踏まれても耐えたそう傷つきながら
淋しさをかみしめ
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
Bメロの歌詞には、運命に抗おうとする様相が綴られているようです。
枯れすすきの如く、寄り添いながら必死に生きる男女。
生きる上で借金が足かせとなり、進もうとする道を蹂躙してきました。
明るい光が差し込まず、誰からも救いの手を差し伸べてもらえない…。
言い尽くせない“淋しさ”を感じ、傷ついたのではないでしょうか。
それでも、ただ1人、寄り添ってくれる存在が居ることで踏みとどまっていたのかもしれません。
あの人のために耐えよう。今をやり過ごせば、善い方向に繋がるはず。
心身に深い傷を負いながら、ポジティブな考えを持とうと足掻いたのでしょう。
ささやかな夢
夢を持とうと話した
幸せなんて望まぬが
人並みでいたい
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
男女は、借金の取り立てや来歴を知る他者に怯え、目立たないように暮らしていました。
2人の暮らしぶりは、世間一般とかけ離れていたのです。
ゆえに、“人並み”の生活に憧れていました。
大きな“幸せ”は望まないわ。ただただ平穏に普通に過ごしたいなぁ。
このように2人で“夢”を語り合っていたのでしょう。
どれほどの苦しみを味わっていたのか想像できます。
流れ星見つめ二人は枯れすすき
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
男女の視線の先に広がる夜空。
一筋の“流れ星”に向かって、“夢”を願ったのかもしれません。
そして、遥か彼方で輝く星に厳しい現実を突きつけられているのではないでしょうか。
所詮、自分たちは枯れすすきのような存在。ああ夢を実現させることはできないのよね。
このような言葉を男女は、交わしていたのでしょう。
憂いの表情を浮かべながら。
錯綜する想い
心の機微に触れ
Dメロは、曲調と詞が悲哀を色濃く漂わせています。
この俺を捨てろなぜこんなに好きよ
死ぬ時は一緒と
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
沢山の苦しみを分かち合ってきた男女。
男性は、真剣に女性のことを想い、愛してきたのでしょう。
あえて“~捨てろ”と冷たい言葉を放ち、女性の幸せを願ったのではないでしょうか。
俺と一緒に居るから不幸になるんだ。愛する人には、真の幸せを味わってほしい。
男性の複雑な胸の内が“~捨てろ”に反映されているようです。
一方、女性は、どのような状況に陥ったとしても男性の良き理解者であることに変わりません。
“~捨てろ”は本音ではない。どうして急に自暴自棄になっているのかしら。
男性の真意を汲み取ろうとし、否定も肯定もしません。
ただ“好き”と素直な気持ちを伝えています。
合わせて、“~一緒”と一生涯連れ添う意志も。
心の機微を表現した歌詞に胸が切なくなります。
それぞれが執着するもの
あの日決めたじゃないのよ
出典: 昭和枯れすすき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
“あの日”とは、男性が初めて“死”を口に出した日。
男性は、死ぬことによって、自由を手にできると思っていました。
今この瞬間が辛すぎて現実逃避していたのかもしれません。
対する、女性は、「死んでしまっては何の意味もない」と現実的な考え方が頭に浮かびます。
しかしながら、心が打ちひしがれている男性に伝えることは憚られる…。
そこで、「あなた1人で死なせたりしない、私も一緒に」と約束したのではないでしょうか。
この人と1分1秒でも長く共に過ごしたい。一緒に人生の終焉を迎えたい。
そのような想いから、男性を引き留めたのでしょう。
もしかすると、男性の良心に賭けてみようと思ったのかもしれません。
この人が誰かを巻き添えにするという前提条件の下、死を選んだりしないわ。
男性のことを信用し、万が一のリスクがある約束事を決めたのでしょう。
そして、冷たい言葉を口にする男性への小さな抵抗として使っているのではないでしょうか。
死に逃げようとする男性、生に執着する女性、正反対の2人の姿を実感できます。