歌い出しの歌詞ですべてが…
卒業だけが理由でしょうか
出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
旅立ちの日でもある「卒業」。儀式が行われる当日は別れ一色に染まる日です。
明日からはこれまでのように会えないことは分かっています。
それでも絶対に会えない訳ではないでしょう。
連絡先を交換すればまた会う機会もあるはずです。
でも歌の主人公である彼女は、感じ取ってしまったのでしょうか。
今日というこの日だけが別れの「理由」では無いことを。
その手の温もりは
いつも通りの優しさで
会えなくなるねと 右手を出して
さみしくなるよ それだけですか
出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
握手は別れの挨拶なのでしょうか。手を差し伸べてくれました。
いつも通りの優しい笑顔で差し出された手をそっと握り返します。
「右手」から伝わる温もりを感じながら聞いた言葉。
明日からは毎日顔を合わせることはないことに、彼も寂しさを感じているようです。
でもその寂しさは彼女が思っているものと同じではありません。
「卒業」という特別な日の高揚感で口にした言葉だったのでしょう。
彼女との別れを惜しんで伝えてくれた言葉では無いのです。
それでも自分の所に来てくれた彼の優しさを、彼女は忘れないのでしょうね。
泣き顔にならないために
むこうで友だち 呼んでますね
流れる季節たちを 微笑みで
送りたいけれど
出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
彼女と優しく握手をした彼は人気者なのでしょう。
「友だち」から大きな声で呼ばれる彼。
そんな彼を、いつまでも自分の前に引き留めておくわけにはいきません。
歌詞からは「じゃあ」と軽く手をあげて友だちの所に駆けていく彼の笑顔もイメージできます。
彼女に見えているのは彼の背中。ここで泣いてはいけないことも分かっているのでしょう。
彼には泣き顔ではなく笑顔を覚えておいて欲しいのです。
寒かった冬から暖かい春へと変わった「季節」。
耐えて過ごした日々から解き放たれて旅立ちの日を迎えます。
彼もその友だちも、今日は正にその日です。
でもそれを素直に喜べない自分がいるのでしょう。
移り変わる空を見上げてこぼれそうな涙をこらえます。
2人で迎えるはずだった
春なのに お別れですか
春なのに 涙がこぼれます
春なのに 春なのに
ため息 またひとつ
出典: 春なのに/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
春が来れば重いコートを脱いで足取りも軽くなります。
花が咲いてそれを見る人たちが笑顔になるのです。
温かな空気と明るい光は人々の心を浮き立たせます。
心がウキウキする季節のはずです。
でも彼女には「別れ」の日が来てしまったのです。
心の中では彼と2人で迎える春を想像していたのでしょうか。
夢のようなその思いは春とともに消えてしまったようです。
周りに誰もいなくなれば、涙をこらえる必要もないのでしょう。
独り迎える春を認めたくなくて繰り返す歌詞が切ないですね。
息を吐いても悲しみが減ることはありません。