今日も願ってる
こないでこないで次の朝よ
踊っていたいよ僕ら死ぬまで
不安定で歪なこの場所で笑いあってさ
意味のない秘密を交わしながら
夢を見てる
1、2で世界を変えたくて

こないでこないで次の朝よ

出典: 3時12分/作詞:TAKU INOUE 作曲:TAKU INOUE

主人公にとっての「夜」は、生きる意味を感じさせてくれるようなものです。

つまり、夜に出歩くことができなくなれば、息をしていないのと同じこと。

年を取っても、体力が衰えても、音楽から離れることはできるはずがないのです。

たくさんの夜を越えてきた主人公ですが、決まって思うのは「朝が来てほしくない」という願い。

憂鬱な昼間など二度とこなければ、この夜がずっと続けばいいのにと願わずにはいられません。

大して親しくもないような存在と酒を酌み交わすクラブでの夜。

名前すらも知らない人と過ごす時間が、何だか心地良く感じてきます。

今この気持ちのままならば、指先1つで何かを変えてゆける……。

まるで自分にとてつもない力が備わったかのように、大きな勇気が湧いてくるのです。

同じ音楽を愛しながら

僕の目を覚ますのは

気づいたら
君の散漫な話が
僕の簡単な眠りをかき消す

出典: 3時12分/作詞:TAKU INOUE 作曲:TAKU INOUE

眠りについてしまえば、楽しかった夜が終わりを迎えてしまいます。

そして再び憂鬱な朝を迎えることとなり、心はどんどんとブルーになっていくでしょう。

しかし、一晩中眠らずに楽しみ続けるのは、どんな人でさえも体がもたないもの。

睡魔に侵されながらも、何とか目を開けようと必死になっているのです。

そんな主人公をうたたねから引き戻したのは、同じ音楽を愛する「君」の存在でした。

夜にだけ会うことができ、夜明けと共に姿を消してしまう君。

まるで幻のような存在の「君」ですが、主人公にとってかけがえのない存在であることは確かです。

夜と朝の境目「3時12分」

飽和したおかしなベースラインの中
二人で世界を変えにいく夢
君と変えにいく夢
見た気がした

3時12分

出典: 3時12分/作詞:TAKU INOUE 作曲:TAKU INOUE

曲名にもなっている「3時12分」は、かなり夜遅くのこと。

夜遊びをしている人たちですら、そろそろ寝ようと体を横たえる時間です。

しかし、そんな深夜にも関わらず、音楽に浸り続ける主人公。

夜にしか会えない君と、いつまでもこのままこうしていたいと願わずにはいられません。

それぞれが好きな音楽を流し、どの楽曲のメロディーなのかすら分からなくなってしまいそうな密閉空間。

右耳から聞こえる音と、左耳から聞こえる音が全く違うのも面白いものです。

頭のおかしくなりそうな爆音の中思いついたのは、混沌とした世界を動かす自分と君の姿でした。

昼間は投げ出したくなる日常も、君となら変えていける気がしてくるのです。

音楽のなくなった世界で

ずっと願ってる
こないでこないで次の朝よ
踊っていたいよ僕ら死ぬまで
不安定で歪なこの場所で笑いあってさ
ずっと願ってる

出典: 3時12分/作詞:TAKU INOUE 作曲:TAKU INOUE

「3時12分」は、いわば夜と朝の境界線のような時間帯。

次第に空が明るみ始め、自然と明日のことを考えなくてはならないような時間に差し掛かってきます。

だからこそ、終わってしまう「今日」を嘆かずにはいられない主人公。

確かに会えるかどうかもわからない君の存在に、不安が募って仕方がないのです。

ある日突然未知のウイルスがはびこり、当たり前だった音楽を奪われることとなった現代社会。

昨日まで会えていたはずの君の姿は、もうしばらく見ることができていません。

夜の安らぎを失った主人公は、ただ淡々と身を焦がすような昼間を生き抜いているだけ。

そこに喜びなどなく、ただこの日々が終わるのを願うばかりです。

君と共にいつまでもずっと

朝が来てほしくない理由

こないでこないで次の朝よ
踊っていたいよ僕ら死ぬまで
同じ曲が好きってそれだけで肩を組んでさ

出典: 3時12分/作詞:TAKU INOUE 作曲:TAKU INOUE

人と人とが繋がり合うのに、壮大な理由やきっかけなど必要ありません。

主人公と彼が出会ったのは、ただ同じ音楽を愛し、同じ場所で体を揺らしたという事実があったからでした。

それもこれも、この夜の世界と音楽がなければ成し得なかったこと。

ただ夜を溶かすように流れ続ける音楽が、孤独な人と人を繋いでいくのです。

多くの言葉を交わすわけではないけれど、どこか心の奥深くで繋がっているような主人公と彼の関係性。

願わくばこの関係がずっとずっと続きますように……。

自分の状況が変わろうとも、音楽など忘れてしまうほどに老いようとも、ただ君を求め続けるのです。