「ファースト・デイト」の切なさよ

岡田有希子【ファースト・デイト】歌詞の意味を徹底解釈!二人だけの秘密って?切ない気持ちの真意を紐解くの画像

1984年4月21日発表、岡田有希子のデビューシングルファースト・デイト」をご紹介しましょう。

不幸な死のイメージが印象的な彼女ですが、生前はそのような影の部分は一切見せないアイドルでした。

特にデビュー当時は第2の松田聖子というイメージが持たれて将来が期待されています。

竹内まりやからの提供曲が多い彼女ですから、いまこそ聴きたい昭和アイドル歌謡曲がたくさんあります。

中でも鮮烈だったのがデビューシングルの「ファースト・デイト」かもしれません。

サウンドもメロディも歌詞も竹内まりや節が全開になっています。

竹内まりやへ注がれる視線は年々熱くなるばかりでしょう。

シティポップと呼ばれた彼女の作風ですが、いまではフューチャー・ファンクという称号もあります。

聴いていただくとすぐに気が付かれるのがベースラインのファンキーさです。

この頃のアイドル歌謡曲には聴くべき歌がたくさんあるなと教えてくれる見本のような楽曲でしょう。

もちろん岡田有希子の歌唱力は新人にしては非常に安定したものでした。

この頃から歌唱力よりもタレント力が重要視される時代がきます。

しかし岡田有希子の歌唱力はいい意味で昭和のアイドルのお手本といっていいでしょう。

この頃のアイドルにある可愛さと切なさとの何ともいえないバランス。

こうした初々しさに胸をときめかす若いリスナーも増えてきました。

昭和を懐かしく思い出す方も、生まれてないけれど憧れるという若いリスナーにも届く記事です。

特に竹内まりやが描いた学園恋愛というものに焦点を当ててみます。

岡田有希子の悲劇ではなく、そのまぶしい笑顔を思い出してみましょう

それでは実際の歌詞をご覧ください。

「最初の日付」は1984年

不思議な表記問題について

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誰にも優しい あなたのことだから
土曜のシネマに 誘ってくれたのも
ほんの気まぐれでしょう
それなのに WAKU WAKU 心騒ぐ

