お別れだけど微笑んで
「微笑がえし」(ほほえみがえし)は、1978年2月にリリースされたキャンディーズの活動期間内ラスト・シングルである。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/微笑がえし
キャンディーズがリリースしたシングルでは唯一のミリオンセラー。
歌詞に今まで歌ってきた楽曲タイトルが、あちらこちらにちりばめられているのが話題になりました。
もし今作るとしたら『世界に一つだけの青い稲妻で、らいおんのハートを打ち抜いたらありがとうを言われた。』になりそうです…。
文字数の関係で思い切り詰め込んでみました。でも現代では企画段階でNGかも。
今より色々ザックリしたところがあった時代の、美味しい部分と作詞家の思いがコラボした楽曲ですね。
お引っ越し準備のBGM
歌詞はお引っ越し当日を描写しています。リリースされた40年前、まだフローリングは一般的ではありませんでした。
家の中に畳が無いなんてあり得ない時代だったので、アイドルが歌う歌詞でも地味系和ものワードがサラッと入ってます。
二人で暮らした部屋からそれぞれが別の方向を目指す結果になる、お別れの曲。
でもお引っ越しの準備をしている時に知らずにハミングで出てくるのが「微笑がえし」。
人気のピークで解散してしまったアイドルグループのラスト曲だから、インパクトは永遠に“大”です。
もしお引っ越しを予定している方がいたら、荷造りのBGMとして聴いて見てください。
作業がサクサクと進みます(笑)。
前向きな明るい別れに救われる
別れによる引っ越しと考えれば暗い感じになりそうですが、この曲ではそんなイメージはありません。
おそらく前向きな決断なのでしょう。
春一番が吹くころに掃除をしているようなので就職か転勤かもしれません。
どちらにしても一緒の部屋では過ごせなくなる状況になったのでしょう。
ちょっと深読みしてみます。
年上の女性は彼より先に卒業して就職しています。まだ大学生の彼は就職活動中です。
当然彼は今のまま彼女と暮らすつもりですから、この部屋から通勤できる企業を探しています。
しかしなかなか内定をもらえず2人は焦って来るのです。
そんな時、彼の実家から地元の企業への就職を紹介されました。職種は彼の希望と合致しています。
彼女と別れたくない彼はなかなか良い返事をせず、時間だけが過ぎていきました。
そんな彼をみていた彼女は彼のために別れを決断します。彼を社会人にするためです。
そんな光景が浮かんできませんか?
いきなり代表曲登場
吹かない年と地域があります
春一番が 掃除したてのサッシの窓に
ほこりの渦を踊らせてます
机本箱 運び出された荷物のあとは
畳の色がそこだけ若いわ
出典: 微笑がえし/作詞:阿木燿子 作曲:樋口雄右
北日本(北海道・東北)と沖縄を除く地域で例年2月から3月の半ば、立春から春分の間に、その年に初めて吹く南寄り(東南東から西南西)の強い風。春一番が吹いた日は気温が上昇し、翌日などは寒さが戻ることが多い。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/春一番
「春一番」は恵方巻や豆まきで盛り上がった節分の翌日(立春)から、3月20日頃までに現れる風に付けられた名前。
最近では花粉注意報の方が優先されますね。この時期の強風は嫌われ者扱いです。
「春一番」が観測されない年もあります。そして全国共通の風ではありません。
「春一番」が吹かない年も地域も、必ず春が来ることに安心したりもします。
お引っ越し当日はお天気には恵まれたけれど、強風には注意が必要な日だったようですね。
部屋を明け渡すために掃除をした窓を開けたら、吹き込んできた風でほこりがまた入ってきてしまった。
風景を繊細に切り取っています。部屋を出ていく住人二人も、キチンと掃除をするマメなタイプ。
家具があった部分と無かった部分の畳の色も気になります。
日当たりの良い部屋だったのでしょう。畳が日焼けした部分は茶色に変化。
全てを運び出した部屋が思いのほか広く感じられるのが切なくて、胸がキュンとします。
愛しているからこそ別れを選んだ
どちらかが出ていくだけなら1人の引っ越しで済むはずですが、この2人は同時に部屋を出ることを選びました。
新たなスタートを同時に切るための決断でしょうか。
彼の地方就職を後押しするために、彼女は転勤を選んだのです。
「私は転勤することになったの。もうあなたとはここで暮らせないのよ」
「だからあなたもきちんと就職して。もし縁があれば必ずまた会えるから」
明るく彼の背中を押したのでしょう。素敵な女性ですね。