何かになりたいと願ったり、偽りの自分を演じたり...。
そういった人間の感情や行動は、世界から見ればちっぽけなものです。
善も悪も関係なく飲みこんでしまうこの世界で、私たちは今日も小さなことを悩み続けて生きていくのでしょうね。
主人公の切実な想い
隠れてないでさぁ出ておいでよ 煮て食ったりはしないからさ
もう疲れたんだ 僕と嘘憑きを両立させるのは
出典: 嘘憑きとサルヴァドール/作詞:小南泰葉 作曲:小南泰葉
2番は誰かに呼びかけているような歌詞から始まります。
いったい誰に何を伝えようとしているのでしょう?
相手は主人公のことを怖がって、その身を隠してしまっているようです。
ここで思い出したいのは、1番の歌詞で主人公が偽りの自分に慣れてしまっていたということ。
主人公が呼びかけている相手は、もしかしたら「本当の自分」なのではないでしょうか。
その証拠に「もう疲れたんだ~」からの歌詞では、嘘をついて生きることにうんざりしている様子が歌われています。
ありのままの自分を取り戻したい。
ここの歌詞で歌われているのは、そんな主人公の切実な想いなのかもしれません。
誰も世界を支配できない
『最大の敵は自分自身です。』って先生 それ
己を倒し殺せという事でしょうか?
I miss the world today この世界は今日も君無しで周っている
I’m still hating you 指きりげんまん嘘憑いた 君に針飲まそう
出典: 嘘憑きとサルヴァドール/作詞:小南泰葉 作曲:小南泰葉
『最大の~』は、フランスの有名な哲学者の言葉です。
なんだか分かるような分からないような、難しい言葉ですね。
ありのままの自分を取り戻したい。
そう願っている主人公にとっては、敵となり得る自分の一面さえも「ありのまま」に含まれるでしょう。
敵も味方も関係ない。善悪の両方を持ち合わせているのが人間というものです。
そして地球は人間の意思とは関係なくこれからも回り続けます。
世界を支配できる者など存在しません。
喜びや悲しみ、また愛や憎しみでさえ、人の感情が世界に影響を及ぼすことなどないのでしょうね。
『嘘憑きとサルヴァドール』は人の内面そのもの
人間の姿というのは、見る人によって印象が変わるものです。
同じ人間でも時と場合によって、嘘つきにも救世主にもなり得る。
そう考えると、世界には善人も悪人も本当の意味では存在しないのかもしれませんね。
完璧になれないから人生は難しい
命を賭けて何を守る?
『完璧を恐れるな完璧になんて成れっこないさ』
産まれ 生き 死に たった3つの事なのに 2番目がどうも僕には難しいのさ
出典: 嘘憑きとサルヴァドール/作詞:小南泰葉 作曲:小南泰葉
『完璧を~』が、前述した「サルバドール・ダリ」の言葉です。
不完全であることが人間本来の姿であり、自然のままに生きるということなのではないでしょうか。
しかしそれは逆に言えば、人間は絶対に完璧にはなれないということ。
だから生きることはこんなにも難しいのかもしれませんね。
善悪では分類できない
I miss the world today この世界は この世界は
I miss myself tonight この世界は この世界は
I miss the world today この世界は今日も僕無しで周ろうとする
I’m still hating me 指切り拳万嘘ついた 僕に針飲まそう 指切った
出典: 嘘憑きとサルヴァドール/作詞:小南泰葉 作曲:小南泰葉
誰かを恋しがったり、また誰かを憎んだり...。
人は相反する感情を同時に抱えて生きています。
タイトルの『嘘憑きとサルヴァドール』も、簡単に言ってしまえば「悪と善」。正反対の言葉が並んでいます。
嘘で誰かを傷付けた人間が、逆に嘘で誰かを救うこともある。
人の感情や行動というものは、善悪で分類できるほど簡単ではないのでしょう。
『嘘憑きとサルヴァドール』は、そういった人の複雑な内面を象徴しているのかもしれませんね。