いちにち およげば はらぺこさ
めだまも くるくる まわっちゃう
たまには エビでも くわなけりゃ
しおみず ばかりじゃ ふやけてしまう

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

自営業で生活していくことを決めた主人公。

会社員時代のような安定や保障がない分、毎日必死に働く必要があります。

会社を辞めたからといって、働くこと自体を辞めることはできないのです。

お金に余裕ができたら、たまには美味しいもの(=エビ)でも食べたいと思っている主人公。

しかし、現実はなかなかそうもいかず、ありふれた安いもの(=しおみず)でしかお腹を満たせません。

つまりこの辺りから夢と現実のギャップに気が付き始めてきた、ということになります。

会社勤めをしていれば高給ではないですが毎月、決まった給料がもらえて安泰に暮らせる

しかし、独立してしまったら今まで頼っていた会社の看板はありません。

売り上げをつくることがこんなに大変だとは。

独立してしばらくたってから初めて気づく主人公だったのです。

魅力的な話に食いついたけど…

いわばの かげから くいつけば
それは ちいさな つりばりだった

どんなに どんなに もがいても
ハリが のどから とれないよ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

毎日汗水をたらして働く主人公。

きっと「もう少し楽に働けたらいいのに」と思っていたはずです。

そんな主人公の前に現れたのは、魅力的なお仕事の話(=つりばり)でした。

すぐにその話に食いついた主人公。

しかし、その話は主人公を騙すための罠だったのです。

会社で働いていたら、そのような危ない判断は全て上司や社長がやってくれます。

でも自営業の主人公は、リスクがあるかどうかの判断も自分でしなくてはいけないのです。

元の世界に戻されてしまった主人公

はまべで みしらぬ おじさんが
ぼくを つりあげ びっくりしてた

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

ここで登場する「みしらぬおじさん」とは、恐らく主人公の新しい雇用主を指しているのでしょう。

自由を求めて海に飛び込んだ主人公。

しかし「みしらぬおじさん」によって、再び陸に戻されてしまったのです。

しかも、元の世界に戻る原因を作ってしまったのは主人公自身にあります。

なんとも皮肉な話ですね。

二度と海の世界には戻れなくなった主人公

やっぱり ぼくは たいやきさ
すこし こげある たいやきさ
おじさん つばを のみこんで
ぼくを うまそうに たべたのさ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

主人公は再び陸に戻されてしまい、深く失望します。

そして「所詮自分は会社の歯車として働くことしかできないのだ」と思い知るのでした。

「やっぱりぼくはたいやきさ」という部分には、そんなニュアンスが込められているのでしょう。

そして、新しい雇用主である「おじさん」は主人公を食べてしまいます。

つまり、もう二度と「おじさん」の元から逃げ出せなくなったことを示しているのです。

どんなにもがいても、会社という組織からは逃れられないということなのでしょう。

サラリーマンという生き方を問うた秀作!

等身大の自分を表現した楽曲

「およげ!たいやきくん」は子供向け番組から飛び出した超大ヒット曲です。

シングルとしての発売枚数450万枚

これはそれまでの記録、宮史郎とぴんからトリオの「おんなのみち」の300万枚を上回るセールスなのです。

ミリオンセラーになるためには広く万人に受け入れられる楽曲であることが重要。

「およげ!たいやきくん」はわかりやすいメロディー大人も子供も納得できる歌詞があってこそなり得たのです。

 そして何より世の中の支持を集められたのは、サラリーマンの悲哀をサラッと表現したからこそ。

そして子門真人さんの哀愁を秘めた歌声があったからでしょう。

所詮、会社の歯車か

歌詞中にもありましたように、主人公たるたいやきくんは結局、目の前のエビにつられて浮世の世界に引き戻されました。

ということは主人公も所詮、サラリーマンとしてしか生きてゆけないということなのです。

いかに強がっても、寄らば大樹の陰。

サラリーマンにとって「会社」という居場所がいかに居心地がいいか。

心の中では会社を批判していても知らず知らずその歯車になっているのです。

「およげ!たいやきくん」は世の中の無常を歌い上げた名曲ということがいえるでしょう。