悪い女を演じる曲「悪女」
1981年、空前の大ヒットを記録した中島みゆきさんの「悪女」。
1980年代、オリコン1位を獲得するなど異例の大ヒットでした。
シングルでは変イ長調で歌われているのですが、アルバムなどではイ長調で歌われているのです。
曲のタイトルは、「悪女」の一言ですが一体どのような曲なのでしょうか?
この曲は、悪女になりきれない女性の切ない心を歌った曲なのです。
悪女になりきれない、とは一体どういうことでしょうか。
そして、曲の中に出てくる「あなた」とは、この曲の主人公とはどのような関係なのでしょう。
主人公はこの「あなた」とともに時間を過ごしてきたのです。
朝も夜も時間をともにした「あなた」のために悪女になる女性。 一体何が起きたのでしょうか。
歌詞と併せて、主人公とあなたの関係性を徹底的に深掘りします。
匂わせ悪女
芝居
マリコの部屋へ電話をかけて
男と遊んでる芝居 続けてきたけれど
あの娘もわりと 忙しいようで
そうそう付き合わせてもいられない
出典: 悪女/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
まずいきなり登場する女性、マリコとは一体誰なのでしょうか?
このマリコという女性はおそらく、主人公の友達に当たる人物。
主人公は、彼氏に「私は他に男がいるのよ。」と匂わせているのです。
男と電話しているように見せかけて、本当は友達に電話をかけているようです。
しかし、本当は他に男なんていないし彼氏のことを愛してやまないのでしょう。
だけど、やめなければいけない恋なので、悪女になることで嫌われようとしているのです。
なぜ、こんなに彼のことを愛しているのにこのようなことをしているのでしょうか?
おそらく、「あなた」には新しい彼女ができているのです。
そう。彼は、浮気に走ってしまっているといえます。
彼女である主人公に何か不満があるのでしょうか。
「あなた」は、新しい彼女を作って楽しく過ごしているのです。
受話器
土曜でなけりゃ 映画も早い
ホテルのロビーも いつまでも居られるわけもない
帰れる当ての あなたの部屋も
受話器をはずしたままね 話し中
出典: 悪女/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
きっと主人公と「あなた」は同棲しているのでしょう。
同棲しているか、半同棲か。
主人公は一緒に住んでいる「あなた」のところに帰る予定でいました。
電話をしてみると通話中なのです。
受話器を上げっぱなしで、新しい彼女と一緒にいるのか。
それとも、新しい彼女と通話中なのでしょうか?
もしも、このまま帰って彼と新しい彼女が一緒にいるところに遭遇したら…。
主人公はとてもモヤモヤしていることでしょう。
しかし、帰るところがなくてもホテルのロビーに居座ることはできません。
仕方がなく帰るしかないのですが、帰れないのです。
帰れない主人公は行き場をなくしてしまいました。
それと同時に、主人公の複雑な気持ちも行き場を失ってしまったのです。
悪女になる
月夜
悪女になるなら 月夜はお止しよ
素直になりすぎる
隠しておいた言葉 ホロリこぼれてしまう
(行かないで)
出典: 悪女/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
狼男は満月の夜、狼に変身するというお話があるのはご存知ですか?
このお話に基づいていると考えられます。
月夜、つまりは満月の夜には、自分の感情に素直になってしまうのです。
素直になってしまうから、「あなた」に対して悪女になれなくなってしまうのでしょう。
隠していた、「あなた」への愛が溢れてしまうのです。
愛とともに涙も溢れている様子が思い浮かぶでしょう。
()で表現された主人公の気持ち。
これこそがまさに、本当の主人公の気持ちなのです。
本当は、このような気持ちでいるのに自分に嘘をついているのでしょう。
本当は、私こそが彼の本当の彼女なのに。
きっと本音はこう思っているはずです。
しかし、新しい彼女ができてしまった彼はきっともう気持ちが動いてしまっています。
それがわかっているからこそ、主人公は身を引きたいのでしょう。
涙
悪女になるなら 裸足で夜明けの
電車で泣いてから 涙ホロホロホロホロ
流れて 枯れてから
出典: 悪女/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき