アイドルからシンガーへの過渡期の楽曲

通算19枚目のシングル曲

「最愛」は柏原芳恵さんにとって通算19枚目のシングル発売曲になります。

発売は1984年の9月。オリコンで最高9位までランクインしたヒット曲です。

そしてこの楽曲の提供者は、あの「中島みゆき」です。

曲のいたるところに「みゆき節」が反映されています。

また、柏原芳恵さんにとってもアイドル路線から大人の歌を歌えるシンガーとしての岐路にいた頃。

しっとりとした歌唱がこの楽曲の素晴らしさをさらに引き立ててくれています。

切ない女心を歌いあげた秀曲

「最愛」は自分から旅立ってゆこうとする大好きだった男性との別れを惜しむ曲です。

大好きだった男性は別の女性と今まさに出航しようとしています。

主人公の女性は、その別れを本当は物凄く悲しんでいるのに気丈に振る舞う役を果たしています。

そう、ここが「みゆき節」といわれる中島みゆきの世界、そのものになっているのです。

本当に大好きな男性だったのなら、そう簡単に身を引けるものなのでしょうか?

このあたりの主人公の女性の心の葛藤歌詞から徹底的に考察していきましょう。

もしかしたら、主人公の思いは「中島みゆき」自身の恋愛観なのかもわかりませんね。

その答えもこの楽曲歌詞から解き明かしてみたいと思います。

別れの場所にどうして主人公が?

一世一代の決心?

メッセージをお願いします
今出てゆくあの船に

出典: 最愛/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

主人公の女性は、港にやってきています。

大好きだったはずの男性が乗り込んでいる船が出航する港にです。

どうして主人公が出航の時間を知ったのかは不明。

それを解き明かすには、主人公と男性との間にどれほどの親密な関係があったのか。

それを知らなければ謎は解けません。

その答えはこのあとの歌詞から解き明かせるでしょう。

どちらにしても、主人公は一世一代の覚悟で港にやってきたのです。

男性に対して、自分の思いをハッキリと告げるために。

メッセージはあらかじめ用意していたのか?

主人公は船の関係者に、1通のメッセージを託しました。

時代は1980年代。当然、携帯電話はありません。

こういった急な場合には伝言やメモくらいしか意思を伝えられない時代です。

今、デッキに見えるあの男性に知らせてほしいと。

主人公はそうお願いして、自分は物陰からひっそりと様子を窺うのでした。

ただ、急な場合メモ用紙が都合よくあたりにあるはずはありません。

恐らく主人公が家を出る時に用意したのでしょう。

自分の気持ちを清算してけじめをつるために。

主人公の思いは次の歌詞へと続いていきます。

物陰からじっと観察する

意外と冷静に

2人が乗っています
誇らしそうな貴方と
愛されてもふさわしいと思えるきれいな女が

出典: 最愛/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

主人公は2人の様子をつぶさに観察しました。

観察は意外と冷静に行われたようです。

大好きだった男性が、果たしてどんな様子で船にいるのか。

気の弱い女性ならば、正面から見ることなどとてもできないでしょう。

主人公も、さすがに正面から堂々と見る勇気はありませんでした。

物陰からこっそりと見つめるのは、主人公の精一杯の行動なのです。

それでも今から見てしまう残酷な一部始終を、見ないわけにはいかなかったのでした。

そして主人公の両の瞼に、ハッキリと男性を奪った女性の姿が浮かびます。

自分にとって応援する気になど到底できないこの現実を思い知らされるのでした。

主人公の張り裂けんばかりの思いが次の歌詞へと続きます。

悲劇の主人公?