別れを歌った昭和の名曲

バスは人生の縮図

「バス・ストップ」は、昭和の時代の男女の愛を歌った楽曲です。

場面は別れを演出する、とあるバス停留所。

男女は、そこではかない愛の終焉を迎えます。

現代ならば、別れの手段はいろいろとあるでしょう。

メールやSNSで簡単にやり取りができますから。

しかし、昭和という時代には携帯電話もスマホもありません。

大切な用事を伝えるには、電話か直接会って話すしかないのです。

特に恋人同士だった2人の別れ話です。当人同士が直接会わないと始まらないのです。

この曲の中で使われた場面はバス停留所です。

バスは、当時多くの人が利用していた交通手段。

出会いや別れ。バス・ストップには人生の縮図が見え隠れしていたのです。

まさにドラマチックな非日常空間でもあったわけです。

歌詞の物語は、こんなバス・ストップから始まるのです。

純粋すぎる愛の結末の歌…

1970年代。男女の愛は今よりも一途で純情だったのかも分かりません。

愛の始まりは、いつの時代も期待と希望で胸が膨らみます。

しかし、それが大きければ大きいほど別れの辛さも膨らんでしまうのです。

特に女性にとって、別れのけじめは避けて通れない時間。

できる事なら、会わずに済ませたいのだけれど純粋すぎる気持ちがそうさせません。

結局、別れの舞台から泪がなくなることは、ありそうもありません。

しかし、それを経験するから女性は強くなれるのです。

「バス・ストップ」は男女の短かった至福の時間には触れていません。

愛に生きた、女性のけなげな別れの気持ちを歌った歌なのです。

では早速、歌詞の解説に入っていきましょう。

バスが発車するまでの短いひととき

バスを待つ2人

バスを待つ間に泪を拭くわ
知ってる誰かに見られたら
あなたが傷つく

出典: バス・ストップ/作詞:千家和也 作曲:葵まさひこ

この歌詞の主役となるのは、今から別れを決行する男性と女性です。

男性がバスに乗りどこか遠くへ去ってゆきます。

女性は、それを見送りに来て、最後の時間を過ごします。

しかし、いつものように平然としているわけにはいきません。

もうすぐ、愛した男性とのお別れの瞬間がやってくる。

そう思うと、が知らない間に、頬を濡らしてしまうのです。

「こんなところで泣いていたら、周りの人たちに気付かれてしまう」。

そう察した女性は、周囲の目を避けるように泪をハンカチで拭います。

メソメソしている姿を見せてしまったら、きっと男性に叱られて泣いているように見えてしまう。

いえ、大好きだった男性にとんだ迷惑をかけてしまう。

もしかしたら、こんな場面を顔見知りの誰かに見られてしまうかも分からない。

そんな風に見せないために、女性は必死になって涙を拭うのでした。

全て女性の責任?

何をとり上げても私が悪い
過ちつぐなうその前に
別れが来たのね

出典: バス・ストップ/作詞:千家和也 作曲:葵まさひこ

歌詞は、2人が別れに至る責任は女性にある、と歌っています。

そして男性側には、一切非はないと女性は言っているのです。

しかし、女性は諦めずに2人の仲を復活させようと思っていました。

近いうちに、その胸の思いを男性に告げにゆく途中だったのです。

しかしそれを知ってか知らずか、唐突に男性から別れ話を切り出されたのです。

女性は何とかして、抗おうとしましたが諦めました。

潔く身を引く覚悟を決めたのです。責任は全て自分の方にあると思うことにしました。

そう思い込むことによって、愛した彼をこれ以上困らせたくなかったから。

引き際は、潔くという思いを貫き通した女性なのでした。

本当は別れたくない

どうぞ口を開かないで
甘い言葉聞かせないで
独りで帰る道がとても辛いわ

出典: バス・ストップ/作詞:千家和也 作曲:葵まさひこ

しかし、本当のところは男性とは別れたくない

女性の本心が歌詞からひしひしと伝わってくるのです。

だから、バスが到着するまでの間に決心が鈍るのが怖かった。

もし、男性から「やり直そう」とか「おれが悪かった」と聞かされたら。

恐らく女性は、何を言い出すか分からない心境になったでしょう。

そこで女性はそっと心の中でつぶやきます。

「もう後戻りはできない」と。

そう強く思わないことには、この場で立ちすくんで泣きぬれていたかも分からないからです。

男性の優しさを吹っ切り、けじめをつける決心を求められた瞬間です。

明日からの生き方に、迷いや後悔を持ちたくなかったから。