「幸せ」は普通、自分で作ろうとして作れるものではありません。
作るものではなく、好きな事をしたり大切な人から愛される事で自然に感じるものです。
けれど、主人公は片想いの相手といる事で手放しに「幸せ」と感じる事はできません。
何故なら、自分は相手を愛してるけれど相手は自分のことを愛していないからです。
だから主人公は相手を愛する事で自分の「幸せ」を作ろうとしています。
それが、1文目の意味なのではないでしょうか。
最後の「愛してる」という言葉が、この曲では切なく感じさせます。
憎しみと愛情
そもそも主人公は、どうして辛い恋を諦める事ができないのでしょうか?
2番とCメロでは相手に対する、少しの憎しみと愛情で揺れ動く姿が描かれています。
自分を選んでもらえない事への苛立ち
離したくない この世界中の誰よりもこの僕が
君の事きっと守れる それを知ってて今日もまた甘えるんだろう?
出典: 愛してる/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
主人公が愛してるのは、少しズルい人。
本命の人から十分な愛情を受け取っていないから、主人公にその穴を埋めてもらっているのです。
そんな相手に対して、主人公は憎む気持ちが全くないわけではないでしょう。
この2文からは少しだけ憤りの無い悲しみが感じられます。
それは自分の方が本命の人よりも相手を大切にできるという確信。
そして、それなのに自分を選んでもらえない事への苛立ちからくるものです。
周りから見れば「そんなに辛いなら辞めればいい」と思うような恋でしょう。
しかし、主人公にとってそれは簡単な事ではありません。
相手に想ってもらえないからといって諦められる程の想いではないのです。
弱い相手を守りたい
気まぐれに揺れないで 迷わないで...
未来を恐れないで 泣かないで...
出典: 愛してる/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
主人公が、相手を諦める事ができない理由。
それは自分がいなくなったら、この人はどうなってしまうのだろうという不安があるからです。
時には相手のズルさに憎しみをおぼえても、すぐに泣いてしまう弱さを見ると愛おしくてたまらないのでしょう。
自分がそばにいるから、自分が君を愛するから…。
そんな風に相手を慰めようとしている主人公の姿が、目に浮かびます。
「愛」と「恋」の違い
それでは、最後に締めのサビを考察していきましょう。
「愛」と「恋」は何が違うのか…きっとこの部分でそれが分かるはずです。
ありのままの君を愛する
好きなだけわがまましなよ 僕は逃げたりしないから
幸せと言う言葉は 君と共にあるから
忘れないで 僕は君をいつまでも
愛してる
出典: 愛してる/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
再び、主人公の心に穏やかな気持ちが訪れます。
自分を決して選ばないくせに、自分の愛情を欲しがる相手。
それでも自分だけはそんなありのままの相手を愛そうと主人公は決意します。
何故なら、他の誰と一緒にいても自分の「幸せ」は生まれないと確信しているからです。
自分を愛してほしいという欲望が生まれてしまうのが「恋」。
自分は愛されなくても相手を大切にしようと思えるのが「愛」。
主人公は確実に、自分の中で後者の「愛」を手にする事ができました。
今「恋」に囚われている人がいるならば、主人公の深い「愛」に何か気づかされるものがあったのでは?
何を自分の「幸せ」とするかは、その人次第です。
誰かを愛する事で許せる気持ち。
それを知る事ができたら、心が少し豊かになれるのではないでしょうか。
アルバム「貴方を好きな私」収録曲
最後に、アルバム「貴方を好きな私」から【愛してる】以外の収録曲をご紹介します。