あの子みたい あの子みたい あの子みたい
やな感じ

出典: 夜な夜な夜な/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ

歌詞で唐突に他人の存在が示唆されます。

この存在は一体誰なのでしょうか。

しかもそのあとに続く言葉は「嫌」というストレートな感情表現。

つまりその子のようになることは、主人公としては心外なのです。

誰でも苦手な人の1人や2人いるもの。

ここで嫌っているその人は、自分と生き方が全く違う人とでもいうべきでしょうか。

主人公には理解できない、遠い存在のようです。

はたまた事実はさておき、「自分はあの人とは違う」と思いたい存在なのかもしれませんね。

ちなみにそれが具体的に誰なのかをを曲中では詳しく誰と明言していません。

そのため聴き手が架空の誰かを想像できるようになっています。

表現が絶妙なあいまいさで、聴き手が共感しやすくなっているところも同曲の魅力です。

優しさと弱さ

傷つけるより 傷つく方がいいって
弱虫かな

出典: 夜な夜な夜な/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ

主人公は自分の生き方について葛藤しています。

おそらくそれは人間関係についてのことでしょう。

職場や学校、人は色々な他人と関わりながら生きていきます。

誰しも、相手との衝突や意見の食い違いはあるものです。

そしてこうした衝突に対する対処の方法もまた人それぞれ。

主人公はどうやらこうした時に、引き下がるタイプのようです。

それは誰も傷つけたくないから。

しかし傷つけられっぱなしというのも、辛いものです。

主人公は自分を上手に保身出来ず、自分のやり方に悩んでいる様子。

優しさがあるばかりに、損している自分にがっかりしているようです。

そしてそんな自分を「弱い」と表現。

自分の良さ、生き方が分からなくなってしまっているようです。

曲のテーマは自分への嫌気

何故夜にネガティブになるのか

夜は自己嫌悪で忙しい
夜は自己嫌悪で忙しいんだ

出典: 夜な夜な夜な/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ

曲はサビに入ります。

今まで淡々と続いていた暗い伴奏が、ここへきてクライマックスに。

倉橋ヨエコの歌い方も一層激しくなります。

同曲の主題はこのサビに詰まっているといえるでしょう。

この曲は紛れもない「夜特有の自分への嫌悪感」についての曲なのです。

今までの歌詞は日中に起こった些細なことの回想。

つまり自己嫌悪に陥るまでのフリでした。

忙しい1日を終えて床につくと、何故かその日に嫌だったことが浮かんだりします。

人間は負の感情が残りやすい生き物です。

そして夜はひときわ不安になりやすくなります。

身体も疲れ、あたりも暗く、ネガティブになりやすくなってしまうのです。

そうやって嫌なことを思い出すうちに、悶々と考えて寝付けなくなる人も多いでしょう。

「あぁすればよかった」「やってしまった」など、1日の負債が押し寄せます。

こうなってしまったらこの負のルーティンからは中々抜け出せません。

主人公が提出するもの

反省文 反省文 反省文
提出します

出典: 夜な夜な夜な/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ

半ば脅迫的な音程で繰り返される「反省文」という言葉。

恐怖すら覚えるようなフレーズでもあります。

1度聴いたらかなり頭に残るでしょう。

しかし主人公は1人。

誰かに強制されてこのような反省と後悔をしているわけではありません。

そもそもこうしたものは本来、学校や職場などで自分の罪を謝罪するためのものです。

確かに主人公は自分の1日で後悔したことがたくさんあります。

「もっと良くできたはず」そう思っているでしょう。

しかし主人公は誰かに責められているわけではありません

それでも自発的に反省と対策の文章を書くと意気込んでいるのです。

これはどういうことなのでしょうか。

後悔や嫌悪感について

主人公の願望

誰にも求められていないものを提出するという主人公。

これは一種の自分への慰めだと考えられます。

反省文は、基本的に提出すれば許されるものです。

もちろん、他人から許しを乞う必要があるわけでもないでしょう。

ではなぜ主人公はそこまでして書きたいのでしょうか。

それは「自分自身を許してあげたいから」だと考えられます。

自己嫌悪はほかならぬ自分を自分で責めてしまうことです。

主人公は自分で自分を許せなくなってしまっているのでしょう。

そして夜な夜な自分を責め続け、余計に悲しい気持ちから抜け出せなくなっているのです。

このループを絶つには、自分で自分を許すしかありません。

おそらく主人公は自分の気持ちに整理をつけるためにこうした言葉を使っているのでしょう。

実際に文章を書くのではなく、頭で失敗と対策を反芻することで嫌な自分を浄化しようとしているのです。

「反省文」と繰り返すあたりのメロディはどこか救いがありますね。