つぼみのままで 夢を見ていたい
影絵のように美しい
物語だけ見てたいわ
伊代はまだ 16だから
出典: センチメンタル・ジャーニー/作詞:湯川れい子 作曲:筒美京平
あまりにも有名なラインです。
いまだにこのラインをもとにバラエティ番組やCMなどで松本伊代はいじられるのですから。
ここのラインが有名すぎてこの箇所がサビかと勘違いすることもあります。
実際はこの後に続くサビへのブリッジです。
「これ伊代ちゃんが17歳になったらどうするの?」
そんな話題で盛り上がったことを覚えています。
実際に松本伊代がその後このラインをどう歌ったかは記憶に残っていないのが残念で仕方がないです。
16歳ならば恋愛の選択肢は限られているだろう。
当時は青少年健全育成条例などなかった時代ですが、社会通念で自主規制する風潮は現代よりも強い。
まだまだお金があれば「恋愛なんてなんでもあり」だったバブル経済も訪れていません。
お硬い国でした。
意外に長い賞味期限
このラインがあるために「センチメンタル・ジャーニー」という歌の賞味期限は1年だと思いました。
ところが1981年から遠く隔たった現在、この記事を書いているのが不思議でなりません。
人々の記憶に残るということの大切さを学びます。
誰にとっても16歳である期間は365日だけです。
実際の青春とはなんて稀少なものなのでしょう。
しかし青春の思い出は一生モノです。
本当に青春だった頃は限られた時間だけ、しかしその思い出は一生続く。
松本伊代の尊い青春を介して人々は自分自身の青春期を思い返すことができます。
作詞家・湯川れい子はおそろしい才能です。
松本伊代自身の「センチメンタル・ジャーニー」
恋の旅の実相
何かにさそわれて
あなたに さらわれて
センチメンタル・ジャーニー
出典: センチメンタル・ジャーニー/作詞:湯川れい子 作曲:筒美京平
本当のサビです。
キャッチーで美しいメロディはさすがに筒美京平によるものだと感じ入ります。
16歳の少女に対する誘惑。
実際は寝る時間もままならないほどに忙しく駆け抜けていった松本伊代の16歳。
恋の相手は一世を風靡していた近藤真彦でした。
「田原俊彦の妹」というキャッチ・コピーでデビューした彼女。
バレンタイン・デイに田原俊彦に近藤真彦宛てのチョコレートを託したというエピソードが後年伝わります。
歌詞からは分からないことですが、歌詞に没入していただろう彼女の可愛いエピソードです。
青春の記憶は誰のものでも少し心痛くてしかし清々しい。
松本伊代の実際のセンチメンタル・ジャーニーはこのようでした。
誰もが通る道・青春
世界はまだまだ知らないことばかり
見知らぬ国の 謎の湖
のぞき見たくなる 不思議な気持
自分でさえも 怖いほどなの
咲かせた恋なら ずっと
大事にしていて貰えるのかしら
判らないセンチメンタル・ジャーニー
出典: センチメンタル・ジャーニー/作詞:湯川れい子 作曲:筒美京平
Googleマップ、Googleストリートビューなどで今や未開の土地などなくなってしまいました。
しかしこの歌は1981年10月に発売されたもの。
当時の小学生がテレビにかじりついて観ていた「川口浩探検隊シリーズ」のような趣が歌詞に顕れます。
人工衛星からのデータをシェアしてなんて考えは東西冷戦の只中では微塵もなかったことも思い出します。
世界が未知のものであふれていた時代でした。
それにしても今も昔も思春期の恋は厄介です。
世界が未知であるように恋した相手もまた自分にとっては未知なる存在でした。
しかしこの時期にきちんと恋愛しておく。
未知なる相手とのコミュニケーションを築いてゆく。
思春期でこれほど人間存在にとって大事な勉強はありません。
人の心を思い遣る想像力のチカラを養いながら少年少女は孤独の壁を打ち砕きます。
優しい大人になるための大切な準備期間。
誰もが通る道、それが「センチメンタル・ジャーニー」の正体です。
華奢な女の子の未来
松本伊代は嫌われない
扉の前で ためらいながらも
背中をそっと押されたい
見ないふりして 許してね
伊代はまだ 16だから
何かにさそわれて
あなたに さらわれて
何かにさそわれて
あなたに さらわれて
センチメンタル・ジャーニー
出典: センチメンタル・ジャーニー/作詞:湯川れい子 作曲:筒美京平
体重が30キロ台の華奢で危なっかしい女性アイドル・松本伊代。
デビュー曲の鮮烈なイメージにその後の活動が自縛されていて中々難しい人生であったはず。
しかし彼女はママドルとしていまだに新鮮な笑顔をお茶の間に届けてくれます。
彼女はあまり嫌われないという強みを持っている。
それもまたデビュー時の華奢な姿が焼き付いているからでしょうか?
お茶の間にいる視聴者が代替わりしているのにこの点は謎です。