「ちい恋バンド」の3人が、リサに向けて「SAYONARA DOLL」を演奏しています。

その両者の間にも、先程と同じ柵が横たわります。

ここでも、柵は大した障害ではありません。

舞(山田杏奈さん)たちのまっすぐな声と演奏は、しっかりと届いているからです。

基地の反対運動

MV中盤で、リサは基地に住んでいることが分かります。

家族の中に軍人がいるのでしょう。

リサの顔立ちが西洋風であることから、海外からの赴任だと予測できます。

基地は土地全体が柵で囲まれており、リサはいつも柵の中にいます。

理由の1つが、MVに一瞬映る反対運動だと思われます。

運動が行われる門前には警備員もおり、厳重な雰囲気。

島民の警戒心が強くては、気軽に外へ出ることも危険かもしれません。

リサは柵があっても慎司や亮多たちと出会い、友情を深めることができました。

しかし、彼らの友情の間には反対運動の柵が立ちはだかります。

笑顔を伝え合うことはできても、しっかりと手をつなぐことは難しいのです。

子どもたちに国境はない

自分たちと海外を分けて、反対運動を展開しているのは大人が中心です。

子どもたちの心には、国境による区別はありません。

続くシーンの中には、公園で一緒に遊ぶ子どもたちが映ります。

よく見ると、男の子は日本風の顔立ち、女の子は外人風です。

この子は柵の外に出ていることが分かります。

しかし、女の子の表情はどこか不安げ

大人たちの不穏な空気を感じ取っているのかもしれません。

子どもたちのそんな姿を目にした亮多は、笑顔でピースサインをします。

笑顔は、ほとんどの国で笑顔として受け取ってもらえます。

相手そのままを受け容れているよ、という明確な表現になるのです。

亮多はまだ高校生であり、大人ではありません。

しかし、もっと年若い子どもたちから見れば、亮多も十分大人に見えます。

そんな亮多が女の子に受容的な姿勢を見せたことは、とても大きな意味を持つでしょう。

もしかすると女の子は、肩身の狭い思いをしながら遊んでいたかもしれません。

しかし亮多の笑顔によって、拒絶する人ばかりではないと気づいてくれたでしょう。

ひとりでも自分を拒絶する人がいると、その後ろに大勢を想像してしまいます。

けれど実際には、受容的な人たちもいる。

そちらの人たちの方が多いかもしれません。

亮多のように日常的な1コマの中で、それを伝えることができるとしたら。

そこから心の交流が始まる可能性もあります。

最後のプレゼント

柵越しに舞とリサが笑いあいます。

リサの手元には、「To LISA」と書かれた手作りのCDが。

どうやら「ちい恋バンド」3人からのプレゼントのようです。

よく見ると、CD下部には収録曲が記されています。

曲名を見ると、彼らのデビューシングル「ちいさな恋のうた」と同じです。

一点「あなたに」と「DON'T WORRY BE HAPPY」の順番だけが異なるのみ。

さらにCDの左右には、リサへの手書きのメッセージが。

リサにとっては、世界に1つしかない大切なCDとなるでしょう。

そして視聴者にとっては、「リサと同じ曲が聴ける!」という喜びになります。

最後の考察 「サヨナラドール」はいつ渡された?

最後に、時系列の考察をしていきましょう。

寄せ書きをする人形としての「サヨナラドール」についてです。

MVでは、序盤にリサがメッセージを記したサヨナラドールが登場します。

しかし少し落ち着いて考えてみると、2つの時系列を考えることができます。

時系列1 サヨナラドール→楽曲制作

1つ目は、リサがサヨナラドールを渡したのがという説です。

この考えに拠ってMVを見ていくと、全体のストーリーはこのようになります。

  1. リサが「サヨナラドール」を亮多たちに渡す
  2. リサが基地を離れることを「ちい恋バンドメンバーが知る
  3. お返しと、メッセージを伝える意味で、楽曲「SAYONARA DOLL」制作

MV序盤では、亮多が舞に「サヨナラドールとは何か」を説明しているように見えます。

そこでこの時点では、舞がサヨナラドールのことを知らなかったと分かります。

分からないものを曲のタイトルに使うことはできませんね。

そこで、上のような時系列の考察ができるわけです。

舞はサヨナラドールという寄せ書きの存在を知り、それをバンド流にアレンジしました。

MVの流れにも沿う形なので、このように見ることもできるでしょう。

時系列2 楽曲制作→サヨナラドール

2つ目は、別れの曲として「SAYONARA DOLL」が制作されたのが先という説です。

順番として書くと、このような考えになります。

  1. 「ちい恋バンド」のメンバーは、リサが基地を去ることを知っていた
  2. 別れる前の思い出になればと楽曲「SAYONARA DOLL」を作る
  3. リサの前で披露
  4. 後日、リサが去る前に寄せ書きとしてのサヨナラドールを置いて行った

この見方をすると、MV序盤に出てくるサヨナラドールは、後日談的な扱いになります。

サヨナラドールを見つめながら、リサとの思い出を振り返っているような感じです。

これはMVを見る人によって、大きく印象と考察が変わるところでしょう。

どちらにも取れるところが面白いですね。

「ちいさな恋のうた」

小さな恋のうたバンド【SAYONARA DOLL】MV解説!愛は国境を越える?切ない余韻を味わおうの画像