直前のラインとは打って変わって恋の歓びを歌い上げます。

これは初恋というものが持つ二面性が反映したものでしょう。

一目惚れですから恋に関しての予備知識もないままに訪れた歓びです。

学校の廊下で出逢った隣のクラスの子。

そんな子に恋してしまうと相手については分からないことだらけでしょう。

このミステリアスな側面というのも恋にとっては大事なエッセンスかもしれません。

未知の美しさであるからこそ相手に惹かれるのが人間というものでしょう。

突然訪れる恋の歓びを心いっぱいに楽しんでいる様子が微笑ましいです。

初恋というものはその人の生涯の中で一回しか訪れません

一回性という稀少な性格を持ち合わせるものだからこそ心が震えるほどの感動を得られます。

他のことが手につかないほどの歓びというものが初恋にはありました。

遠い日のことでもう忘れた。

そんな人もいるのかもしれませんが、多くの人にとって初恋は特別な記憶になります。

初恋から学ぶ愛の歓びはこの先の人生でもとても大切なものになるでしょう。

初恋への執着

「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ

いつの日か誰かと
違う恋をするときも
君は僕の中で光り続ける

出典: Bittersweet/作詞:Nakanojojo, Yunomi, KASSYKASSY 作曲:Nakanojojo, Yunomi

そうですねと頷きたくなるラインです。

実際に初恋というものはいつか破綻してしまうものです。

若いうちの恋愛というもの自体が危うく脆いものでしょう。

ましてや初めての恋なのですからどうなるか分からない要素がたくさんあります。

こうした印象はもちろん結果から導かれるものです。

いまこのときに初恋の真最中という若いリスナーはその歓びを大切にして欲しいと思います。

ただ初恋はやはりどこかで壊れて消えてしまうのです。

愛をハンドルするには稚すぎる時期に訪れるものですから仕方ありません。

もちろん初恋が破れた後も人は恋をします。

初恋の破綻がトラウマになって恋に臆病になってしまった人もいるでしょう。

しかしそうしたトラウマを解きほぐしてくれるような人といつかは出逢います。

そこから大人の恋が始まるのかもしれません。

しかしどんなに恋を重ねてもたった一度の初恋の相手の面影は心の深いところにとどまり続けます

最初に出逢った恋の相手には特別な思いをよせて美化や神格化しすぎてしまう傾向があるのです。

初恋の相手への執着のようなものは名画「ニュー・シネマ・パラダイス」でも描かれています。

中年・初老になっても初恋の相手への思いを捨てきれない映画監督を主人公にしました。

ただあの映画を観る限り初恋の相手への執着はほどほどがいいとも思わされます。

やはりいま目の前にいる愛する人こそを大切にしたいとも感じるのです。

しかし心のメカニズムというものは不思議でしょう。

いつまで経っても初恋の相手が突如夢に現れてきてしまうこともあるのです。

いまの相手に失礼がないように

ダメだけど、ふたりだけの
秘密の合言葉を
僕がずっと持ってゆくよ

出典: Bittersweet/作詞:Nakanojojo, Yunomi, KASSYKASSY 作曲:Nakanojojo, Yunomi

いま愛している人が別にいるというのに初恋のことを思い出すのはタブーという前提があります。

しかしそれでもその危険を冒してまで君の記憶を胸にしながら生きるよという決意が滲むのです。

目の前に新しい恋人がいるのに過去の恋愛について考えてしまうのは確かに失礼でしょう。

しかし人間の心の中で本人のコントロールの及ばないところに居着く記憶というものはあります。

いま他の人と恋愛しているのにわざと過去の相手を引き合いに出す方には天罰が下されるべきです。

実際にそうした悪い癖がある人には相手も醒めてしまうでしょう。

しかし初恋の人が居着く心の場所というのは特別な地位にあります。

いまの相手に失礼のないようにしながらもときどき思い出したりすることは仕方のないことです。

ましてや夢など本人にとってコントロールできないもので初恋の人を思い出すのは自然なことでしょう。

僕は君と交わした会話の中から思い出深いものをずっと覚えているよと歌います。

これくらいの決意は許してあげて欲しいものです。

初恋の行方は

君は僕の先をゆくから

まだひとりで過ごすのに慣れない日々
閉じた目の奥
はしゃいでいたふたりが HOLA! フラッシュバックするんだ

ただ好きという気持ちじゃたどり着けない遠い場所に
君は他の誰かともう向かっているんだろう

出典: Bittersweet/作詞:Nakanojojo, Yunomi, KASSYKASSY 作曲:Nakanojojo, Yunomi

屋根まで飛んで壊れて消えたシャボン玉。

僕の初恋もそのようにして終わってしまいます。

仕方ないことですし、誰もがとおる道でしょう。

愛には試練が伴うものだと知ること自体は悪いことではないのですから先へ進みたいものです。

しかし初恋が破れてしまった痛手から立ち直るには相応の時間というものが必要になるでしょう。

恋に傷付いた心は新しい恋愛で上書きすることによってしか癒せません。

無理に新しい相手を探す必要はないのですが、いつまでも過去の恋に執着するよりは健康的でしょう。

僕の気持ちはまだそこまで吹っ切れていません。

どうしても楽しかった日々の記憶が甦ってくるのです。

一方で君の方は僕を差し置いて他の相手を見つけてしまったのかもしれません。

歌詞にはそうなっているだろうなという僕の予測しか書かれていないです。

それでもかつて恋をした相手を破綻した後にも縛り付けることはできません。

さらに新しい幸せを相手が掴むことを祈ってあげられるくらいの度量が欲しいものです。

遠くに行ってしまう君を見つめているような追憶の時間に僕は浸りきったままなのでしょう。

切れ切れの思考と言葉を集めて

後悔
特にない
戻りたい
TIMEが止まらない
また会いたい
またキスしたい
それ以上もう聞かないよ

出典: Bittersweet/作詞:Nakanojojo, Yunomi, KASSYKASSY 作曲:Nakanojojo, Yunomi

語りの部分です。

リミックスのバージョンによってはこの箇所が省かれているものも存在します。

何ともいえない切なさが滲んでいてとてもいいラインです。

短いセンテンスで感情を表現しようとします。

ブロークン・ハートのときは皆、思考が切れ切れになるものです。

まとまった思考というものができない私たちはああ、つらいなど短い言葉しか発せません。

記憶だけがときを遡れます。

しかし現実のときの流れを戻すことはできないのです。

ここにあるのはアパシー・燃え尽き感のようなものでしょう。

また自分の無力さに気付く瞬間でもあります。

自信を持って生きている人でも恋の痛手に戸惑う瞬間は必ずあるのです。

こうしたときにその人の人間らしさがうかがえます。

初恋の人と再会したいという思いはいつまでも心に燻り続けるものです。

ただ、そう願っているうちに相手が家庭を築いたりします。

永遠のお別れにしておいた方がいいのではと思うようになる日もいつかくるはずです。

中野ジョジョ自身がまだまだ若いクリエイターでしょう。

もう少し歳を重ねてからこの曲をどう歌うのかを知りたい思いもします。

別れと心の傷