「青色」「点滅」という二つの言葉から思い浮かぶのは信号です。

安全に歩ける青信号は、赤信号が近づくと点滅を始めます。

それに気づいた歩行者は「早く渡らなきゃ!」と早足で横断歩道を渡りきります。

安全、安心、安定の終わりを告げるのが、青色の点滅。

この歌詞では、今まで何気なく過ごしていた時間が終わる予感を「青色の点滅」で表現しているようです。

また、当たり前のように抱いていた何らかの感情を終わらせなければ、という焦りも感じます。

砂時計も青信号と同じように、終わりが見える物です。

上にある砂は徐々に減っていき、どれぐらい残っているのか目に見えて分かります。

下に落ちた砂は、砂時計をひっくり返さない限り自力で上に戻ることはありません。

つまり、時間は一方向に流れていて、必ず終わりがあるということです。

冬を待つ街路樹 流れるバスの窓
一行きりの台詞 冷たい指はなぞる

出典: ロングハローグッバイ/作詞:Yusuke Kume 作曲:Yusuke Kume

どうやらこの曲の季節は「秋」のようですね。

街路樹の葉っぱは少しずつ乾いて色を変えていきます。

冬の風で上手に飛ばされるように、体を軽くしているのでしょう。

つまり、木に別れを告げる準備をしています。

葉っぱたちの心の中でも、青信号が点滅しているのかもしれません。

そんな樹々を、バスの中から眺めている主人公。

街路樹は窓の外を次々と流れていき、主人公に別れを告げます。

バスの窓は車内の暖房と外気の冷たさで曇っているのでしょう。

そこに主人公は、何か文字を書いたようです。

何もかもが別れを告げていく景色を見て、書いた言葉は「グッバイ」ではないでしょうか。

誤魔化していた ひもとけないように
破れた雲 月夜 浮かぶ丸い鼓動

出典: ロングハローグッバイ/作詞:Yusuke Kume 作曲:Yusuke Kume

主人公は、誰かへの想いが露見してしまわないように隠していたようです。

しかし、隠しきれずに見え隠れしてしまっていたから「誤魔化して」いたのでしょう。

誰かへの想いがあちこちで顔を出さないように、頑張っていました。

主人公は自分の恋心を「月」に例えています。秋といえば中秋の名月。恋心は満月なのでしょう。

満月は、これ以上膨らむことのない、いわばカンスト状態といえます。

つまり主人公の想いも、もうこれ以上大きくならないほど膨らんでいるのです。

秋の大きな満月をちぎれ雲が隠そうとしますが、隠しきれるわけがありません。

隠せない部分は「誤魔化す」しかないということですね。

消えてしまいそうでも消したくないから「ハロー」

ハロー すぐ消えそうな月も
ハロー 遠く聴こえる声も
恋をしてる 胸のかけら
波模様に君が揺れる

出典: ロングハローグッバイ/作詞:Yusuke Kume 作曲:Yusuke Kume

主人公が恋心を自覚したとき、まだ心の月は満月ではなく消えてしまいそうな薄らとした月でした。

そんな心の月から聴こえる胸の鼓動も、かすかな音だったのでしょう。

どちらも小さな存在ですが、それでも自分の元に「ハロー」と言って訪れてくれた存在です。

今、主人公は月夜の海辺に立っているようです。空に浮かんでいるのは心の月。

その月は海の水面に映り、さざなみに溶け、小さなかけらのように海の上を漂っています。

つまり、主人公の恋心、君への想いや君と過ごした時間が波間に見え隠れしている状況。

それぞれのかけらが小さすぎて、ふとした拍子に消えてしまうかもしれません。

渚に立って見つめて 隠した胸にキスを
ハロー 手を伸ばして

出典: ロングハローグッバイ/作詞:Yusuke Kume 作曲:Yusuke Kume

 主人公は恋の終わりを自覚していますが、誰かに抱いた恋心は大切で、忘れたくないのでしょう。

想いのかけらが消えてしまわないうちに、海に向かって手を伸ばしました。

「ハロー」と言って自分の元に来てくれた小さな恋心、今度は主人公が「ハロー」と言って迎え入れたようです。

秋の終わり、冬の始まり

「終わり」の気配に敏感になっている主人公。

しかしとある「終わり」の足音に気づきませんでした。

眠れない夜の月は銀色

眠れない夜は 思い取り出してる
トビラいくつ開けて 似てる影探す

出典: ロングハローグッバイ/作詞:Yusuke Kume 作曲:Yusuke Kume

恋の終わりを予感している主人公は、眠りにつけないことがあるようです。

そんなときは、膨れ上がった満月の心の中をじっくり見つめ直します。

満月のまま恋が終わりを迎えてしまうと、主人公が負う傷はきっと大きなものになるでしょう。

想いを少しでも小さくできないかと考えました。

恋をしたばかりの頃は、心のどこかが影に隠れて、三日月や半月になっていたはずです。

その頃のことを思い出して、恋心を小さくする方法を考える主人公。

銀色の糸 渡るたび出会う 真新しい涙
届きそうな鼓動

出典: ロングハローグッバイ/作詞:Yusuke Kume 作曲:Yusuke Kume

月は高度が低いときは黄色や赤に近いのですが、夜が更けて高度を上げると白や銀色に見えてきます。

眠れずに夜が更けていき、月は銀色に。

恋が終わりに近づき、心の月も銀色になっているのかもしれません。

月が放つ銀色の光を伝って、過去の影を探しに行く主人公。

しかし、見つかったのは恋心を小さくするための影ではないようです。

銀色の光を通って恋の思い出をさかのぼると、恋心は小さくなるどころか募るばかり。

苦しくて、涙がこぼれてしまいます。

募る恋心のせいで月の鼓動は大きくなり、今まで以上に誤魔化すのが困難になってきたようです。

気づけば終わっていた季節