出典: ファースト・デイト/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや

歌い出しの歌詞になります。

登場人物は自分のことを目立たないと思っている私と恋したあなたです。

歌詞の解釈に入る前にデートというワードの表記について触れておきます。

竹内まりやはデートの表記を「デイト」としました。

元々は「date」が語源のカタカナ英語です。

なのでデートでも「デイト」でも構いません。

ただ、書き方の一般的なルールとしてカップルが遊びにゆく際はデート

そして、日付を表す場合は「デイト」というような書き分けがなされるようになりました。

それでも「ファースト・デイト」という書き方にこだわったのは竹内まりや自身です。

彼女は最初に遊びに行ったことと、その「最初の日付」という双方に解釈できることを望んだのかもしれません。

この記事ではタイトルとは違い、カップルの遊び方をデートという一般的な表記にいたします。

昭和は遠くになりにけり

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いよいよその内容を解釈してみましょう。

1980年代のアイドル歌謡ですから、難しい内容は一切含みません

そこにあふれるワードのチョイスのセンスが1980年代的ですのでその解説はいたします。

一方で極端な深堀りなどせずにあるがままのドラマを皆さんと一緒に楽しみましょう。

クラスにひとりはいた目立つ男子があなたです。

スポーツや学業などで優秀な成績を残しているのかもしれません。

もしくは単にイケメン男子である可能性もあります。

1984年という時代はブラック部活というものが当たり前のものでした。

つまりスポーツが優秀な男子が土曜日に映画にゆくかなという疑問が付きまといます。

部活に追われて土曜日は午後から練習試合というケースが多かったのではないでしょうか。

また学業で優秀な成績という点は否定できないのですが、当時はとんでもない「受験地獄」がありました。

親の世代は経済的な事情で大学へ進学できなかった分、子どもをいい大学へ送りたいという風潮があったのです。

この風潮は教育に関する「再生産」の問題としても話題になっていました。

そうなると学業は多少優秀でも遊ぶことにだって慣れているイケメン男子という設定が似合いそうです。

高校のクラスで一番目立つイケメン男子があなたの正体として浮かんできます。

このイケメン男子のあなたは優しい人柄ですので男女問わず愛されていたでしょう。

人の価値はやはり優しさにあるからという竹内まりや自身のこだわりも見え隠れします。

時代背景を考えてみよう

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そんなあなたが土曜日に映画館へと誘ってくれました。

この時期の歌ですから間違いなく午後に上映される映画です。

「半ドン」という死語があります。

これは土曜日でも12時まで就学したり就業していた時代の言葉です。

土日休みという週休2日制なんて贅沢なものはなかった時代の歌であります。

週休二日制というものは人間らしく生きるためにも大事にしたいものです。

さて、私はあなたに映画に誘われた理由が分かりません。

なぜなら私の自己評価は極端に低いからです。

こんな私になぜあなたは声をかけてくれたのか。

その理由は気まぐれだろうと思うのですが、初めてデートできる嬉しさの方が上回ります。

歌詞には書かれていませんが、私はあなたの申し出をすぐにOKしたのでしょう。

当時の高校生の恋愛模様はそれこそ色々でした。

少し前の言葉でいうヤンキーな男女は高校生とはいえ濃厚な恋愛をしています。

しかしこの曲のモデルはあくまでも岡田有希子です。

彼女は中学生の頃の成績がオール5(もちろん5段階評価)でした。

才色兼備のお嬢様で、アイドルとしても山手の女子というイメージで売り出されます。

もう一方で竹内まりやの履歴も本当に不思議です。

デビュー当初はお嬢様風のアイドル的側面も大いにあったシンガーでした。

1980年代に山下達郎の多大な影響を受けながら自作曲を書きまくって今日の地位を築きます。

1984年は竹内まりやにとって職業作家としての資質が問われていた時期になるでしょう。

岡田有希子と竹内まりや双方の思惑が一致してこの「ファースト・デイト」が生まれたのです。

ワクワクのローマ字表記などが時代を象徴するかもしれません。

ファンシーグッズなどの少女性を担保するアイテムが盛んに登場した時代です。

当時はこうしてローマ字表記することで新鮮さと可愛さを表現したのでしょう。

いまの時代から見ても固有な未来感を抱くかもしれません。

ただし、それは一時期こうしたローマ字表記をする感性が完全に廃れたからこそのことです。

いまなら逆に新鮮だよねと思える不思議なめぐり合わせをしたのでしょう。

恋愛カーストを崩せ

「陰キャ」とか「ネクラ」とか

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ずっと前からチャンスを 待ち続けてきたの
クラスで一ばん 目立たない私を
選んだ理由はなぜ?
まるで夢みたいよ
何もかもが バラ色に見えるわ
初めてのデイト

出典: ファースト・デイト/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや

私はクラスでも目立たない存在という自己評価をしています。

一方でこのチャンスを狙っていたという告白もするのです。

私は実はしたたかに自分の可愛さを知っていたのではないか。

何せモデルは岡田有希子なのですから、あれだけの美少女がクラスで目立たない訳がありません。

ただ、いまと同様に陽気なキャラばかりが持て囃される時代の始まりが1980年代でした。

あまりにも成績優秀だと真面目すぎてつまらない女子だと勘違いする傾向が始まったのです。

1980年代初頭のMANZAIブームというものが日本社会を根本的に変えてしまいました。

何でもハッピーな笑いに変えられる能力こそが第一な時代の幕開けです。

学園という舞台でもこの傾向は変わりません。

いまでいう「陽キャ」を「ネアカ(根が明るいの略)」

いまの「陰キャ」は「ネクラ(根が暗いの略)」と呼んで区別するようになります。

区別というのはどこかでカースト制度のようなものを作り上げてゆくものです。

私は美少女であったでしょうが、「ネクラ」と評価されていた可能性があります。

この「ネクラ」や真面目だというレッテルが貼られるだけで恋愛カーストの下の方に押しやられたのです。

いまでも青少年の世界ではこうした傾向が生きているかもしれません。

しかし少女の美しさというものはもっと普遍的でしょう。

竹内まりやは私は「ネクラ」な美少女という設定にして、この娘を恋愛カーストの下層から救い出すのです。

少女の美しさというものは変わらないものよというイケてるルックスの竹内まりやだからこその恋愛観でしょう。

デートだけで夢心地になった