口に出せない苦しみ
「苦しくはないけど」うん やっぱ苦しいよ
強がる理由はどこにもありはしないよ
辛いよ 辛いよ 逃げ道がないの
やけくそになって 今日もこんばんわ
出典: 手首からマンゴー/作詞:たかやん 作曲:たかやん
主人公は、仲の良い友達に対しても正直に「苦しい」と言えません。
彼を忘れられない惨めさを知られたくない、あるいは友達を困らせたくないという想いがあるのでしょう。
そこで自分の心の中で自問自答を繰り返します。
自分自身には嘘をつく必要がないからです。
「元彼と別れて辛いの?」「とても辛い」「苦しいの?」「死ぬほど苦しい」
そんな時間を過ごす中で、主人公は苦しみに耐えきれなくなります。
そして不思議なのが最後の1行。
自暴自棄の主人公は何に挨拶をしているのでしょうか。
その正体はサビで明らかにされています。
ポップなリズムと歌詞で歌うサビの意味
手首から出てくるイチゴとマンゴーとは…
イェーイ しゅいーっぴ しゅいーっぴ
ピュピ パッパッ
見て手首からイチゴが出てきた!
イェーイ しゅいーっぴ しゅいーっぴ
ピュピ パッパッ
見て手首びからマンゴー出てきた!
出典: 手首からマンゴー/作詞:たかやん 作曲:たかやん
サビはポップな響きの言葉が繰り返され、可愛い印象を与えます。
しかしこのフレーズが表すものは、可愛さとはかけ離れた行為。
それは、自傷行為です。
引用歌詞の1行目は、自らの手首に刃物を滑らせるような音。
2行目では、刃物により傷つき血液が飛び出す音を表現しています。
この行為は、主人公にとって初めてではありません。
先ほどのサビ前の歌詞で挨拶していた相手は、自傷行為そのものに対してであると考えられます。
また挨拶の前のフレーズから、昨日も、一昨日も、その前の日も、行為に及んでいるようです。
夜の挨拶をしているのは、気分が落ち込みやすい夜に自傷するためでしょう。
手首からフルーツを出すという歌詞は、不思議ちゃんのキャラ設定とはまったく異なります。
イチゴは血液を、マンゴーは度重なる自傷で露になった皮下脂肪を意味しているのです。
苦しい想いを吐き出して幸せになりたい
イェーイ しゅいーっぴ しゅいーっぴ
ピュピ パッパッ
見て手首からストレス出てきた!
イェーイ しゅいーっぴ しゅいーっぴ
ピュピ パッパッ
見て手首から幸せ出てきた yeah
出典: 手首からマンゴー/作詞:たかやん 作曲:たかやん
自分の身体に傷をつけるため、もちろん痛みを伴います。
その痛む傷口から流れる鮮血は、ほんの一瞬だけ主人公を苦しみから解放するようです。
痛みに耐えて鮮やかな赤い液体を生み出すことに、幸せさえ感じています。
そして主人公は心のどこかでわかっているのです。
こんなことをしていてはダメだ、と。
それでも自分では止めることができないほど、心に大きすぎる苦悩を抱えて生きています。
不健康だけど止められない日常
心も身体もボロボロ
机にはモンスター・ゼロカロリコーラ
意味ない不眠で張り切っていこーか
カフェイン決めて関節痛くて
胃も痛くてずっと賢者モード
出典: 手首からマンゴー/作詞:たかやん 作曲:たかやん
自分で自分を傷つける夜を過ごす主人公は、昼間も自身を痛めつけています。
仕事場のデスクの上には、眠気を吹き飛ばす効果があるドリンクが勢ぞろい。
徹夜しなければいけないほど仕事量が多いわけではありません。
恋愛で苦しむぐらいなら寝る間も惜しんで仕事に励みたいのです。
ドリンクに含まれる成分のせいで体の節々に痛みを感じ、胃もずっとキリキリしています。
主人公は女性ですが、男性特有の生理現象が起きたように、無気力さに支配されます。