くその世界を伝えています。
誰もが抱える「2人の自分」がテーマ
この曲では望んだように生きたい自分と、そんな気持ちを偽りながら生きている自分が登場します。
誰もが自分の中に秘めているそんな二面性を扱ったこの楽曲。
ポップな曲調ながらその歌詞は、聴いた人に重くドロドロしたものを残す内容です。
そんな魅惑の歌詞の世界へ、一緒に飛び込んでみましょう。
自分はどこ?見失いかける僕
僕 vs 僕
何回目だっけ 忘れてしまうよ
当たり障りのない日々で僕は
正しいフリしてるの
汚れてしまったんだろう
それに気付けない
「お前は誰だ?」
関係ないだろ 溺れてしまえよ
有象無象の人混みに紛れては
怯えてるんでしょ
誰だってそうなんだよ
夢の中で踊りましょう
出典: 愚者のパレード/作詞:Sou 作曲:Sou
止まることなく流れ続ける日常。
そんな日常は、知らない間に当たり前になってしまうものです。
当たり前になった日常はいったい何日過ぎていったのか、それさえもわからなくなっていく。
そんな日々の中で、主人公の僕は自分を偽りながら生きています。
それは当然ながら本当の姿ではありません。つまり、純粋な自分自身ではないということです。
だから4行目で、自分自身のことを汚れていると表現しているのです。
また、6行目では自分自身の存在に対して疑問を向けています。
そんな僕に追い打ちをかけるように、7行目では悪魔がささやいている様子も描かれていますね。
自分を偽ること、それ自体が当たり前であり、そんな当たり前に浸ってしまえばいい。
そんな風に自分の中の悪魔がささやいているのです。
そのささやきに従ってしまおうと世間にまみれて身を隠しつつも、9行目にあるとおり僕はどこか怯えてもいる。
冒頭の部分では、自分自身の存在や自分が存在する世界に対するユラユラした気持ちが描かれていました。
何もかもが不安定に揺れる世界
不完全で不安定な心で
最大の理想像を描いた
対照的な自分なんて
もう殺してしまえよ
猜疑心に苛まれた少年は
まやかしの明日を捲るのさ
出典: 愚者のパレード/作詞:Sou 作曲:Sou
冒頭に引き続き、揺れ動き続ける不安定な僕の心情が描かれています。
2行目にある理想とは、「自分自身が本心に従って自由に生きること」と推測されます。
だからこそ、先ほど書いたような偽った自分自身なんて殺してしまおうと、そういっているのでしょう。
偽りの自分に対する不信感を最大限に募らせた僕は、そんな自分から解放されようともがきます。
しかしもがいて手にしたはずの明日が、偽物だとしたら…?
そんな不吉な雰囲気で、次のパートへつながっていきます。
世界に染められつつある僕
単純なんだろうか 明かりは届かない
常識に囚われて
はみ出す勇気もなく
汚れた身体で綺麗に踊る
酩酊した思考が絶え間なく合図を送って
ほら今を壊していくけど
足りない意味ない
気付いたら僕はもうダメになっていた
愚者のパレード
出典: 愚者のパレード/作詞:Sou 作曲:Sou
結局、世間一般の常識的なレールから外れることができない僕は、偽りの自分を演じ続けています。
建前を塗りたくって汚れたように見える僕も、世間からすれば綺麗に作り固められているように見える。
それを表現するのが4行目の歌詞でしょう。
くだらない世界にすっかり染まって、意識が朦朧としながらも現状を打破しようとし続ける僕。
そうやってもがいてみたけれど、何も変わらなかった。
5行目からはそんな悲しい状況を訴えかける歌詞が、テンポよくたたみかけるように歌われています。