夏が来る前に
母に似た癖毛の背中に
季節より先に君のこと乗せてた
あの海を待っていた
ただ蝉が鳴いていた
この夏が最後になるならその横顔だけでいいから
ずっと忘れないように
出典: 君が海/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
主人公はどうやら癖毛という特徴をお母さんから受け継いでいるようです。
ちょっとそれを気にもしているのかもしれませんね。
思春期は見た目のことに敏感になってしまう年頃なので…
MVで登場した通り、自転車に二人乗りした時の思い出をこの歌詞では歌っています。
別れの季節が訪れる前に色んな思い出を作ろうとしたのでしょうか。
正面からじっと見るのは照れくさいからか、「横顔」と言っているのが初々しい部分だなと感じました。
砂時計は残りわずか
夢みたいなひと時
約束通り電話した
午前0時過ぎ花火だけ持って
砂時計は残りわずか
自販機の明かり君と逃げ出した
青さが二人を締め付けて離さないような
またただ夢を見ていた
出典: 君が海/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
夜中にそっと家を抜け出して合流した二人。
一緒に過ごせる時間は着々と無くなっていっている状態です。
「自販機」の部分は補導されないように明るい場所を避けたのかな?と想像しました。
二人で体験することはなんでも楽しいと感じるほど、お互いに夢中な彼ら。
ハイテンションでまるで夢を見ているような幸福感を味わっているのでしょう。
「青」という色が登場しましたが、タイトルと合わせて考えると「海」を表現していると推測されます。
夜の海は波の音も相まってロマンチックな気分になりますよね。
まだ「愛」にまで成長していないような淡い恋…
経験がまだ少ない二人にはそれがとても魅力的に感じているようです。
若い頃の恋は良くも悪くも記憶に残ることが多くありませんか?
お祭りにも
団扇に穴を開けて覗いた
氷菓子を舐めた君が笑っていた
ただ恋に落ちていた
頬に汗をかいていた
線香花火が落ち消えた後に
二人は黙って近付き暗闇でまた口づけた
出典: 君が海/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
二人はお祭りにでも行ったのでしょうか。
浴衣を着た男女の姿が目に浮かびます。
冒頭の歌詞で歌った通り、彼女の横顔をしっかり盗み見て覚えておこうとしている主人公。
どちらも「落ちるもの」として、恋と線香花火がかかっていますね。
作詞した椎木さんの巧みさを感じる部分です。
「また」と歌っているので、この夜には何度もキスをしたのでしょう。
もうすぐ別れなければいけないので、名残惜しいという気持ちが二人を駆り立てているのかもしれません。
わざわざ「キスしていい?」といったようなやり取りが無いので、お互いに同じ気持ちだということは通じ合っていることが伝わります。
8月は眠るように目を閉じた
何度も襲ってきた
記憶が残っていた
想い出を校庭に埋めて子供たちは皆大人になった
枯れた朝顔
魔法が解けるようだ
八月は眠るように目を閉じた
砂を止めたくて横にしていた砂時計を元に戻しても
今は
あの夏がもう来なくても
いつまでもあの海が君
君が海
出典: 君が海/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
ここで視点は現在へと急に引き戻されます。
この歌詞はすでに大人に成長した主人公が過去を振り返っているということがここで判明しました。
何度も思い出してしまうほど主人公には強烈な思い出となっているようです。
MVで校舎とその周辺の景色が多く登場した通り、彼の恋の思い出は学校と強く結びついています。
卒業したことで忘れたつもりになっていても、やっぱり時折こうして思い出しているのでしょう。
あっという間に夏休みは終わり、「君」との別れの時が訪れました。
終わるといっても劇的なことは何もなく、ただ自然に終わっていくという状況を上手く植物を使って表現していますね。
同時に、ドラマティックな別れと、静かな時間経過とのギャップも感じられるという構成が見事です。
MVの冒頭で登場した歌詞が最後に歌われますが、「君が海」の意味がここで明らかに。
「君」はいなくなってしまったけれど、変わることのない「海」を「君」の代わりだと主人公は思うようにしたのでしょう。
きっと海を眺めて「君」へ想いを馳せることもあるのではないでしょうか。
最後に
ある夏の情景を巧みに綴った曲
ひと夏の別れを情緒ある言葉で表現した『君が海』。
学生時代の幼い恋を思い出して、胸が締め付けられる想いになるのではないでしょうか。
是非、完成度の高い歌詞を味わいながら聴いてみてくださいね。