ポールチェンバースの真骨頂であるアルコ奏法が1曲目からいきなり炸裂します。
曲の最初から渋く枯れた音色が物悲しい旋律を奏でます。
前半はギターとベースのみで構成され、2分半あたりからピアノとドラムが絡み合ってきます。
そこからポールチェンバースのベースはリズミカルになり、メロディックな節回しはまた違った味わいを醸し出します。
2.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
ポールチェンバースは1曲目のアルコ奏法から一転して、指で弾くピッチカート奏法へ変化します。
小気味の良いリズムを奏で続け、ベースが際立ちます。
3分を過ぎたところでギターソロが入り、そこからピアノへと続くソロ回しが始まります。
その間のベースランニングがまた素晴らしいので必聴です。
最後はまたベースに戻り7分強の曲を締めくくります。
3.チェイシン・ザ・バード
印象的なギターのメロディーと、そこを支えるわけでもなく、負けじとメロディーを被せて楽曲にうねりを与えるベース。
この2つの楽器の絡みがまずは耳に残ります。
そして、ベースのラインに落ち着いたかと思いきや、2分を過ぎると急にガッとピアノが攻めてきます。
アート・テイラーのドラムもグッと前に出てきて、楽曲に拡がりを与えます。
そして、3分半あたりからは再びギターソロが始まります。
まさに鳥を追いかけ回すような細かいフレーズに浸っていると、5分あたりから今度はドラムがソロで加勢してきます。
最後は最初の印象的なギターとベースの絡みが復活して歯切れよく終わります。
4.ディア・オールド・ストックホルム
ケニー・バレルの哀愁漂うブルージーなギターから始まっていきます。
その後ろのハンク・ジョーンズのピアノのリズムに酔いしれていると1分経ったところで、ベースへソロが変わります。
そして、今度は支える側に回ったギターに酔いしれていると、3分を回るかといったところで、再びギターがフューチャーされます。
4分20秒あたりで明るいキメが入ると、今度はピアノへバトンタッチします。
そして、5分20秒あたりで一回りし、ギターへ戻ってきて収束していきます。
5.ザ・テーマ
その曲のタイトルに相応しく、何かのテーマ曲のように全体が統一感を持って小刻みでパッと覚えたくなるフレーズを繰り返す印象的な楽曲です。
途中からポールチェンバースのアルコ奏法が再び攻め立てます。
1曲目のイエスタデイズのような物悲しい感じはなく、歯切れの良いグルーヴィーなベースソロが続いていきます。
2分半を目処にギターソロが始まり、そこからパッとアルコ奏法でなくなり、ピッチカート奏法へと急激な変化を加えます。
その変化についていくようにウォーキングベースの波に耳をすませていると、ピアノソロが始まります。
と思えば、ドラムとアルコ奏法のベースが激しく戦うような場面も終盤では楽しめます。
6.コンフェッシン
ピッチカート奏法の力強さが表立った楽曲です。
と思えば、後ろで支える他の楽器は全てキレの良いリズミカルな演奏を続けています。
そのバックの演奏があるからこそポールチェンバースのベースはその上を縦横無尽に自由に走っていけるのです。
それは2分半からのピアノソロも同じことです。
今度はバックに回ったベースの安定感があるからこそ自由で個性的なアドリブに繋がるのです。
確かな技術と忘れてはならない音楽の自由さを教えてくれる楽曲になっています。
7.チェンバー・メイツ
そして、プラス1の最後の楽曲です。
ザ・テーマを彷彿とさせる楽しげで小刻みで歯切れの良いリズムに、自然と身体も踊り出したくなるグルーヴが溢れています。
早いテンポの中でも綺麗に回していくソロにメンバーの遊び心と技術の高さが垣間見えます。
ポールチェンバースもソロへ回れば得意のアルコ奏法を惜しげもなく披露します。
5分間、止まることを知らない疾走感で駆け抜けます。
思わず「イェーイ!」と声を上げたくなる最後のドラムソロも圧巻。
まさにプラス1に相応しい1曲です。
最後に
ジャズは静かでおしゃれなイメージが強いですが、1枚を通してこんなにもアツく滾るようなジャズを感じる音源はなかなかないのではないでしょうか。
今までのジャズに対するイメージを覆されます。
ポールチェンバースの個性的な演奏だけでなく、サポートメンバーの質の高さも凝縮された1枚になっています。
「ベースオントップ」はこれからもモダン・ジャズの名盤として時代を超えて受け継がれていくことでしょう。
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