丑の刻参りの儀式には歌を唄うという手順は特にありません。
それでも山崎ハコは歌います。
日本の女性SSW(シンガー・ソング・ライター)の先駆けの世代であるという自負からでしょうか。
釘に歌を覚え聴かせるように彼女は歌います。
壊れてゆく私
涙で釘を刺す
コンコン コンコン 釘をさす
なくなるまでは 釘をさす
涙ポトリと また 釘になる
出典: 呪い/作詞:山崎ハコ 作曲:山崎ハコ
涙が流れ、それが藁人形に刺す釘になると歌われます。
釘を刺す彼女自身が涙を流しながら壊れていく様子を歌っているのです。
恨みや呪いを発するあまり、取り憑かれたように藁人形に釘を刺す。
深夜の自室でのこの哀しい行為は凄惨な情景というよりも彼女の寂しさが浮き彫りになります。
血を流す藁人形
誰の血が流れたのか
コンコン コンコン 釘をさす
わらの人形 血を流す
泣いているように いったい誰の血
出典: 呪い/作詞:山崎ハコ 作曲:山崎ハコ
釘を刺していた藁人形から血が流れ出します。
呪術の効果でしょうか、誰かが痛みで泣くように血を流します。
しかしそれはいったい誰の血なのでしょうか。
藁人形に託した呪詛の対象が血を流していると考えるのが普通なはずですが彼女は確信が持てません。
泣いているのも、血を流しているのも釘を刺す彼女自身というようにも解釈できます。
このパラドックスは何故なのか。
恨みに囚われたのは誰?
こんな私に誰がした
コンコン コンコン 釘をさす
私いつまで 釘をさす
誰がこうした うらんで釘をさす
私をこうした うらんで釘をさす
出典: 呪い/作詞:山崎ハコ 作曲:山崎ハコ
彼女は恨みや呪いを藁人形に託していますが、ネガティブな気持ちが強いために呪詛返しされたようです。
自分が何をしているのか、いつまでこんなことを繰り返すのか分からない。
それでも釘を刺すことをやめられないのです。
いったいこんな私に誰がしたのか?
それは他ならぬ私自身です。
自分をここまで追い詰めた相手を呪おうと、いつまでも藁人形に釘を刺し続けることをやめられない。
恨みや呪いの感情に取り憑かれた人間の底の浅さや愚かさが浮き彫りになります。
いつまでも釘を刺す
終わらない呪詛
コンコン コンコン 釘をさす
コンコン コンコン 釘をさす
コンコン コンコン 釘をさす
コンコン コンコン 釘をさす
コンコン コンコン コンコン コンコン・・・
出典: 呪い/作詞:山崎ハコ 作曲:山崎ハコ