2番の歌詞が始まると、「僕」は弟のアルフォンスに切り替わったように思えます。
身体を失って鎧の身体となったアルフォンス。
きっと彼の世界は色を失ってしまったことでしょう。
しかし、そこから見た空は青く澄み渡っていて戸惑っているというイメージが浮かび上がってきます。
そして、今度は「君」が兄のエドワードに。
失った愛情が指しているのは「母」と「自分の身体」ではないでしょうか。
例え自分の身体を犠牲にしたとしても、兄を信じる。
兄が「身体を取り返そう」と決意した時の、火がついたような瞳を思い出しているように感じます。
無力でもこの運命強く生きていく
手を結ぶ体温はずっと溶け合って
だったら一層の事背負った罰なら辛くても
もし例え君と此の儘 世界の波に逆らうだけだとしても…
出典: 消せない罪/作詞:北出菜奈 作曲:西川進
アルフォンスの鎧の身体に溶けていく、人間であるエドワードの体温を感じさせる歌詞。
自分たちは無力だけど、一緒にならどんな運命でも強く生きていけるという意味でしょうか。
ラストは2人の気持ち
迷わずにこの愛を 信じ生きてゆく
塞がらぬ傷口もぎゅっと抱き締めて
迷わずにこの運命 生きる生きてゆく
君となら永遠もきっと繋がって
出典: 消せない罪/作詞:北出菜奈 作曲:西川進
このラストのサビはエドワードとアルフォンス、2人の視点のように思えます。
ここでは、生きるという言葉を繰り返し使っています。
揺らぐことなく、運命を生きていくという固い決意を表してるようです。
そしてここの「君」はお互いがお互いを思っているのではないでしょうか。
二人で只前を見て如何にも成らなくたって
それでも必ず君をこの手で守り続ける
ダーリン
出典: 消せない罪/作詞:北出菜奈 作曲:西川進
歌詞の「この手」とは、エドワードにとってはオートメイルという鉄の義手となった「手」。
アルフォンスにとっては鎧となってしまった「手」を指しているのかなと思います。
たとえ抱えた傷が治らなくとも、罪が消えなくとも…。
救いが無くても、それでも「この手」で守っていく。
そんな意味が込められているように感じました。
幻の7話エンディングが存在する
7話はストーリーの軸ともなる事件が起きる回
アニメ7話「合成獣が哭く夜」は「鋼の錬金術師」のストーリーの中でも、もっとも衝撃を与えた回です。
エドワードとアルフォンスは情報を求め、自分たちと同じ錬金術師である男性の家を尋ねます。
そして男性の娘である「ニーナ」と飼い犬の「アレキサンダー」と仲良くなるのです。
しかし、次に彼の家を尋ねた時に2人が見たものは「ニーナ」と「アレキサンダー」が融合された生き物。
金策尽きた男性が禁忌を犯し、自分の娘と飼い犬のキメラを作り出してしまったのです。
エドワードは激昂し、なんとか1人と1匹を救おうとしました。
しかしなす術はなく、ニーナとアレキサンダーは命を落とすことになります。
この出来事はエドワードとアルフォンスの心に深い傷を負わせることに。
そして、その後のストーリーの軸にもなる事件となったのです。
エンディングの映像に秘密が……
7話のエンディングは、この回限定の演出が行われています。
「消せない罪」と共に、ニーナとアレキサンダーと兄弟2人が仲良く遊んでいる様子が描写されます。
ここの映像だけでも胸が苦しくなってしまいますが、注目すべきはラストシーン。
通常のエンディングは、エドワードがこちらを向いて微笑みます。
しかし7話のエンディングでは、泣くのを堪えているような顔ではにかむのです。
まるで、ニーナとアレキサンダーに向けているかのように。
この映像が流れている時の歌詞は
今でもこの胸の奥消せない罪は痛むけど
出典: 消せない罪/作詞:北出菜奈 作曲:西川進
2人がこの出来事を、「消せない罪」として背追い込んだことを表しています。
この演出は多くの視聴者の心に刺さり、放送が終了して何年も経った今でも語られています。